悪呪鬼来迎 (13/15)【橙狐は見た】
あらすじ
氷室愛優は、玲子の妹で憑依体質を持つ。危険な式神を二体を封印した彼女を橙狐が見守る。愛優は、深大寺真に囚われる。
神社に到着すると巫女の美成を見つける。
「美成さん、愛優ちゃんの居場所がわかりました」
暗い顔をした美成は黙っている。
「早く行きましょう、愛優ちゃんを助けないと」
悲しそうな顔をしている。私は嫌な予感がする。
「なにかありましたか?」
「悪呪鬼来迎よ……」
黄泉の国から鬼を呼び出す。禁忌の力はどんな望みでもかなえるが、大量の贄が必要だ。
「深大寺家は、反魂の術を得意としていた……」
魂を取り戻す反魂の術は、肉体は再生できない。だから死体や野原の骸骨を使う。長く現世にはとどまれないが数日ならば動かせる。
「悪呪の場合は、呪いのために使役させる危険な術式」
「でも助けないと!」
「ヘタに手を出すと呪い返しがあるの、術者をむしばむ……」
美成は躊躇していた、あまりに強力な呪いのため自分の身はおろか、町全体を呪詛に沈める可能性を指摘する。
「私には判断できない……」
私は彼女の臆病さを非難できない、もし力が足りなければ大量の死者が出る。責任の問題ではない。誰を助けるか、命の取捨選択だ。
私は空中に飛び上がると、深大寺真の家を向かう。
(愛優ちゃん……愛優ちゃん……)
私は心の中で連呼する。幼い少女が心配でたまらない。人形にされてしまう。最初にクラスメイトが人形に封じられていた、八夜狐が、人形を壊せば助かった。でも助けるだけでは、悪呪鬼来迎の倒し方が判らない。
深大寺の家は、遠くから見ても赤黒い雲でおおわれていた。凶悪な霊障が発生している。あの濃さならば、生身ですら蝕む。
「玲子さん……武雄さん……」
深大寺家の二階に飛び込んで、姉の玲子を探す。まだ到着していなのか? 家の中は浄化されていない。私が二階から一階の階段を降りると玄関先に、二人が倒れていた。
「大丈夫ですか?」
子狐の私は、鼻でフンフンと二人の様子を確かめる。二人には穢れが発生していた。手や顔が黒く染まっている。深大寺真に触れた小学生のクラスメイトと同じだ、黒いシミは彼女たちを無力化していた。
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