化粧品に関する薬機法広告表現の“基本的”な考え方
薬機法広告表現の取り締まりが厳しくなる中、関連するライティングについてのお問い合わせが私のようなフリーランス宛にも増加傾向にあります。
化粧品に関する企業、雑誌の公式WEBメディア掲載用のコラム記事、健康機器誌面掲載用広告などさまざまな案件を承りご評価を賜り知見が深まってまいりましたので、需要の高い「化粧品」に関する薬事法表現の「基本的な考え方」についてまとめました。
「薬機法ライティングを勉強しています」というだけで、案件が増えるよ(たぶん)。
【前提】とりあえずこれを覚えておいたらある程度NG表現に気付けるポイント3
①「効果が確約されていない」から「化粧品」であることを忘れてはならない。
②化粧品の役割は「フラット(ゼロ)」を「プラス」にすること。「問題ない生活」が「より良い生活」になる。
③「消費者を守るため」に表現の規制が厳しくなりました。読者の気持ちを考えて、「こんなことを書いたら嫌な思いさせちゃうかもな」と思ったらやめておきましょう。
1.不安や恐怖を煽る「ネガティブ訴求」はNG
・「このまま放置すると恐ろしいことになります」といった不安を煽るような表現はNG。
2.虚偽・誇張・誹謗表現はもちろんNG
・当然ながら「虚偽(ウソ)」はNG。
・「他社製品をけなす」といった誹謗表現もNG。単なる比較であってもやめておきましょう。(同じ会社の製品同士、許可を得ている場合ならOK)
・誇張表現もNG。「最高」「理想的」「最先端」「1番」といった表現はうっかり使ってしまいがちなので、使わないようにしてください。
・「ミスリード狙い」も禁止。どれだけ懇切丁寧に説明してもミスリードされることはありますが、こちらから狙いにいってはなりません。
・「確実な情報をわかりやすく書く」。これを意識するだけで、この項目はクリアです。
3.「効果効能」「安心安全」は保証してはならない
・「効果が確約できないから化粧品」です。確約できる物は医薬品になります。絶対に効果がある、絶対に安心な化粧品はこの世に存在しません。
4.「骨・内臓・皮膚・神経などの働き、細胞の生成の促進」は「身体機能回復をあらわす表現」としてNG
・代表的な例として「ストレス」「ターンオーバー」などについて後述しますが、「働きが鈍っている骨・内臓・皮膚・神経、細胞の生成の働きを促進する」効果の標ぼうはすべてNGと心得てください。
5.「基本的にNG」ワードは目立つ部分に書かない
・後述する「基本的にNG」ワードは、目立つ場所には記載NG。目立てば目立つほど、読者に誤解を与える可能性が高くなります。
・例えば、記事タイトルに「ターンオーバー」と書くと、そこに紹介されている化粧品が「ターンオーバー促進に効果がある」と読み取られる可能性が高くなります。
・そのため、以下の部分では絶対に使わないようにしてください。それ以外の部分でも「目立つか目立たないか」は常に意識してください。
6.「ストレス」は「病状をあらわす表現」としてNG
・少し大げさに書きましたが、実際には「医学的表現としてのストレス」がNGなだけで、「物理的(外的)ストレスを受けないようにする」であればOK。
・しかし、汎用性の高いワードなので、うっかり「医学的表現としての使用」をしてしまう可能性が大。慣れないと判別も難しいので、「基本的NG」と考えて使わないようにしてください。
・どうしても使用したい場合、「物理的ストレス(外的ストレス)から身体を保護」という意味合いでしか使わないようにしてください。
7.「ターンオーバー」は「皮膚機能回復をあらわす表現」としてNG
・よくある「ターンオーバーを促進」、これも「肌の機能を回復」という効果の標ぼうになるため、NG。
・ただし、「肌が乾燥する=ターンオーバーが乱れる」といった「肌の働きの説明」であればOK。
※追記:「アンチエイジング」も同様の理由でNGです。
8.「美白」「トーンアップ」「肌を明るく」「シミ・そばかすを薄く」は「メラニン色素減少をあらわす表現」としてNG
・「肌のメラニン色素を減少」「肌の色を変える」は治療の範疇なので、NG。
・「透明感」というワードを使用する際は「美白効果がある」という誤解なきよう下記のように補足してください。
9.「浸透」を標ぼうしてOKなのは「角質層」まで
・「肌の奥に浸透」といった表現がよく見られますが、これはNG。
・化粧品の配合成分が浸透するのは厚さが0.02ミリしかない「角質層(角層)」までなので、「奥」「深く」まで浸透はしない考え方です。
・「角質層(角層)の奥」もNG。
・「肌の奥に浸透(※肌の奥とは角質層のことです)」といった表現もミスリード要因になるためNG。
10.「体験談」内では効果効能の標ぼうは一切NG
・体験談内では、後述する「許可されている56の効果効能」であっても標ぼうNG。「使用している最中の使用感」で留めて、「使用した結果」は一切書かないでください。
11.「医薬関係者からの推薦」はNG
・具体的には、下記のように定められています。該当する人物・団体などの推薦文は書かないでください。
・それ以外の人物からの推薦は可能ですが、「医薬関係者と誤認させる」状態での推薦はNG。(白衣を着ている、「○○博士」といったそれっぽい肩書きを名乗るなど)
11.メイク用品は表現の自由度が高い(ただし、メイク機能のみ)
・ここまで書いてきたNG表現のほとんどは「スキンケア用品」に関連する表現です。スキンケア用品は「使用者の肌質を変化させる」役割を担っているため、医薬品のような表現をしてしまいがちだからです。
・メイク用品は「塗っている間だけ見た目を変える」といった一時的な効果であり、誰でも同じ効果が得られやすいため、自由度が高めです。
・ただし、メイク用品でも「スキンケア機能」の説明は、スキンケア用品同様。
12.一般化粧品で標ぼうが許可されている56の効果効能範囲一覧
日本化粧品工業連合会にて公開されている「化粧品等の適正広告ガイドライン」PDFより引用、カテゴライズのために順番を変えた一覧です。
平成23年に56番が追加されたように、これからも追加される可能性があります。くどいようですが、最新版は公式にてご確認ください。
全般
ネイル
リップ
歯磨き
頭髪
髭剃り
顔・スキンケア
注意書き
【最後に大前提】消費者に誤解されないために「薬機法NG表現」があります
薬機法表現の取り締まりが厳しくなる以前は「期待できる」程度の効果を「絶対に効果がある」と読み取れるように書かれたり、不安を煽って消費を促したりといった記載がなされていました。
そうやって「苦しい出費」をして苦しんだ消費者が多数実在することから、取り締まりが強化されました。
「うちの商品は本当に効果的ですばらしいのに」「それを禁止されたら何も書けない」といった憂いも理解できますが、だからこそ、より誤解のないライティングに努め、消費者からの信頼を獲得していきましょう。信頼してもらえたら、すべての説明は蛇足になりますから。
誰しも生きていれば「苦しい出費」をしなければならない機会はたくさんあります。だからこそ、それ以外の出費ができる限り「楽しい出費」になるように心がけることがライターの勤めだと心得て、がんばりましょう。
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