奇妙な声 (04/15)【橙狐は見た】
あらすじ
氷室愛優は、玲子の妹で憑依体質を持つ。危険な式神を二体を封印した彼女を橙狐が見守る。愛優のクラスに謎の転校生が来た。
「深大寺君はどこに住んでいるの? 」
「深大寺君は好きな漫画とかある? 」
休み時間になるとクラスの女の子が転校生の机に集まっている。まるでハーレムだ。クラスの男子達は興味なさげだ、この年頃だとまだ女と男の仲を深く考えない。普通は同性同士で固まる。
「前田さんはかわいいよ」
驚いた事に深大寺真は、クラスメイトと親密そうにコミュニケーションをしていた、彼の話で嬌声が上がる。ただ彼の顔は無表情のままでニコリともしない。感情が無いかのような彼は、女性から見ればクールに見える。
「深大寺君、ちょっといい? 」
担任の山口かおりが教室に入ってくると彼を呼ぶ、黙って彼は立ち上がると、女子に触れないように遠回りして先生の方に歩く。深大寺に足を伸ばしてイタズラしたクラスメイトは、今日も登校してないので男子生徒は気味悪げに彼から離れていた。彼は先生と廊下で相談している。
「愛優ちゃん、大丈夫ですか?」
彼が来てから愛優は、調子が悪そうだった。姉の玲子には、状況を説明していてるが玲子も状況をつかめていない。
「狐のお姉さんは近づくなって言ってる」
小学生の愛優は、式神使いとしての力は、まだ未熟で彼女の安全を考えれば「危険な人物に近づくな」は、正しいアドバイスだが同じクラスでそれは難しい。
「だから遠足なのよ」
廊下から担任の声が聞こえる。担任の山口は少しヒステリックなところがある、感情を抑制できない時は声を張り上げる。悪い癖だが病的ではない。
クラスの戸が引かれると深大寺が教室に戻ってきた、担任もすぐに入ってくる、深大寺の肩をつかもうとした瞬間に野太い声がした。
「ババァは触るな」
声を張り上げるわけではない、それでも静かな教室に響き渡る。誰もが凍りついた。そこに居る筈も無い中年男を捜すように、みながキョロキョロする。声の主は判っている、でも信じられない。
「すいません、つい暴言がでました」
深大寺が、先生に振り向くとペコリと頭を下げた。担任は信じられないモノを見る目つきで転校生を直視する。
「母と相談して、遠足に行くか決めます」
静かに席に戻る転校生の周りから人が消える。両隣のクラスメイトが一番キツイだろうと思う。私が見ていると彼は私の居る場所に顔を向ける。式神である私を見ることができるのは霊能者だけだ。彼はしばらくしてから視線をそらすと黙って教科書を机から出した。
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