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"ジェンダーを肯定するケア" は危険だ 私は開拓の手助けをしたから知っている (翻訳記事)

フィンランドや他の諸国は、若年者の医学的ジェンダー移行を支持する確かなエビデンスがないことを発見した。
なぜ、米国の臨床医は注意を払わないのか?

By  Dr. リイッタケルトゥ・カルティアラ(Riittakerttu Kaltiala) 寄稿
2023年10月30日配信 (掲載紙:"The Free Press" )

リイッタケルトゥ・カルティアラ教授は、フィンランド出身の思春期・未成年精神科医で、フィンランドのタンペレ大学病院の未成年(思春期)精神科の主任精神科医である。患者を治療し、医学生を教え、230以上の学術論文を発表している。

2011年、カルティアラ医師に新たな任務が与えられた。未成年のためのジェンダー・アイデンティティ・サービスの設立を監督することになり、ジェンダーに悩む若年者の治療に専念するクリニックを率いる世界初の医師となった。それ以来、彼女は個人的に500人以上のそのような未成年のアセスメントに参加してきた。

今年初め、本紙『ザ・フリー・プレス "The Free Press" 』は、セントルイス小児病院ワシントン大学トランスジェンダー医療センターの元ケース・マネージャー、ジェイミー・リードによる内部告発記事を掲載した。彼女は、未成年者を異性に移行させようとする治療の効果に警戒を強め、患者がその治療によって害を受けているという確信を深めていったと語った。

最近の『ニューヨーク・タイムズ』紙の調査では、ジェイミー・リードの説明をほぼ裏付けているが、多くの活動家やメディアは、彼女が医師でないことを理由に、リードの主張を否定し続けている。

今回、寄稿をいただいたカルティアラ教授は、医師であり研究者だ。そして、10代で医学的に移行した若い女性が、治療を監督した医師と米国小児科学会(AAP)を裁判所に訴えたことで、この懸念は米国でさらに注目されることになりそうだ。訴訟での主張によれば、米国小児科学会(AAP)は青少年の移行を擁護する中で、"急進的な新しい治療モデル" のエビデンスと、それが提唱する医療介入の既知の危険性と潜在的な副作用について、"明白な詐欺的発言" を行ったという

この記事では、専門医が自身の体験談を語り、脆弱な立場にある患者たちに承認した治療法について心配が募り、声を上げる決断をしたことを述べている。(編集部)


◆「オランダ式プロトコル」と新しい患者群
〜 アイデンティティの確立は、思春期の順調な発達の結果であり、その出発点ではない

医学の勉強を始めてすぐに、私は精神科医になりたいと思った。思春期・未成年の治療を専門にしようと決めたのは、若者が自分とは何かを積極的に探求し、世界における自分の役割を模索する過程に魅了されたからだ。私の患者にはまだこれから大人の人生が待っているので、破壊的な道を歩んでいる若者がより好ましい道を見つける手助けをすることは、その人の将来に大きな違いをもたらす可能性がある。そして、個人的な治療行為には大きなやりがいがある。

ここ十数年、私の分野で劇的な進展があった。新しいプロトコルが発表され、ジェンダー違和(Gender Dysphoria…GD)を経験した子供やティーンエイジャーの社会的・医学的なジェンダー移行が求められたのだ。つまり、生物学的な性別(sex)と、自分は違う性(gender)であるという内的な感覚の不一致である。

この病態は何十年も前から報告されており、1950年代がトランスジェンダー医学の現代的な時代の始まりと考えられている。20世紀から21世紀にかけて、生涯にわたってジェンダーに悩む少数の成人男性を中心に、女性として生きるためのエストロゲンや手術による治療が行われてきた。そして近年、未成年者にもホルモン療法を中心とした医学的移行が成功するかどうか、という新たな研究が始まった。

これらの治療を監督する医療関係者の動機のひとつは、成人男性が説得力を持って他人に女性として存在を見せようとする際に経験する困難に、若者が直面しないようにすることだった。若年者の移行を最も明確に提唱したのは、オランダの臨床医グループである。彼らは2011年に画期的な論文を発表し、ジェンダー違和(GD)を抱える若年者が、医薬品で思春期をブロックすることで自然な思春期を回避し、その後に異性ホルモンの投与を受ければ、より早く、より信頼性の高いトランスジェンダーの生活を始めることができると主張した。

