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非営利組織の理事が無報酬であることのGreatness

非営利組織の理事を非常勤でつとめる場合、大半は無報酬です。これは日本もアメリカ合衆国も同じ。イギリスでもそのようです(下記、ちょっと昔の記事ですが)。

法規制や慣行上求められている点でも、実情もそう。

ただ、責任ある立場の理事が、報酬を受け取るべきか、受け取らないべきかは、議論が分かれるところです。

特に、非営利組織で不祥事が起きた際に、「理事や監事は一体何をしていたんだ?」となり、「いや、別に本業もある中、無償でやっている役員がそこまで見きれないよ」とジレンマが浮かび上がります。

また、コーポレート・ガバナンスの社外取締役と比較して、「報酬をもらわないのに、責任だけ重すぎる。釣り合っていない」、「報酬がないからいい人が集められない。」という声があります。

たしかにそういう面はある。

でも、それだけではないなと思います。

ちなみに、アメリカのシンクタンク Urban Institute の調査によると、理事に報酬を支払っているかと、理事の関与度には負の相関関係が見られたそうです。(理事会の会議の出席率と報酬の間には正の相関関係があったそうだが。)興味深いですね。


目ざす未来にピュアに加担したい


私は、WITで常勤の理事(代表理事兼業務執行理事です)をつとめる以外に、2つの団体の非常勤理事をしています。(NPO法人アスイク@仙台 と PLANET Boston@米国マサチューセッツ州で立上げ中)

自分が非常勤で理事をするときには、その団体のミッションに心から共感し、その実現のために関わらせていただく、という心もちです。

WITの前代表が心臓病になり、それがきっかけで私は代表を引き継いだこともあって、理事をしている団体や団体の代表にもしも何かあったらどうするか、そのミッションの全うに対して何ができるか、をよく想像します。

たとえお金をいただいたとしてもやるけれど、なくてもやる。それはなぜか? 

もちろん、理事としての関わりを通じて得られる、学び、人とのつながり、スキルアップなどのベネフィットは山ほどあります。

でも、一番大きいのは、その団体を通じて目ざす未来を実現するためなんです。


いや、むしろお金をいただかないからこそ、自分がその未来にコミットしているということが、ピュアに問われるんだと思うんです。

団体のミッションやもたらしたいインパクトに対して、忠実に、考えられているか、意見がいえているか、必要なときにいろいろな形態の資本を提供できるか。(金銭だけではなく、知的資本、評判資本、政治的資本、社会関係資本も。詳しくは『非営利組織のガバナンス』より。)

無償というか、こちらから心を砕いて、時間といろんな資本を提供していく。それって、相当共感していないとできないことです。そう沢山できることじゃない。

WIT理事の桜井肖典さんは、「自分にできることには限りがある。それを代わりにやってもらっている、そういう気持ちで理事をやっている」と話していました。

これを運営実行していく側からみると、そういう理事たちがいてくれることは心が引き締まります。

すごくピュアな形での、未来への奉仕。純粋にその未来を願っていないとできない。

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「利他は認知バイアスを外す手段である」


私個人が呼びかけ人、WITが賛同人として関わらせていただいている、Community Based Economy のアカデミーで、先日、大室悦賀先生が、「利他は認知バイアスを外す手段である」 と話していました。

この、理事が結構なレベルの「利他」な姿勢で団体に関わるというのは、理事個人にとっても、団体にとっても、この「認知バイアスを外す」メリットはすごくあるんじゃないか、と思いました。

細かくは省略(というか、まだ全部わかっていない)しますが、認知バイアスを外すことは、新しい社会をつくっていこうとする非営利組織の可能性をよりひらかせてくれます。それに、関わっている理事が、普段の思考の癖や限界を「すーっ」と越えられる可能性があります。

それが、理事自身の仕事や人生にプラスに働くし、団体のインパクトにもつながりうる。



ところで、ここでさらに報酬をもらうのではなく、逆にお金を出したりすると、コミットが高まります。(理事だけの話ではなくて、広く、ボランティアに言えることです。これはSVP東京で自ら経験しました。)

お金を逆に出すとコミットが高まる。自分が何かをGiveしていると、その見返りを得ようという意識は、多くの場合働きます。(Giveして本当になにも見返りを求めないという関わり、を実験している例もあります。)


報酬を受け取らない理事がいて、「Giveしているから、それを、ミッションの実現、インパクトでちゃんと形にしようよ」というのは、

社会的ミッションに忠実に向かうガバナンスを可能にする大切な要素なんじゃないかな、と思うのです。


まだ色々考え中ですが綴ってみました。

それではまた!!


山本未生




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