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官民連携の入り口はどこにあるのか

JX通信社 公共戦略部長 / WiseVine外部アドバイザーの藤井です。

WiseVineでは国や自治体の予算書の解析データの提供を通じて公共予算の合理化と官民連携のきっかけづくりを目指していました(現在は外部スタッフになっています)。JX通信社では防災DXの社会実装を目指して、AI技術やビッグデータの活用方法を提案しながら、AI防災協議会への参画を通じて、そのルール作りにも微力ながら関わっています。

国や公共分野の防災DXに関しては、デジタル庁が旗振り役となって昨年末にどたばたと立ち上がった「防災DX官民共創協議会」の全体会合が4月に開かれ、課題特定、市場形成、APIによる官民サービスの相互接続を官民一体となってすすめるべく、それぞれ分科会の立ち上げが進んでいるところです。

そういった社会全体の利益のための動きと、自社のサービス拡大のための取り組みを、上手くバランスを取りながら、社会全体をいい方向に進めていく…ような仕事をかっこよくできたらいいのですが、あいにくベンチャー企業なのでリソースが無限にあるわけでもなく、目の前の仕事に追われながらも、こうしてGWに喫茶店に籠もって、書き物をしています。

先日、そんなことをJX通信社の優秀なインターン生たちに話しつつ、冗談半分で「だれか官僚になる予定の人がいたら、将来僕の向き合い先として手伝ってね」とお願いしていたところ、後日改めて、「そういう公共性の高い仕事って、どうやって民間企業から関わるチャンスを得るんですか?」と質問してきてくれた学生がいました。嬉しいですね。

ちょっと前、2000年代ぐらいまでは、こうした仕事に関わるには、
・総合コンサルに入って案件を落札してくる(今でもン千万円で大量に発注されています)
・パブリックコメントに参加する(一人だと目立たないので、組織を作って出したりとか)
・審議会の委員に指名されるような役職につく(業界団体とか、学識有識者とか)
の3択しかなかったように思います。いつの頃からか、ベンチャー企業がうなりを上げながら一生懸命アピールすると、そこにしっかり期待を持って、仕事をもらえるようになってきました。AI防災協議会はベンチャーが主役の協議会という特徴もあるので特に「やる気に応じてがんがん」仕事が回ってきますし、個社単体でも、例えばWiseVineは都道府県や国の仕事をいろいろとお声がけいただいて、今も我が国の公共事業の効率化のために最新技術を駆使しようとしています。

とはいえ、こうした仕事をするために一番必要なことが不足している人がすごく多くて、せっかく業界の錚々たるメンバーが集っている官民連携組織でも、何も進まないようなことが結構見受けられます。もちろん、民間企業、特に株式会社は最終的に株主の利益のために動く組織なので、公共側が民間に「甘える」ような座組みは動かないに決まっているのですが、そうでなくとも、何かと動かないシーンを良く見かけます。
理由は、2つあるんじゃないかと思っています。

基礎知識の欠如による「視点の切り替え」の弱さ

「この国がどのような仕組みで動いているのか」に対する基礎知識が足りないことで、なにをどうすれば、自分が持っている技術や知見が社会に実装できるのか、イメージできない人が民間側に多いような気がしています。
たとえば、行政サービスがどのような予算で執行されていて、何がどこの管轄なのかイメージできない。法体系がどうなっていて、それが何のための規制なのか理解できていないから、法律のせいでできないんだ!というんだけど、実際に何を変えればいいのかわからない。行政が遅いから、としきりに言うけど、行政が「何を」判断するために「何を」必要としているのか、がわからない。などなど。
結局、それらがわからないと、単なる営業の売り込みトークしかできない人になるので、煙たがられるだけです。

動機と手段の不一致、あるいは欠如

行政にもいわゆる中期経営計画的なものはあって、それは首長によるビジョンであったり、法律に基づいて事業分野ごとに作られる中期計画書だったりします。そういったものに基づいて行政は限られた行政資源を再割当てしているので、そこに手段がマッチしない限りは、よほどのことがないと何も動きません。
そのうえで、膨大な課題のうち「まず何を」「どうやって」解決するか、は、その担当者の熱意によって決まるところが往々にしてあると感じています。行政官も人なので、そのパッションで動いた事例は、数限りなくあるはずですし、私もそれなりに長い公共営業の経験上、そういったシーンを何度も見てきました。
そのとき、企業側の人間に重要なのは、「その提案をする個人的な動機」と「所属組織のミッション・ビジョン」が一致していること、だと思います。属人的な提案は、とっかかりの段階では熱意が響き合って動くことはあってもやはり長続きしませんし、ビジョンからずれたものを提案していると、後々成果が出せなくなります。
そこをきちんと文面で残して、組織対組織で固めていくのが、たとえば連携協定書とか、そういったものだと思うのですが、最近は企業のグロースハックやCSRのアピール手段として乱用されている感もあり、曖昧で何を言っているのかわからない協定や、逆に極めて局地的で広がりのない協定も、しばしば目にします。
連携協定は、使い方さえしっかり設計すれば非常に強力で、内容によっては通常の契約書よりも効力が強いな、と感じることすらあるのですが、この使い方を、実は誰も教えてくれないよなぁ、と思っています。


多くの若者が、より「働く意味」や公益性を求めて仕事を探すようになっている昨今、こういった分野にもっと新規参入が増えるといいな、と思うのですが、具体的なトレーニングの機会がないので、高額なコンサルに仕事をすべて持っていってもらうのではなく(それはそれで必要なシーンは間違いなくあるのですが)、みんなで学びながら進んでいけたらいいのにな、と思う今日このごろです。

自分の仕事(地方自治、防災、AI)について知ってほしい思いで書いているので全部無料にしているのですが、まれに投げ銭してくださる方がいて、支払い下限に達しないのが悲しいので、よかったらコーヒー代おごってください。