これは "オランダ式プロトコル" として知られるようになった。オランダの医師たちが説明した患者層は、幼い頃から自分は女の子だと主張していた少数の子供たちで、ほぼ全員が男性であった。注意深く選ばれた患者たちは、ジェンダーによる苦痛を除けば、精神的に健康で高機能であった。オランダの臨床医たちは、早期介入後、これらの若者たちが異性として成功したと報告した。このプロトコルは、この新しい小児ジェンダー医学の分野におけるゴールドスタンダード治療として、すぐに国際的に採用された。

同時に、ジェンダー移行は単なる医療行為ではなく、人権であると宣言する活動家たちの運動が起こった。この運動はますます注目されるようになり、活動家のアジェンダはこの分野のメディア報道を支配した。移行を支持する人々は、ソーシャルメディアという新たなテクノロジーの力も理解していた。こうした状況を受け、フィンランドでは社会保健省が全国的な小児ジェンダー・プログラムの策定を望んだ。その任務は、すでに成人向けのジェンダー・アイデンティティ・サービスを提供していた2つの病院に与えられた。2011年、私の部署はこの新しいサービスの開設を任され、主任精神科医である私がその責任者となった。

それでも私は、この件に関して重大な疑問を抱いていた。健康で機能的な身体に対して、単にジェンダーに対する若者の移ろいやすい感情だけで介入しろと言われたのだ。思春期は、若者が個性を確立し、性的な感情を探求し、親から自立する複雑な時期である。アイデンティティの確立は、思春期の順調な発達の結果であり、その出発点ではない。

私たちの病院では、生命倫理学者と大議論を交わした。私は、ジェンダー移行がこの重要な心理的・身体的発達段階を中断し、混乱させるのではないかという懸念を表明した。最終的に、私たちは医療倫理に関する国の委員会から、この新しい介入を行うよう慎重に示唆する見解を受けた。

私たちは550万人の国であり、医療制度が国営化されている。身分証明書を変更し、ジェンダー手術に進むためにはセカンドオピニオンが必要であるため、私は両方のクリニックで移行を検討している若い患者の大部分(現在までに500人以上)に個人的に会い、医学的な評価を行った。移行は自動的に承認されたわけではない。初期の頃は、精神科は紹介された患者の約半数に移行を認めていた。近年では、この割合は20%程度にまで下がっている。

2011年にサービスが始まると、多くの驚きがあった。患者が想定数来るだけでなく、大量にやって来たのだ。欧米諸国ではジェンダー違和(GD)の子供の数が急増していた。

しかし、やってきたのはオランダ人研究者が説明したような子供たちではなかった。私たちは、自分は女の子だと継続して宣言する少数の男の子を予想していた。その代わり、患者の90%は主に15歳から17歳の女の子で、精神的に高機能であるどころか、大多数が重度の精神症状を呈していた。

複数の心理社会的問題を抱えた家庭の出身者もいた。彼女たちのほとんどは、極端な過敏さや社会的孤立など、発達障害によって特徴づけられる困難な幼児期を過ごしていた。多くは学業に問題を抱えていた。いじめを受けたことがあるのは一般的であったが、それは基本的にジェンダー表現に関連するものではなかった。思春期後期の彼女たちは孤独で引っ込み思案だった。学校に行かず、自分の部屋で一人で過ごす者もいた。うつ病や不安神経症、摂食障害、自傷行為、精神病エピソードを経験した人もいた。多くはASD(自閉スペクトラム障害)であった。

驚くべきことに、思春期に突然それを公表するまで、ジェンダー違和(GD)を表明した者はほとんどいなかった。今、私たちのところに来ているのは、彼女たちの両親(たいていは母親だけだが)がLGBT団体の誰かから、性自認(Gender Identity)が子どもの本当の問題であると言われたからであり、あるいは子どもが移行することの利点について何かネットで見たからであった。

クリニックを開設した最初の数年間でさえ、ジェンダー医療は急速に政治化されつつあった。医療専門家を含む活動家たちの発言に疑問を呈する者はほとんどいなかった。そして彼らは驚くべきことを言っていた。若者たちが医学的な移行を始めれば、ジェンダーによる苦悩の感情はただちに消えるだけでなく、精神的な問題もすべて緩和されると主張したのである。もちろん、ホルモン剤の大量投与がASDやその他の精神的健康状態を解決するメカニズムなど存在しない。

オランダ人医師のグループが説明したことは、私が当院で見ていたこととあまりにも大きく異なっていたため、私は当院の患者集団には何か異常があるのかもしれないと思った。そこで私は、欧州における専門家のネットワークと私たちの観察について話し始めた。すると、誰もが複数の精神医学的問題を抱えた少女たちという似たような症例を扱っていることがわかった。異なる国の同僚たちも、このことに困惑していた。多くの医師は、自分たちの経験が特別なものではないと聞いて安心したと述べた。


