決戦の時 (12/15)【橙狐は見た】
あらすじ
氷室愛優は、玲子の妹で憑依体質を持つ。危険な式神を二体を封印した彼女を橙狐が見守る。深大寺真がクラスを乗っ取る。
愛優の姉が通っている高校へ飛んでいく、早く知らせないと焦りながら高校に到着すると、玲子を探す。ノンキに授業中に居眠りしていた。私は窓を透きとおって教室に侵入した。
「玲子さん、大変です」
私があわてて教室に飛び込んだから目を丸くしている。話を聞くと天之宮武雄にも、目配せした。
「すぐ行くからまってて」
やおら立ち上がると、先生に気分が悪いですと叫ぶ。あっけにとられている先生とクラスメイトを残してダッシュで教室を飛び出した。妹の危機に必死だ。
「なにがあった?」
少し遅れて先生に事情を説明して武雄も下駄箱まで走ってくる。私の事情説明ももどかしいのか、玲子が私の手を引っ張って走り出す。でもすぐに息切れしたのかよろよろと歩き出した。この娘は体力が無い。
「それならこのまま小学校にいこう」
武雄は玲子を気遣いながら小学校を目指す。だが町が変異を始めていた。よろよろと歩く人形のような姿が見える。霊障で作られたヒトガタだった。
「人形を使っているな」
武雄が金剛鈴を取り出すと(彼はいつも鞄に入れているのか?)ブンっとひとふりする。グワァンと響き渡る音色は周囲に波紋をひろげて人形を破壊した。
「さすが旦那さんはお強いですね!」
「誰が旦那!」
玲子怒って私をチョークスリーパで締め上げる。別に痛くは無い。
確かにヒトガタは多かったが、積極的には攻撃してこない。どちらかと言うと偵察のように感じた。小学校に到着すると校門は開いている。最近では不審者対策で閉まっている場合があるが、開いたままだ。校内に侵入して私は玲子と武雄を誘導した。
「誰も居ない……」
教室はもぬけの空だ。人形達が壊れて散らばっている。壊れた破片を見れば人形にしか見えないが、操られている時は生身と変わらなかった。
「愛優ちゃんが居ません」
私は泣きそうになりながら探索してみる。私の霊障MAPを頭の中で展開する。愛優ちゃんを探す、ヒトガタが多いのか検索するのが大変だ。だが見つかる。
「居ました、深大寺真の家です」
「判った、橙狐は、美成さんを連れてきてくれ」
小学校で別れると私は神社に飛んだ、早く早く、愛優ちゃんを助けないと私は必死だ、そして充実していた。この使命感、主人を助けるために私は力の限り全力を出す。徐々に私の力が切れ始めているのが判らないくらいに必死だった。
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