見出し画像

SS 伝書鳩パーティー #毎週ショートショートnoteの応募用

「ポッポー」
 俺は始末屋ポッポ。猫探偵の殺しを依頼されている。俺のくちばしで猫探偵の頭蓋骨に風穴を開けてやるぜ。

 今日は鳩仲間の集会だ。伝書鳩パーティーは鳩として絶対に出なくてはいけない、欠席すると自分の悪口を言われる。

「始末屋とか言いながら誰も始末してない」
「子供も居るのにヤクザな商売をして将来を……」

 どうせ俺は駄目な男だ。子供の豆代も稼ぐのがやっとだ、みんなのようにレースで実績を上げたり、戦場で貴重な情報の受け渡しが出来ない。迷子になる。

 鳩が迷子なんて洒落にもならない。伝書鳩の歴史は古く誇りを持てる職業なのに、俺は挫折した。

「俺は何も出来ないクズだ……」
 涙がにじむ、風切羽で目を拭う。

「ポッポか? ちょっと手伝ってくれ」
 猫探偵が俺を見つけると親しそうに近寄る、俺はお前を狙ってるんだぞ!

「子猫が電柱に昇って降りて来ない、ニャーニャー鳴いているから慰めてくれ」
 報酬としてトウモロコシ! 引き受けた。見れば子猫が鳴いている、飛び立つと一直線に電柱に羽ばたいた。

「ママ、助けてー」
「坊主、大丈夫だ、すぐに助けが来る」
 子猫は俺に飛びつくと体にしがみつく、いくら子猫でも重すぎる。真っ逆さまに落ちると猫探偵が地面から飛びついて助けてくれた。

「お嬢ちゃん、もう大丈夫だ」
「猫探偵ありがとう、鳩のおじさん、私は女の子だからね」
 不機嫌そうに家に戻る子猫の後ろ姿を見て、俺は何をしても駄目だと自己嫌悪を感じていた。

「ポッポ、ありがとうな」
 猫探偵がトウモロコシの粒が入った茶色の紙袋を差し出す。今日はごちそうだ、子供達の喜ぶ顔が浮ぶ。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?