◆医学は、残念ながら、患者に害をもたらす危険な集団思考と無縁ではない

しかし、誰も公には何も言わなかった。素晴らしい新しい治療法を提供しなければならないというプレッシャーがあった。私は自分自身にも、また他の人々にも、信頼喪失の危機を感じた。人々は、何が起こっているのかについて自分自身の観察を信用しなくなった。私たちは、自分たちの教育、臨床経験、科学的エビデンスを読み解き、作り出す能力に疑問を抱いていた。

私たちの病院がこれらの患者にホルモン介入を提供し始めて間もなく、私たちは約束された奇跡が起こっていないことを目の当たりにし始めた。私たちが目の当たりにしたのは、正反対のことだった。

私たちが治療していた若者たちは回復していなかった。それどころか、彼・彼女たちの人生は悪化していた。私たちは考えた。これは何故だろうか? なぜなら、このようなことが起こりうるというヒントが、先行研究の中になかったからだ。時々、若者たちは生活が改善され、より幸せになったと主張した。しかし、医師である私には、彼らが悪化しているのがわかった。彼らはあらゆる社会的活動から遠ざかっていた。友達も作らない。学校にも行かなくなっていた。私たちは、同じようなことを目の当たりにしているという各国の同僚たちとネットワークを作り、検討を続けた。

私はとても心配になり、フィンランドの同僚と一緒に、私たちの患者について研究することにした。最初の2年間、クリニックで治療を受けた患者たちの記録を系統的に調べ、彼らがどれほど問題をかかえているか、オランダの患者たちとはどれほど違うかを特徴づけた。例えば、患者の4分の1以上がASD(自閉スペクトラム障害)であった。私たちの研究は2015年に発表され、この新しい治療法について深刻な疑問を投げかけた、ジェンダー臨床家による最初の学術論文であったと考える。

私は、他の臨床医も同じような観察をしていることを知っていたし、私の論文がこれらの懸念について議論を巻き起こすことを望んでいた。しかし、私たちの分野は、私たちが指摘した問題を認めるどころか、この治療法を拡大することにますます傾倒していった。

米国では、2007年にボストンで最初の小児ジェンダー・クリニックが開設された。15年後には、そのようなクリニックは100を超えた。米国式のプロトコルが発展するにつれ、移行に課される制限も少なくなっていった。ロイターの調査によると、米国のクリニックの中には、未成年の初診時にホルモン治療を承認しているところもあった。米国は「ジェンダー肯定ケア」と呼ばれる新しい治療基準の先駆者であり、臨床医は、"自分がトランスである" という子どもの主張を受け入れるだけでよく、移行について懸念を示す「ゲートキーパー」になることをやめるよう促した。

2015年頃、精神疾患を抱えた患者に加え、新たな患者が私たちのクリニックにやってくるようになった。同じ小さな町、あるいは同じ学校に通う15歳から17歳のティーンエイジャーの少女たちが、同じような人生を語り、子ども時代の逸話を語るのだ。その中には、自分がトランスジェンダーであることに突然気づいた(それ以前には性に関する違和を感じたことがないにも関わらず)少女も含まれていた。

私たちは、彼女たちがネットワークを構築し、私たちにどのように話しかければいいのか情報交換していることに気づいた。こうして私たちは、"社会的伝染" に関連したジェンダー違和(GD)を初めて経験したのである。これもまた、世界中の小児ジェンダークリニックで起こっていたことであり、医療提供者はまたもやこれに声を上げることができなかった。

私はこの沈黙を理解していた。医師研究者学者作家やジャーナリストを含め、ジェンダー活動家の力の増大や、医学的に移行する若者の影響について懸念を表明する者は誰でも、組織的な中傷キャンペーンやキャリアへの脅威にさらされた。

2016年、脆弱な若年患者への移行による害についての懸念が数年にわたり高まっていたため、フィンランドの2つの小児ジェンダーサービスはそのプロトコルを変更した。現在では、若者がジェンダー違和よりも他に緊急に対処すべき問題を抱えている場合、ジェンダーアイデンティティ(GI)評価を継続するのではなく、精神科の心理カウンセリングなど、より適切な治療に速やかに患者を紹介している。

