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2019年6月〜2020年5月|年間レポート:2/3本目

ウィル訪問看護ステーションの4周年の年間レポートの記事2本目です。

1本目の記事はこちら

②包括的な視点とアウトカム指標

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ウィル訪問看護ステーションでは、どのチームもどのスタッフも、”ケアの成果”を追うことを重視しています。私たちの看護・リハビリテーション過程と成果を記述・見える化するため、諸外国でも同じように使われているオマハシステムを日常的に取り入れています。(オマハシステムの過去記事はこちらを参照

オマハシステムのスコアは、利用者に立案した看護問題ごとに以下の3項目(KBSスコア)による5水準評価を行い、このレポートでは2時点間の変化を出します。(オマハシステムでは”問題”という表現になっていますが、これは看護師たちが注目・介入している”焦点”と考えると誤解なく理解しやすいと思います)

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ウィルでは普段の業務の中でこれらを定期的にスコアリングしています。そしてチームごとの利用者群で「疾患分類」「看護問題分類」にわけ、その平均点の前後比較が日常的にチーム内でモニタリング・公表され続けています。このレポートでは各チームの最も長く取得した期間の平均前後比較のデータを公開します。

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江戸川チームは6ヶ月間の比較です。全体でどちらも7割改善がみられました。疾患別に見ると「消化器系」の利用者の改善が見られずケアの弱みの可能性が示唆されています。一方でそれ以外の疾患群は概ね改善しており、糖尿病に代表される「栄養・代謝」の疾患群は特に高い改善幅でした。

看護問題別では生理的な問題の「呼吸」「皮膚」「腸の機能」や、ご家族の困りごとになりがちな心理社会的な問題である「介護/養育」で大きい改善がみられました。一方で健康関連行動的な問題である「身体活動」の改善が難しかったことがわかり今後の課題であると言えるでしょう。

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江東チームの背景としては小児の利用者が多いことが挙げられます。疾患別では小児で多い「先天奇形〜」では良いスコアとなりませんでした。しかし看護問題別に見ると、小児の多くの場合に立案されている「介護/養育」「呼吸」「神経筋骨格」「成長と発達」ではほぼ全ての側面で改善がみられています。この違いについては今後さらに細かく分析をしていく必要がありそうです。

また、立案されている問題のバリエーションにおいて「社会とのつながり」や「役割の変化」「他者との関係」など、社会的な側面にも焦点がおかれて展開されていることがわかりました。

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豊見城チームでは、疾患別でみた改善割合が多く、特に”行動””状態”のスコアではほとんどが改善していました。一方で看護問題別では”知識”のスコアの低下が多く、利用者や家族への知識習得・理解促進への支援に意識的に介入をしていく必要がある可能性が示唆されました。

ただし疾患別と看護問題別で、おなじ”知識”側面でスコアに違いがあることは疑問になり、現時点では説明できないため今後は個別背景を細かく整えた上での分析課題となっています。

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一関チームでは取得できるデータ期間が3ヶ月分でした。疾患別ではスコアの改善が少ない状況です。ただし背景として”高齢者を中心とした長期ケア”の利用者がほとんどのため、短期的には判断が難しい可能性が高いと考えられます。これからの介入による変化に期待し引き続きのモニタリングが重要です。

看護問題別では、特に”知識”のスコア改善割合が高いことがわかりましたが、行動・状態の側面の変化の乏しさも含め同じく6ヶ月・12ヶ月の変化にむけた介入を意識して行っていく必要があるでしょう。

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福岡チームも一関と同じく取得できたのは3ヶ月間のデータです。

疾患別ではほぼ全ての改善がみられました。また看護問題別では神経難病など不可逆的な状態の改善が見込めずとも、”知識”や”行動”の側面ではスコアに改善の変化をもたらせることが示唆されています。そして受診や処方などの困りごとで立案されることの多い「ヘルスケアの管理」など社会面や健康関連行動面での改善も見られ、生活を整えるアプローチの成果がでているように見受けます。一関と同じく長期的な変化も重視しつつですが、3ヶ月で改善した側面が多数あることは特徴的であると考えられます。

※埼玉チームはデータ蓄積が十分でなく今回は表出できませんでした。

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オマハを使うことで、医学的診断や検査データの値の変化だけでは見えにくい「利用者や家族の生活を支える」経過を数値化できます。

なおこのデータは、通常の訪問看護記録の一環であるためアプローチや観察が必要であろう利用者・家族に対して立案・評価したデータの推移であること、看護師が介入しただけの直接的な評価ではないこと(多職種の影響も十分考慮すべき)、同じ疾病分類であっても重症度などによってデータの推移が全く異なる場合もある、等のことに注意が必要です。

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日々のデータをとり、ケアを見える化することは多くのステーションで悲願だと思います。一方で毎日の訪問の中で、さらに仕事が増えたり残業が増えたりスタッフが疲弊してはうまくいきません。ウィルでも悩ましい数年がありました。

だから、電子カルテ「ウィルクラウド」を作りました。これにより、スタッフは現場に集中したまま無駄な作業なくデータが拾われ続けます。そしてそのデータがチーム内でモニタリング・公開されていることで「良いケアできているかな?」と、さらに次のケアに反映されていくサイクルになりつつあります。今ではウィルの全てのチームで利用しており、この記事のスライドも全てウィルクラウド内の画面をそのまま使っています。また、ウィル以外のステーションでも導入が始まっています。

(ご興味がある方はこちらお問い合わせフォーム)

2019年6月〜2020年5月|年間レポート 1/3本目記事

2019年6月〜2020年5月|年間レポート 3/3本目記事

ウィル訪問看護ステーションは「全ての人に家に帰る選択肢を」実現するため5年目も一つ一つの看護・リハビリテーションを積み重ねます。


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