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きゅるきゅるとか、夏、とか


 

だって僕だってわかっている。

 


大森靖子と最果タヒとdaokoとインターネットで構成されている僕の恋なんて絶対上手くいかないこと。あまりにも夢をみすぎで、というか現実が、社会が、将来が嫌いすぎる。

 大森靖子さんのvoidって曲の「愛したフリして抱き締めてくれたら」「傷つきたくない嫌われたくないだけど寂しい傷つかれたくない」って歌詞が大好きだし、

ZOCのfamilynameの「可哀想抜きでも可愛いし私をぎゅってしないなんておかしい」なんて思っている。
でもそれは誰にも言わないし、(言えないし)誰も笑ってくれないのにブスだから恋できないわ〜とか言ってみちゃって、雰囲気を悪くして、勝手に一人で死んでいる。



 甘くて可愛い言葉で頭を、スマホの画面を埋めつくしたとしても、私は甘くて可愛いお砂糖とスパイスと素敵なもので出来ている訳では無いし、恋をしたから、なんて素敵な理由で身体がそれに勝手に作り変わってくれるわけではない。

 悲しい。私だってお砂糖とスパイスで構成されてみたかったし、モンスターエナジーと錠剤で構成される30キロ台の女の子にもなりたかった。


 

私は恋をすると本当の本当に不安定になってしまう。


恋をすることで幸せな時間を得られる、とは思う。けれどそれで麻薬みたいな強烈な''しあわせ''を手に入れてしまっでもその後には当たり前に禁断症状がでるし、それを埋めようとして自分をしあわせにするための、でも自分が傷つくことばかりしてしまって、わたし馬鹿だからどんどん悪化させてしまう。

 
学校に行くために、塾に行くために、近くのコンビニに行くために、まともな生活をしてる訳では無いのに、そんな生活でも、街を歩いているだけで鼻に入ってくる、誰かの吸っている煙草の匂いだけで何も考えられなくなってしまう。

 道端に落ちている街路樹の葉や、その日の気温や阿っ呆みたいに綺麗な夕焼けやそんな何の意味もない、機械的に動いているだけの世界のひとつひとつに意味をみい出そうとしてしまう。

 そうやってひとつひとつに好きな人が隣にいたことを思い出して、貴方の影を見出そうとしている。それはかなりの確率で成功をして、でも成功してしまったって苦しいのだ。
 こうやってちょっとずつ貴方の影を思い出して、わたしまだ''しあわせ''だって暗示をかけて苦しみを先延ばしにする。大体その日の深夜2時くらいには苦しみ、迎えに来ちゃうんだけど。




結局いくら架空の夏に憧れたような恋をしたって、その恋のために僕は死ぬことはできなくって、だから好きな人と別れたあとの帰り道でずっといきなり警報が鳴り出して、あと一時間で隕石が落ちてくるのでみんな思い思い過ごしてくださいって誰かが言ってくれることを、許してくれることを望んでいた。

 

これはちゃんと恋をしてみて初めて気づいたことなんだけれど、しあわせな記憶って本当劇物で、しあわせな間は何の害もないのに少しそこから離れるだけで心をじくじくと蝕んでくる。

 この日々が終わってしまったら、多分わたしはこの記憶に心とか脳みそとか全部殺されてしまって、でも身体とのバランスがとれなくて本当にどうにかなってしまうと思う。




あーあ、どうせ私の走馬灯に貴方が出てくるのは分かりきっているのだから、貴方の走馬灯にも私を出してくればいいのに。

貴方の人生に私がいて、それが消えない傷になってしまえばいいのに。私がいないだけでちょっと落ち込んで、財布の中身とか動揺してぶちまけちゃったりしてくれたらいいのに。野良猫を見つけただけで連絡をしようか散々迷えばいいのに。中学生の頃とかに散々馬鹿にしていた恋の歌がラジオから流れてきて、案外刺さっちゃって、何も言えなくなっちゃえばいいのに。




私のこと以外どうでも良くなって、二人でちょっとの音楽とちょっとの本とかを都合よく使って真似をして、世界のことなんてよく知らないで、分かろうとも見ようともしないで適当に「運命だね」なんて言ってくれればいいのに。





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