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Apple Font History 〜書体で見るAppleの歴史1〜

はじめまして。WOW UIチーム(仙台オフィス)デザイナーの門田です。

昨年新卒で入社し、今年で2年目になります。大学ではプロダクトデザイン学科でUIデザインを専攻し、趣味でグラフィックを作ったりしていました。よろしくお願いします。

さて、私は子どもの頃からAppleとフォントが好きです。はじめてのMacは12歳の時に買ってもらった「MacBook (13-inch, Aluminum, Late 2008)」でした。それまで使っていたWindows XPマシンとは比べ物にならないほど、すべてが美しかったことを覚えています。見た目だけでなく体験もです。XP時代はUIをMacに近づけようと、スキンを変えたり、Dock風ソフトを入れたり、フォントにアンチエイリアスをかけたりしていました。(今となっては、XPやその前に使っていたWindows 98にノスタルジーを感じて愛おしいです)

Appleには徹底して統一された世界観がありますが、その世界観自体はずっと変化してきました。製品デザインはもちろんですが、UIデザイン、ブランディングもそうです。そこで今回は、Appleを形作ってきたフォントを辿ることで、その移り変わりを見ていきたいと思います。

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1970年代

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1977年、Apple IIというコンピュータが発売されました。そのロゴとして使用されたのが「MotterTektura」というフォントです。「a」がアップルマークの齧られた部分にピッタリはまっているのが可愛らしいですね。今見ると、レトロフューチャーな感じもします。ちなみに、今のマークに通じるりんごが齧られたレインボーロゴは、この時に登場しました。

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スティーブ・ジョブズの名刺にも。
正式なロゴタイプだったことがわかります。


1980年代

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80年代に入ると、「Apple Garamond」というフォントがコーポレートフォントとしてロゴやブランディングに使われ始めます。1984年に発表された初代Macintoshのロゴもこのフォントです。Garamondは伝統的な書体で、その歴史は16世紀まで遡ります。最先端の機械であるコンピュータのロゴとして有機的なセリフ体を用いたのは、「テクノロジーとリベラルアーツの交差点」を目指したジョブズらしいかもしれません。Apple Garamondは2000年代の初めまで、実に20年ほどの間Appleを象徴する書体でした。

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Mac OS 9(1999)、Mac OS X(2000)、初代iPod(2001)、
PowerBook G4(2001)のロゴ。すべてApple Garamond


UI上で使われるフォント、システムフォントも見ていきましょう。当時のMac OS(System 7)のシステムフォント「Chicago」です。

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Chicagoは、2001年に発表された初代iPodなど、初期のiPodのUIにも登場します。まだディスプレイが低解像度だった時代、コンピュータの処理性能も低くアンチエイリアスもなかったため、このようなビットマップフォントが採用されていました。

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この頃、日本向けMac OSである「漢字Talk 1〜6」のシステムフォントとして、「Sapporo」「Kyoto」という書体が使われていました。これらのフォントについてはあまり情報がなく・・・・・・詳しい方がいたら教えて下さい。


1990年代

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1992年の「漢字Talk 7」「Mac OS 8〜OS 9」の日本語システムフォント「Osaka」は、英語版システムフォントChicagoにちなんで名付けられたと言われています。シカゴの姉妹都市が大阪なのです。Osakaもビットマップで真価を発揮するフォントです。同時期にWindowsで使用されていたMSゴシックよりも読みやすいとされています。(MSゴシックは仮名の幅が狭く、文字数を収めるという意味では実用的ですが、美しさに難点があります)

Chicago」や「Osaka」「Sapporo」など、2020年現在使われている「San Francisco」フォントも含め、Appleが都市名をフォント名につけることが多いのは、ジョブズの指示によるものだったといいます。


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Univers 57 Condensed Oblique」は、デスクトップMacのキーボードに刻印されていた書体です。細くて斜めです。1999年の初代iBookからは、元々フォルクスワーゲンのために作られた「VAG Rounded」が使用されるようになりました。2007年まで、主にデスクトップはUnivers 57 Condensed Oblique、ラップトップはVAG Roundedが使われていましたが、2007年のiMacからデスクトップもVAG Roundedに統一されました。

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写真:1990年代のデスクトップMacのキーボード(左)
2007年のiMacのキーボード(右)



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太ミンA101」は、2000年前後にApple Garamondとセットで、日本での広告で使われた書体です。こちらのサイトに残っていた「クレイジーな人たちがいる」の新聞広告を目コピで推定したのですが、おそらく太ミンA101だと思います。モリサワの伝統的な明朝体で、太さの肉付け具合にApple Garamondとの相性の良さを感じます。「PowerMac G3」や「PowerMac G4 Cube」、「iMac G4」など多くの製品の広告に使われていたようです。

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今回は1970年代〜1990年代に使われたフォントをご紹介しました。黎明期はかなり個性的なフォントを使っていたり、80年代以降は独自に様々な都市の名前のフォントが作られたりしていて面白いですね。

これらのフォントの多くは2000年代に入ると別のものに置き換わっていきます。Vol. 2では、2000年代〜2010年代について取り上げて、ジョブズ復帰後〜ティム・クック時代のAppleが採用するフォントを見ていきたいと思います。

<Writing:UI Designer / Yutaka Kadota>

出典元:
Apple
知っていたらおじさん認定。アップル・レインボーロゴの秘密|Geekroid
Infomance – Latest Technology, science and innovative tech stories
File:Macintosh 128K - Badge direct (3655727515).jpg - Wikimedia Commons
MacOS System 7.0.1 Compilation
各日本語入力プログラムの特徴(Mac OS 9.x以前)
File:Apple (Standard) Keyboard M0116.jpg - Wikimedia Commons



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