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雑多なSF設定

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SF設定の小説を集めます ・ケモナーワールド ・ジェリービーンズ ・猫探偵
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#ショートショート

SS 戦場の少女【#戦国時代の未来】 #爪毛の挑戦状

 ザムザ844は、センサーから入力したデータをフィルターで選別する。 (人は居ない)  思考はあるが感情は無い。そもそも感情が判らない。気分の高揚なのは判る。楽しい、嬉しい、悲しい、怒り。その状態になると行動にメリハリがつく。 (ノイズに思えるけど……)  戦場は長く爆撃されたせいで荒廃している。鉄くずと骨のかけら、人だったものが銃を握っていた。ゆっくりと歩く、敵がいれば……。ザムザ844は、人の形をした兵器だ。  少年はとぼとぼと歩く少女を見つけると駆けよる。敵兵

SS 人の居ない街【#風薫る】 #シロクマ文芸部

 風薫る だれもおらぬ 道を吹く  Λは、無機質な通路をぶらぶらと進みながら、人間に習った俳句を口ずさむ。 (今日は、きゅうりとトマトを植えるかな……)  空気が人間の体感で最適の温度と湿度を保っている。花の香りがするのはΛが花を育てているせいだ。  紫陽花、花菖蒲、薔薇、薫衣草、色とりどりの花は人工で作られた種を利用している。 (人間は何をしたかったのかな……) 「やぁΛ」 「γ、今日は動けそうかい」 「無理だね」 「部品を作ろうか?」 「このままでいいよ」

SS 童話:虚無 【#どうでもええわっ!】Mr.ランジェリー様お題枠

 ある所に、どうでもええわっ!が口癖の男が居ました。彼にとっては世界は虚無でしかありません。 「なんでわざわざそんなん難しいこと考えるねん? それはそれこれはこれでええんちゃうんか? むずかしーく考えれば判るんか? なんも判らんやろ。どうでもええわ!」  だいたいこんな感じで暮らしていましたが、税金を滞納したことで税務署から呼び出されても 「どうでもええわっ!」  家が抵当になり追い出されても 「どうでもええわっ!」  土管で野宿していたら、中学生にカツアゲされて

SS 終わりの日1 台にアニバーサリー #毎週ショートショートnoteの応募用

「ありがとうみんな、さようなら」  演舞台で彼女は、ほほえんでいた。幸せそうな彼女は不幸だった。 「なんなんだ、不公平だよ」  彼女は俺の推しだ。二周年記念のステージで、難病を告白する。  演舞台にアニバーサリーステージの垂れ幕も華やかだ。みなが祝福する最高のステージになるはずだった。 「なんでだよ……」  彼女は闘病のために引退をするが、長く生きられないと判っていた。推しが死ぬ。それだけで俺は絶望する。 「どこかに神様いねえのかよ……」 「いるよ」  ふと顔をあげ

SS 半タライのウッキーゲーム#毎週ショートショートnoteの応募用

「この世界には、タライと反タライがある」  美人で巨乳だけど異様な研究ばかりしている科学者の神宮寺咲は、いつもの妙な思考実験中だ。もっとも私が居なくても自問自答をしている。 「粒子と反粒子みたいな感じですか?」 「似ているが違う、タライは洗うが反タライは汚す」 「……意味が判らないです」 「マクスウェルの悪魔と同じだ、私たちは猿のいたずらと呼んでいる、今の洗濯機は反タライだ! 」  洗濯は衣服の汚れを取り除くが、同時に地球環境は汚れる。マイクロプラスチック問題だ。衣服から

SS ハナ大増殖 #爪毛の挑戦状

 金木犀の香りがする、甘いような濃厚な臭いはむせる。あまりに強いので口で息をする。 「なんだ? 芳香剤でもこぼしたのか? 」  ベッドから起き上がり窓を見ると外がオレンジ色だ。窓に近寄ると臭いがきつくなる、外がハナで埋まっている。  テレビをつけるとニュースキャスターが「ハナ大増殖」を連呼していた。地球温暖化の影響を報じていたが、どうやら大陸側で実験を失敗したらしい。 「金木犀にクマムシの遺伝子? 」  人間の細胞にクマムシの遺伝子を入れて、耐久性を確かめられたと怪し

SS 伝書鳩パーティー #毎週ショートショートnoteの応募用

「ポッポー」  俺は始末屋ポッポ。猫探偵の殺しを依頼されている。俺のくちばしで猫探偵の頭蓋骨に風穴を開けてやるぜ。  今日は鳩仲間の集会だ。伝書鳩パーティーは鳩として絶対に出なくてはいけない、欠席すると自分の悪口を言われる。 「始末屋とか言いながら誰も始末してない」 「子供も居るのにヤクザな商売をして将来を……」  どうせ俺は駄目な男だ。子供の豆代も稼ぐのがやっとだ、みんなのようにレースで実績を上げたり、戦場で貴重な情報の受け渡しが出来ない。迷子になる。  鳩が迷子な

