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パターン・ランゲージとポストコロナの地方自治の課題解決

株式会社WiseVineでは、withコロナ・ポストコロナと呼ばれる状況下で自治体の通常業務が停滞しないよう、解決策やその前例を列挙する特設サイトを、自治体職員向けに提供しています。また、このサイトから、具体的なソリューションを持つ企業をご紹介するマッチングサービスを展開しています。

たとえば、がん検診は「今年はできないよね」では済まされませんが、3密を防ぐために事前予約をオンラインで出来るようにしよう、とか、いのちの電話がコールセンターが3密だ、という理由で運用できなくなっている状況に対してリモートワークでも個人情報に配慮しながら対応できるサービスを導入しましょう、とかそういったものです。一つ一つは「そりゃそうだ」というものなのですが、案外、「それってどういう名前のサービスなんでしょう」というところが官民の間に共通語がなく、社内では「想像ソリューション」と呼んでいる中間言語的な解決策を人力でえっちらおっちら書き出しながら、そういったサービスをすでに導入している自治体の事例をWiseVineが独自に開発した自治体予算書データベースで探し出し、前例つきでご紹介しているものです。お陰様で、非常に自治体職員の皆様からは反響をいただいております。

ところで、この「想像ソリューション」と社内で呼んでいるもの、あらゆる分野について書き出してみると、案外いくつかの類型に集約できるのではないか、という感想を持つに至りました。つまり、「問題」と「解決策」を抽象化できる気がする。それこそ官民連携に必要な「中間言語」なのではないか。そんなことを考えていると、尊敬する自治体職員の方が「今こそパターン・ランゲージが重要」という趣旨のことをSNSに書いていたので、ピンときて、本を読んでみることにしました。結果、ズバリそれだった。

余談だけど、原典となる本は1万円近くてぱっと買えなかった(残念ながら図書館にもなかった)けど、今も売れている。そしてこの読んだ本も図書館で借りてきた。図書館の運営が再開して本当によかったとおもう(予約された本が2か月分溜まっていて、カウンターが迷宮みたいになっていた。司書のみなさん、本当に大変だと思いますが頑張ってください)

パターン・ランゲージとは何か

パターン・ランゲージとは建築家のクリストファー・アレクサンダーが提唱した「ある状況で発生する問題の解決方法を抽象化したパターンの集まり」のこと。建築・都市計画について253のパターンを10年かけて作ったものが出発点で、"窓のある場所"とか"アルコーブ"(リビングにつながった出っ張ったちょっとしたスペース)とか、建築家でも、一般の人でもなんとなくイメージできて、「あぁ、そういうのがあるといいよね」と会話できるパーツになっていて、対話しながら都市計画や建築計画を構想していくための共通言語として設計されています。初代「パターン・ランゲージ」は建築を対象としていたけど、その後、ソフトウェアなどの分野で流行し、今に至る。確かにソフトウェア開発の世界では、「こういう感じにやろうよ」を命名するのが一般的。ミーティングのやり方なんかも、いちいち名前がついていて共通言語化しています。ここが出発点だったのか。

手法に名前をつけるのではなく、問題と解決策のセットに名前を付ける

ところで私は住んでいる自治体で「災害時ペット避難ボランティア」というちょっと特殊なボランティアに登録していまして、災害時には避難所で、ペットの受け入れや人間とペットの共存を図るための避難所運営にお力をお貸しする、という役割を持っています(そういう役割の人がいないと、たいていペットを飼っている人とそうでない人でトラブルが起きる、という教訓から生まれた制度ですね)。

非常に先進的な事前ボランティア登録制度であるものの、じゃあ具体的に何すればいいのか、はあんまり前例がないので、年1回、研修会という名のふわっとした勉強会が開催されています。そこで自治体職員の方々が、「よく庁内で研修でやるんですけど、ポストイットを使ってブレストしてみましょうか!」って提案されるんです。

わかる。なにか複雑な問題があるときにはポストイット使いたくなるよね。でも、それ、何をゴールにして、何をするための議論なのか。

手法だけを知っていてもあまり解決策にはなっていなくて、「問題」と「解決策」のセットが重要なのではないかなぁ、と思うのです。ポストイットをつかったブレストは「手法」であって、具体的にそれを使って問題を類型化して仕分けして、全体の見通しをつけるのが「KJ法」だったり、それに期限をつけてアジャイルに管理していく手法が「カンバン」だったりするけど、この勉強会で目指すものは一体なんなのかがよくわからない。

同じように、withコロナ・ポストコロナの政策立案でも、とにかく「補助金!」「オンライン!」と、手法だけが独り歩きしている気がします。必要なのは、「経済を再開するアウトカムを得るために、どういった手法をとるか」「その手法を推進するために、直接執行するのか、インセンティブ設計をするのか」といった、課題と手法をひとつのセットにした「関数」だと思うのです。それって「ソリューション」という形の商材名ともちょっと違う、とずっと思っていたのですが、「パターン」という微妙な名前で、もう40年前から議論されていたのだ、と知ったのでした。

本書の政策立案との関連でのよみどころ

竹中平蔵さんの政策に対する好き嫌いはさておき、竹中さんが「どうやって政策を推進したか」について、結構赤裸々な対談が本書では繰り広げられています。それを「パターン」として抽出して、小泉政権における「パターン」とは何だったのか、というのを紐解いている章があるのですが、さすが劇場型内閣といわれた小泉内閣、とってもわかりやすくパターンが抽出されます(記憶とも一致して「あーなるほど」と腹落ちする、そういう意味でも「共通言語としてのパターン・ランゲージ」として実感できる)。

政策に関するキーワードは、「日本版SBIRの推進」とか(あえて例示しましたが、これは先日関連する法律が成立したとっても重要なキーワードです)、どうしてもぱっと理解できないものになりがちですが、パターン・ランゲージとして共通言語が生まれれば、民間による提案も促進できるし、そもそもツリー型ではない(「都市はツリーではない」という言葉で本書でも繰り返し出てくる)、複数の分野、複数の省庁、複数の関係者にまたがる現代の問題を解決していくためには、共通言語こそが重要です。

WiseVineは、その共通言語を開発し、「課題」と「手法」を接続していく役割を引き続き担っていきたいと思っています。




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放送局発の地方自治体向け防災ソリューションの開発・販売の新規事業→GovTechベンチャー COO(のち非常勤)→報道ベンチャー。

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