大卒でタクシードライバーになった私が手に入れたもの
今日は6月末まで働いていたタクシー会社に、最後の挨拶に行ってきました。車庫に並ぶタクシーを見ながら、いろいろ感慨深いものがあったので、思い出を振り返りながらタクシードライバーの実態を少し書きます。
「酔っ払いとか強盗とか大変でしょ?」
タクシー会社で働いていると言うと、1番よく聞かれたのがこの質問でした。強盗と遭遇したことは一度もありませんが、酔っ払いはほぼ毎日乗せていました。車の中で寝込まれたり、罵声を浴びせられたりしたこともあります。
でも、乗車されるお客様の6割くらいは良くも悪くもない普通のお客様です。2割5分くらいが親切な方で、1割は意気投合して話も盛り上がるとても良いお客様です。私の場合、嫌な思いをさせられたお客様は5%程度しかいませんでした。
どこの業種でもそれくらいの割合なのではないかと思います。タクシードライバーだけが特別に辛い思いをしているわけではないのです。ただし、密室で対応している、助けも求められない、事故などの危険があるなどの状況もあり、タチの悪いお客様を乗せてしまった経験は色濃く残ります。お客様を乗せるのが怖くなってしまい、「タクシードライバーなんて底辺だ、人間のする仕事じゃない」と吹聴するドライバーが現れるのだと思います。
タクシーだけが異常に辛いわけではないのです。
「楽しい?」
これもよく聞かれました。私も入社する前は、単調な仕事なので飽きるのが心配でした。人目につく駅待ちのタクシードライバーが暇そうにしているのも、この仕事が退屈と思われる原因かと思います。しかし、私は2つの点でやりがいを感じていました。
1、× 送る仕事 ◎人を助ける仕事
タクシードライバーの仕事は人を送り届けることです。しかし、街中で困っている人を助ける仕事とも考えられるのです。
・終電を無くして途方に暮れている人
・会社に遅刻しそうな人
・肉親が事故に合い、遠くの病院に急遽駆け付けなければいけなくなった人
・とにかく家にいたくない人
様々な事情の人を乗せてきました。出産間近の妊婦さんを病院に送るという、漫画のような展開に遭遇したこともあります。皆さん、降りる時にはとても丁寧にお礼を言ってくださいます。お金をいただいている側なのに、こんなにお礼を言われる仕事は他になかなかないと思うのです。私としてもお客様にご満足いただけた後は、とても誇らしい気持ちになりました。
2、ロング1発の帰り道
タクシードライバーの喜ぶことといえば、やはり長距離です。片道2時間くらいかかるような仕事は、行き先を告げられた時点で興奮と不安で胸が高鳴ります。それくらいの距離になると、普段の仕事の圏内は外れているのでまさに未知の領域です。どの道が一番近いか?混雑状況は?車を走らせながらも、ベストの道を探して頭をフル回転させます。
無事に送り届けられた後は、ガッツポーズをしたくなるほど達成感がこみ上げてきます。帰りのコンビニでちょっと高いコーヒーを買って強張った体を伸ばしながら一服する、タクシードライバー至福の時間です。
なぜ辞めたのか?
やりがいも見出せていたましたが、結局、事故の恐怖に勝てませんでした。慣れれば克服できるかと思いましたが、それよりも先に、ビクビクしながら仕事をすることに耐えられなくなってしまいました。
約2年のタクシードライバーの経歴は汎用性がまるで無いので、職歴にもならないと思います。一生勤める覚悟がなければ安易に手を出して良い業界ではないとも思います。
ただし、この2年のおかげで、自分の人生を考える時間ができました。
「フリーライターとして生きていきたい」、30歳過ぎて新しい目標ができたので、タクシードライバーとして過ごした時間は決して無駄ではなかったと思います。
過去の経験を余すところなく束ねて、未来を作っていこうと思います。
フリーランス生活【22日目】
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