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論文紹介#2 ”Relationship between the ABO Blood Group and the COVID-19 Susceptibility”

こんにちは。飛び級で大学院に入学し、iPS細胞を使って研究を行っている土屋諒真です!
勉強の一環として毎週1本ずつ論文の紹介をしています!

今回は、世界的に大流行している”新型コロナウイルス感染症”に関する最新の論文から、コロナウイルスが血液型どのように関係しているかという”Relationship between the ABO Blood Group and the COVID-19 Susceptibility”の論文について解説をします!

なお、本論文はプレプリントであり、査読済みのものではないことをご理解ください。
また、新型コロナウイルス感染症に関する情報は厚生労働省やWHO(世界保健機関)などの公的機関からご確認をお願いいたします。
トップの画像はこちらからお借りしました。

論文はこちら
Zhao, J., et al. (2020, March 27). Relationship between the ABO blood group and the COVID-19 susceptibility. https://www.medrxiv.org/content/10.1101/2020.03.11.20031096v2

あくまで僕の理解と解釈、見解ですので、間違いがあった際には教えて頂ければ幸いです。また、著作権には細心の注意を払って配慮をしておりますが、何か不備がありましたらご連絡をお願いいたします。

(毎週一本ずつ解説していくと自分の中で決めただけに、ちゃんと2週目も解説できてよかった、、、)

I. コロナウイルスとは

 まず、本題に入る前にコロナウイルスとそれによって発症する新型コロナウイルス感染症について簡単にご説明します。
 コロナウイルスとは正式にはSARS-CoV-2(重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2)と呼ばれ、中国の湖北省武漢市で発症したといわれています。そもそもコロナウイルスにはαコロナウイルス(α-CoV)、βコロナウイルス(β-CoV)、γコロナウイルス(γ-CoV)、δコロナウイルス(δ-CoV)の4種類があり、α-およびβ-CoVは哺乳類に、δ-およびγ-CoVは鳥類に感染するということが知られていました。とくに、β-CoVはこれまでにSARSMERSのようなウイルス性肺炎を引き起こしており、どちらも世界中で急速に広がり、多数の方が亡くなった過去があります。現在問題となっているSARS-CoV-2はSARSやMERSを引き起こしたコロナウイルスと同じB系統(β-CoV)に属しており、6月26日の時点で世界では961万人が感染し、48.9万人が亡くなっています。日本でもおよそ18,000名が感染し、約1,000の方が亡くなっています。

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コロナウイルスは上の写真のように球体の表面にスパイク状の突起が多数あり、肺上皮細胞、小腸、腎臓、血管などに出現しているACE2(アンジオテンシン変換酵素2)に結合することで感染します。新型コロナウイルス感染症の大きな問題の1つとして、感染症によって多くの方が肺炎を起こしお亡くなりになっていることが挙げられます。このような肺炎サイトカインストーム症候群(他の細胞の機能や働きに影響を与える低分子たんぱく質の放出方により多臓器不全などの原因となる)は肺の細胞にACE2が多く存在しており、強い免疫反応を起こすために引き起こされていると考えられています。

II. 要約

  中国の武漢と深センにある3つの病院で確認された2000名を超えるCOVID-19患者のABO血液型分布を比較し、 新型コロナウイルス感染症にどのような関連があるのかを検証した論文です。その結果、A型の人はA型以外の血液型の人と比較してCOVID-19に感染するリスクが高くO型の人はO型以外の人と比較して感染のリスクが低いことがわかりました。

III. 研究背景

ウイルス感染の感受性は、ABO血液型と関連していることが以前よりわかっていました。例えば、ノロウイルスやB型肝炎は血液型によって明らかな感染力の差があります。また、血液型がO型の人はSARSコロナウイルスに感染しにくいことも報告されていました。本論文は中国の武漢と深圳の3つの病院の患者を対象に、ABO血液型とCOVID-19に対する感受性の関係を調べ、血液型がCOVID-19のバイオマーカーとなる可能性があるかどうかを検証することが目的です。

IV. 結果

まず、武漢の健常者3,694人(表ではcontrols (Wuhan Area))のABO血液型の割合分布は、A、B、AB、Oがそれぞれ32.16%、24.90%、9.10%、33.84%であり、武漢にある病院(表ではWuhan Jinyintan Hospital)のCOVID-19患者1,775人のABO血液型分布は、A、B、AB、Oでそれぞれ37.75%、26.42%、10.03%、25.80%でした。この数値を用いた有意差検定により、武漢の病院におけるCOVID-19の患者は健常者よりもA型の血液型の割合が有意に多く、逆に感染者におけるO型の血液型の人の割合は健常者よりも優位に低いことがわかりました。
さらに、COVID-19の血液型A型の人における感染リスクはA型でない人と比較して、オッズ比(ある事象の起こりやすさを比較するための統計学的指標)を用いて有意に増加し、COVID-19の血液型O型の人の感染リスクはO型でない人に比べて有意に減少していることが示されました。また、COVID-19による死者でも同様の結果が示されています。

また、武漢にある別の病院(表ではRenmin Hospital of Wuhan University)においてもサンプル数の関係で統計上の有意的な差は示されなかったが、上記と同様に血液型による感染リスクの差が見られました。

深圳における健常者(Controls (Shenzhen area))とCOVID-19患者(Patients from Shenzhen Third People's Hospital)を比較した同様の調査においてもO型の血液型の人の感染リスクは有意に低いことが示されました。ただし、A型の血液群においては差が見られず、AB型の血液群では感染リスクが増加するという結果も示されています。

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さらに、3つの年齢群(40歳未満、41~59歳、60歳以上)にグループ分けをして、COVID-19患者のABO血型分布に患者の年齢と性別が影響するかという調査では下記の表にまとめられている通り、どの年齢グループ・性でも似たようなデータが示されており、年齢ごと・性別による血液型の差はないと結論付けられています。

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V. 結論及び考察

本論文によって、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)と血液型には関係性があることが示されました。したがって、血液型はCOVID-19におけるバイオマーカーとして感染の検査に使えるのではないかと考察しています。また、SARS-CoVとSARS-CoV-2の間の核酸配列の類似性やACE2の類似性から、COVID-19に対してO型の血液型の人が低い感染力を、A型の血液型の人で比較的高い感染力を示した理由として、血液中の抗血液型抗体(特に抗A抗体)が関連している可能性を示唆しており、更なる研究が期待されています。

VI. 最後に

最後までお読みいただきありがとうございました。
昨今話題になっている新型コロナウイルス感染症と血液型に関連が示されたという論文、とても興味深かったです。
世界中で新薬・治療薬の開発が盛んにおこなわれており、感染者数の推移も含めて今後の動向に注目していきたいです。
改めてにはなりますが、この論文はプレプリントであり査読済みのものではありません。ですので、医療現場にこの知見を反映させないようご理解をお願いいたします。
また、新型コロナウイルス感染症に関する情報は厚生労働省やWHO(世界保健機関)などの公的機関からご確認をお願いいたします。

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