このアプローチに対しては、活動家や政治家、メディアから多くの圧力があった。フィンランドのマスコミは、私たちの決定に不満を持つ若者の話を掲載し、彼らが人生を保留にせざるを得ないジェンダークリニックの犠牲者であるかのように描いた。フィンランドのある医学雑誌は、"なぜトランスジェンダーの若者たちは思春期ブロッカーを受けられないのか?" と題し、不満を抱く活動家の視点に立った記事を掲載した。

しかし私は、医療は医学的根拠に基づかなければならず、医学は常に自らを修正し続けなければならないという訓練を受けていた。何かがうまくいっていないと気づいた医師は、組織を作り、研究し、同僚に知らせ、多くの聴衆に知らせ、その治療をやめる義務がある。

フィンランドの国民医療制度は、私たちに現在の医療行為を調査し、新しいガイドラインを設定する能力を与えてくれる。2015年、私は個人的に、医療における選択のための協議会(COHERE)と呼ばれる国の機関に、未成年者のジェンダー違和の治療に関する国のガイドラインを作成するよう要請した。2018年、私は同僚とともにこの要請を更新し、受理された。COHEREは、未成年の移行に関する現在の医学文献の信頼性を評価するため、系統的なエビデンスレビューを依頼した。

同じ頃、小児ジェンダー・クリニックを開設して8年目になるが、以前から通っていた患者たちが、移行を後悔していると言って、戻ってくるようになった。「トランス解除者(ディトランス)」と呼ばれる、生まれつきの性に戻りたいと願う患者もいた。このような患者もまた、存在しないはずの患者であった。オランダ式プロトコルの研究者たちは、後悔の割合はほんのわずかであると主張していた。

しかし、オランダのプロトコルの基礎は崩れつつある。研究者たちは、そのデータにはいくつかの重大な問題があり、追跡調査において、まさに移行を後悔したり、考えを変えたりした可能性のある人々の多くを含めることができなかったことを明らかにしたまた、性転換に伴う性器手術の合併症で死亡した患者もいた。

小児ジェンダー医学の世界では、身体移行した若者のうち、その後移行を解除するのはわずか 1%以下であるという統計がよく繰り返されている。これを主張する研究もまた、偏った質問、不十分なサンプル、短いタイムラインに基づいている。私は、後悔はもっと広範囲に広がっていると考えている。例えば、ある新しい研究によると、サンプルの患者の30%近くが 4年以内にホルモン処方をやめている。

通常、移行期の影響が完全に落ち着くまでには数年かかる。大人になった若者が、不妊になる可能性があること、性的機能が損なわれていること、ロマンチックなパートナーを見つけるのが非常に困難であることの意味に直面するときである。

移行が自分にとってどのような意味を持つかについて、自身が世間知らずで見当違いであった、という患者と話すと、打ちのめされるような気持ちになる。こうした患者の多くは、自分が移行する必要があると確信するあまり、情報を隠したり、診断の過程で嘘をついたりしたと言う。

私はこの問題を研究し続け、2018年には同僚とともに、ジェンダー違和(GD) の若者が急増している原因を調査した別の論文を発表した。しかし、なぜこのようなことが起きているのか、どうすればいいのか、答えは見つからなかった。私たちは調査の中で、ジェンダー活動家が一般的に無視している点を指摘した。それは、圧倒的多数のジェンダー違和を持つ子どもたち(約80%)にとって、自然な思春期を過ごせば、彼・彼女たちのジェンダー違和は自然に解決するということである。こうした子どもたちは多くの場合、自分が同性愛者であることを自覚するようになる。

2020年6月、私の分野で大きな出来事が起こった。フィンランドの国立医療機関 COHEREが、若年者のジェンダー移行に関する調査結果と勧告を発表したのだ。COHEREは、"ジェンダー肯定" モデルの成功を喧伝する研究は偏っており、信頼性に欠け、場合によっては組織的にバイアスがあると結論づけた。

入手可能な証拠に照らせば、未成年者の「ジェンダー適合医療」( "ジェンダーの再割当" )は実験的な行為である。報告書は、ジェンダー移行を希望する若い患者には、"医学的治療への生涯にわたるコミットメントの現実、効果の永続性、治療による身体的・精神的悪影響の可能性" について指導すべきである、と述べている。報告書は、脳がまだ成熟していない若者には、"一生涯" 付き合わなければならない決断を下すことの "結果を適切に評価する" 能力が欠けていると警告した。

COHEREはまた、重篤な精神疾患を持つ若者にホルモン治療を施すことの危険性も認識していた。これらの理由から、ジェンダー移行は "大人になるまで" 延期されるべきであると結論づけた。