奇妙な銃 #春ピリカ応募

「お元気で……」 「いってまいります」  太平洋戦争末期に、学生の俺に召集令状が来る。五輪のライフル射撃の選手に選ばれたこともある、腕が見込まれた。幼なじみの里江に敬礼をする。彼女は少しだけ笑って、少しだけ悲しそうに見えた。 「四九式改狙撃銃だ」  歩兵銃を改造した狙撃銃は、精度の高い物を選び専用の器具を取り付けて完成させる。その銃は奇妙なほど大きな光学照準器が付いていた。 「お前達はこれを使い、仲間を助けてくれ」  密林に狙撃用の弾丸を持たされて俺たちは残された。敗戦は

SS ダウンロードファーストクラス #毎週ショートショートnoteの応募用

「これをダウンロードして下さい」  現代は金で知識を得られる。人は学習をしない、ダウンロードで知識を得る。俺は高額な金を払って『ダウンロードファーストクラス』に登録して仕事や趣味で利用する。人間の脊髄に電脳プラグを取り付けて、脳内に情報を流し込める。 「この案件は多次元シーケンス図を利用します」  矢印だらけのUML図を見せながら、高機能のインターフェイスの流れを顧客に提示をする。もちろんクライアントも案件の知識をダウンロード済みだ。昔は、客が自分の仕事の内容を把握して

SS 秘密の情報 猫探偵06

あらすじ 奇妙な機械が歩き回る都市では動物と人間が会話しながら生活していた。人間の娘のニーナを助けると猫探偵のロイは家で飼う事にする。 「ロイ、まだあんた人間を飼っているの?」 クロミだ。黒い毛皮はビロードのように美しい。彼女は有名なハッカーとして活躍している。たまに俺の味方にも敵にもなる。利害が一致するか不一致かだけで俺は気にしない。 「まだ来たばかりだ、生活に慣れるまでは面倒を見る」 それが飼い主としての責任だ。俺はニーナを殺さないで助ける選択をした。彼女が生活できる

SS 古い二人用 #爪毛の挑戦状

「古い二人用の脱出艇ね」 虚空が広がる深宇宙で探査船は故障した。脱出艇は二人用だが片方に問題がある。自動点検ボタンを押してもNGで戻る。間近には巨大なクォーク星がある。ブラックホールにならない超重力星だ。 船はゆっくりとクォーク星に落ちて行く。今なら脱出艇の跳躍装置で戻れる。 「使えないわ……」 年上のミランダはため息をついた。彼女には子供が居る。未婚の私は身軽だ。 「私が残る、ミランダ脱出して」 「ヨシエ、くじ引きでいいわ」 ミランダが悲しげに私を見る。私は頭をふ

SS 機械になる日【クロスワードパズル&脳年齢&三重奏】

「脳年齢が落ちてますね」 医者は事実を語る。老化で生体の脳の機能が落ちる。切り替えの時期が来る。生体の脳が消える恐怖はある。記憶が受け継がれると言うが、『AがBである』という認識をデータとして記憶して機械に移植する。複写すれば自己が保てるのか?疑問だ。 「問題ありませんよ、自己認識のチェックで機械脳と生体脳は同一と証明されています」 医者は気軽に言う。もちろん構成が同一ならば本人だ。私は家に帰る。医者からもらった「生体脳除去同意書」の紙をテーブルの上に広げる。 「あな

SS 朝の時計 #爪毛の挑戦状

「起きて」 体を揺らされる、夢を見ていたが忘れてしまう。俺は時計をつかむとまだ朝の六時だ。ベッドから起きる。朝食の用意をする。昨日買った食パンをレンジに入れてチンする。朝の時計は電波時計で正確だが、鳴る前に起きてしまう。目覚ましの意味が無い。 仕事場でパソコンを使いながらデータを処理していると夢の事が気になる。 「どんな夢だったかな?」 夢を見ている時は鮮明だ。夢の中で生きている自分がいる。中断されるとそれが霧散する。現実が消滅して後には何も残らない。 「夢みたいもんか

SS バイリンガルギョウザ #毎週ショートショートnoteの応募用

「新しい商品が必要です、開発をお願いします」 俺は無理難題を提示される。もっと市場規模を広げろと言うのだ。食品会社に勤めている。研究員として長い。画期的な製品で市場を席巻するのが長年の夢だ。苦労して開発した 「バイリンガルギョウザです。」 プレゼン資料を見て理解できない重役は俺を呼び出す 「これは何かね?」 「ギョウザの中に知覚刺激ナノロボットを仕込みました、ナノロボットは自然排出するので安心です」 餃子はアジア圏では馴染みがある。それを世界に広げるために、食べる事で