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今は亡き共謀者のための


※今回の話は異性愛者の、ちょっと歪な恋愛の話です。

男女というのは不思議なもので、大して好きでもなかったのに気がついたら結婚して子どもを育てていた、なんていうのはよくある話だ。

私は既婚男性たちの過去の思い出話を酒の席で聞いていて、「今も忘れられない、いちばん大好きだった女性」というのをよく耳にする。だが、そういうのは概して奥さんでも今の彼女でもなかったりする。

彼らのほとんどは、「然るべき時に、然るべき場所で出会った、その時の最適解」と結婚しているのだ。

そろそろ家庭を持って落ち着かないとな、とか、同年代がどんどん結婚していって焦り出したとか、だんだん禿げてきて自分の劣化を感じたとか。そういう時にたまたまそばにいた女性と、トントントンと話が進んだという人が大半である。

結婚というものは、個人の自由意志に基づいた行為に見えて、実はタイミングと環境に大きく影響されるライフイベントなのだろう。

何を隠そう私も一回めの結婚がそうだった。
そろそろそんな歳かと「時期」を感じとり、その時そこにいた良さそうな相手とちょうど「時期」が合い、色々一致してやっていけそうだったから結婚を決めた。まるで家を決めるみたいに。ただそれだけだった。


逆に、出会う環境や時期が適切でなければ、どんなに運命を感じる相手であっても、その関係は途絶えることになる。

そういう関係を極限までドラマティックに描いたのがロミオとジュリエットだし、
中学生同士だったら淡くて苦い初恋の思い出だろうし、中年になってからの泥沼不倫かもしれない。

こうやって書くと、「では、適切な婚活のタイミングと環境とは!」「成功の秘訣とは!」「永遠に続く恋とは!」と話が続きそうだけど(色々有益なことが書けそう)

今回私が話したかったのは、「いつか死に絶えるほかない不遇な関係」のほうである。「成就しなかった運命の恋」のほう。

私は過去、不適切な時期に、不適切な場所で、運命の相手と出会い、
それが死んでいくのをじっと見守っていたことがあった。

その時の私がもっと若かったら、もっと派手にこねくり回していたかもしれないけれど、
当時そこそこ経験も積んで、守りたいものもあって、他者への執着を手放せるようになってきた歳だったから、
その恋は電源を外された電子機器みたいに徐々に力を失っていき、最終的には息を引き取ることになった。そして二度と充電されなかった。

でも人生の輝きとか深みって、そういうところにこそあるのかもしれないと、最近思う。
つまり、死んでいった恋、叶わなかった約束、確かに運命を感じていたのに二度と会うことのない相手とか。

そういうものは心の中で小さな結晶になるのだ。宝石と言ってもいい。
時々思い出して取り出しては、そのキラキラするものを眺めてみる。
当時の出来事に思いを馳せてみる。当時の2人に。

そしてその人に。


***

その人とは変態の巣窟で出会った。

(「変態」と言うと失礼に聞こえるけど、彼なら褒め言葉と受け取ってくれそうな気もする)

私は当時、初代達人であるみっちゃんを失ったばかりで、新たな達人を発掘している最中だった。
※みっちゃんについてはこちら↓

私の対変態アンテナの感度は最高潮で、その人が本気でその道を極めている人だということはすぐにわかった。

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