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雨《短編小説》

足をブラブラさせて、眺めてた。
高い場所から見る夜景って、こんな綺麗なんだなって。

揃えた靴、綺麗に書いたつもりの遺書。

誰も気付かない私の存在。
今私がこのビルから落ちても、きっと誰も悲しまない。

小さなニュースにはなるかもしれない。
けどそんなものは、数日もすれば忘れ去られる。

誰かの記憶に残る人生だったかな。

ふと思った。

悲しいけど、私はいつも見下され、貶されバカにされて来た。
同情されても、そこに愛はなかった。

分かっていても、甘い誘い文句に寄り掛かりたかった。
本当に馬鹿。

相手からしたら、私は都合が良い遊び道具。
私はただ愛が欲しかった。
それだけ。

冷たい水滴が頬に当たった。
雨が降って来た…。
それは私の涙と混じり、少し塩辛い味がした。

天に手を伸ばす。

無数の水滴が容赦なく私に降り注ぐ。

『あぁ…これが私の最期の贈り物』

何の躊躇いも恐怖もなく、私はビルの10階から宙へと身を投げた。

最期の願いが叶った。
私は一瞬だけ、名も無き鳥になり
地面に叩き付けられた。


発見者が「まるで夢を見ている様な、顔だけは綺麗だった…」
そう語っているニュースも、2日も経てば過去の出来事になった…。

彼女は今頃、本物の鳥になれたのだろうか。
悲しみや抱える疾患、苦しみから解き放たれて、自由に大空を舞っているだろうか…。

知る者は誰も居ない。



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