かなり時間がかかったが、私は正当性を証明されたような気がした。

幸いなことに、フィンランドだけではない。同様の検討の結果、英国スウェーデンも同様の結論に達している。そして、国民皆保険制度を持つ他の多くの国々が、「ジェンダーを肯定する」医療の姿勢を再検討している。

私は患者に対して、医療に対して、そして真実に対して、ジェンダーに悩む未成年者の広範な移行に対してフィンランド国外で発言する義務が高まっていると感じた。アメリカの医学会は、子どもは "本当の" 自分を知っており、トランスジェンダーであることを表明した子どもは肯定され、治療が開始されるべきだと主張し続けている。
(近年、"トランス" というアイデンティティは進化し、"ノンバイナリー" ...つまり、自分はどちらの性にも属さないと感じている...であると言う若者や、その他の性のバリエーションを含むようになっている)

医療機関は、患者を守るための基準を遵守するために、政治を超越した存在であるべきだ。しかし、米国では、米国小児科学会(AAP)を含むこれらの団体は、私の同僚や私が求めているメッセージに積極的に敵対してきた。

私は今年の米国児童青年精神医学会(AACAP)の年次大会で、小児のジェンダー移行に関する国際的な懸念の高まりを取り上げようとした。しかし、提案した2つのパネルは学会によって却下された。これは非常に憂慮すべきことである。科学は沈黙によって進歩するものではない。批判者が提示した証拠を考慮しようとしない医師は、患者の安全を危険にさらしているのである。

また、ジェンダークリニックの臨床医がアメリカの親たちに、子どもの移行を邪魔すると自殺のリスクが非常に高くなると日常的に警告していることにも不安を覚える。どのような若者の死も悲劇であるが、慎重な調査によれば、自殺は非常にまれである自殺のリスクを誇張することで、親に圧力をかけ、ジェンダーの医療化を承認させるのは不誠実であり、極めて非倫理的である。

今年、米国内分泌学会は、若年者のホルモン投与によるジェンダー移行を支持することを改めて表明した。同学会の会長はウォール・ストリート・ジャーナル紙に寄せた手紙の中で、このようなケアは "救命" であり、"自殺のリスクを減らす" と書いている。私は、9カ国の20人の臨床医が署名した、彼の主張に反論する書簡の共著者である。内分泌学会誌に掲載されたものを含め、現在までの医学的エビデンスに関するシステマティック・レビューはすべて、未成年者に対するホルモン介入の精神衛生上の利益に関するエビデンスは、"確信度が低い" か、"非常に低い" ものであった。

医学は、残念ながら、患者に害をもたらす危険な集団思考と無縁ではない。不定の違和感を訴える子どもたちに起こっていることは、1980年代から90年代にかけての「抑圧・回復された記憶」ブームを思い起こさせる。あの時代、多くの問題を抱えた女性たちが、父親やその他の家族による実在しない性的虐待について、セラピストから示唆された虚偽の記憶を信じるようになった。セラピストたちは、この虐待が患者の人生における悪いことのすべてを説明すると言った。家族は引き裂かれ、虚偽の主張に基づいて起訴された人々もいた。セラピスト、ジャーナリスト、弁護士たちが調査し、そこで何が起きていたかを暴露したことで終結した。

私たちはこのような不祥事から学ぶ必要がある。なぜなら、「記憶の回復」と同じように、「ジェンダー移行」も手に負えなくなっているからだ。医療関係者が、どこにでも通用するひとつの答えを持っているとか、人生のあらゆる苦痛に対する治療法を持っている、とか言い始めたら、それは私たち全員に対して、何かが大きく間違っているという警告であるに違いない。

By Riittakerttu Kaltiala(Dr. リイッタケルトゥ・カルティアラ)
カルティアラ博士は、フィンランド、タンペレ大学病院 思春期・未成年精神科部門の主任精神科医であり、タンペレ大学教授(思春期・未成年精神医学)である。


原文掲載紙:ザ・フリープレス(The Free Press)
https://www.thefp.com/p/gender-affirming-care-dangerous-finland-doctor

(The Free Press は ニューヨーク・タイムズ出身ジャーナリストのバリ・ワイスによって2021年に設立された独立系メディアである)

※ 翻訳… @streamkamala、&日文越境列車考究小機構* 
翻訳にあたってはできる限り原文に忠実な訳を目指していますが、お気づきの点があればぜひお知らせいただけましたら幸いです.

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