高校の修学旅行 #わたしの旅行記

※こちらは以前投稿した記事を投稿企画の「#わたしの旅行記」用に編集再掲したものです。

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高校の修学旅行

高校2年生の夏、修学旅行に行った。
行き先は北海道だった。
私は小学校から付属の学校に通っていて、少し特色のある学校だった。
高校の修学旅行の行き先はコースを選択する形になっていて、生徒によって行き先が違っていた。
当時のコースはうろ覚えだけれど、北海道、沖縄、韓国、マレーシア、あともう一つくらいあった気がする。

修学旅行のコースを選ぶのは高校1年の終わりだった。
当時一緒にいた友人たちのほとんどは、海外に行きたいと言ってマレーシアのコースを選んでいた。
当時からインドア派であまり外に出たくない私は、海外に行くのも気が進まず、さらにマレーシアは川下りをすると聞いて選択肢から外した。
夏に行くなら北海道がいいなと思っていたら、幸い同じグループの友人の一人が北海道に行きたいと言ったので、二人で北海道にすることにした。
海外に行きたい生徒が多かったのか、北海道コースを選んだ人数は少なめだった。
その後、修学旅行のしおり作りなどで、コースごとに集まる時間があって、集まったメンバーを見て、平和なメンバーだなと思ったのを覚えている。
羽目を外しそうな生徒はいなかった。

だが、2年生に進級するときに事件が起きる。
一緒に北海道コースを選んだ友人が、留年してしまったのだ。
もう一度1年生をすることになった友人は、修学旅行には参加できない。
結果的に私はグループで一人、北海道に行くことになった。
同じ場所に全員で行く団体行動の時は問題ない。
問題は自由行動のときだ。
平和なメンバーは優等生が多いから、頼めば一緒に行動させてくれたと思う。
でも、私はそうしなかった。
仲の良いグループで回りたいだろうな、邪魔だと思われるのは嫌だなと気が引けてしまったのだ。

自由行動は札幌だった。
本当は前日に札幌に着いているはずだったのだが、天候不良により北海道内を移動する飛行機が飛べないというハプニングが発生。
急きょ電車での移動になったため、自由時間が設けられたのは帰る日の当日だった。
夕方に乗る帰りの電車に間に合うように集合時間が設けられ、札幌駅でいったん解散。
それぞれグループで去って行く中、私は一人で自由時間を回ることにした。
厳しかった親の言いつけを守り、箱の中に入って遠出をすることがなかった17歳の冒険である。

まずは駅のタクシー乗り場に並んだ。
このときの私は旅行鞄を持っていた。
ロッカーに預ければ良かったのだろうけど、これは当時17歳の私の作戦だった。
すぐに順番が回ってきてドアが開き、旅行鞄と一緒に乗り込む。
行き先を尋ねるタクシーの運転手さんは人が良さそうに見えた。

「ラーメン横丁までお願いします」

札幌に行ったらラーメンを食べようと思っていた。
さらに旅行鞄を持ってラーメン横丁に行こうとしている人は、旅行客だと思ってもらえるだろうと思ったのだ。
そう、17歳の私は、オススメの場所に詳しいのはタクシーの運転手さんだろうと踏んで、教えてもらおうと思っていたのだ。
案の定、運転手さんは「旅行ですか?」と聞いてきた。
そこで私は今までのことを説明する。
修学旅行できたこと。
同じコースを選んだ友人が留年してしまったこと。
飛行機が飛ばなくて、札幌に今日着いて今日帰らないといけないこと。
どこに行ったら良いかわからないけど、とりあえず北海道のラーメンが食べたいと思ったこと。

その時の私は、どこかオススメの場所を教えてもらえないかなという思いと、あわよくばそこまで乗せて行ってもらえないかなという期待があった。
私の話を聞いた運転手さんは「ラーメンはラーメン横丁がいい?もっとオススメのラーメン屋さんがあるんだけど」と提案してくれた。
期待通りである。

しかもその後、運転手さんはさらなる提案をしてくれた。
帰りの集合場所と集合時間、この自由時間での予算を教えてくれれば、その範囲でオススメの場所を回って案内してくれると言うのだ。
予想以上の話だった。
……いや、当時の私の想像の片隅に、そういう期待も僅かにあったかもしれない。
ただ、そんなに上手い話が出てくると思わなかった。

「せっかく札幌に来たのに、全然回らないで帰らないと行けないなんて勿体ない」
運転手さんの言葉に、私は余裕のある範囲で予算を伝え、集合場所と集合時間を伝えた。
そこからタクシーの運転手さんによる個人ツアーのスタートである。
しかも運転手さんのガイド付き。
冬になると雪まつりが開催されるのはこの道だとか、この木は葉も実も赤くなるとか、塩ラーメンだったら今から行くところがオススメだとか、いくらの醤油漬けの作り方とか、色々なことを教えてくれた。
ラーメンを食べている間は待っていてくれて、常連さんらしくお店の人と話したりしていた。

印象に残っているのは大倉山の展望台と羊ヶ丘展望台。
大倉山の展望台は自分一人だったら行く先に選ばなかったと思う。
見下ろす景色がすごかった。
羊ヶ丘展望台ではクラーク博士の像を見て、アイスクリームを食べた。
「アイス食べる?おじさん、ここのアイスが好きでね。おじさんが食べたいからごちそうするよ」
そのときには自分のことを「おじさん」と言っていた運転手さんは、アイスクリームをごちそうしてくれた。
今、羊ヶ丘展望台のHPを見たら、販売されているのはアイスクリームではなくてソフトクリームだった。
もしかしたら、ソフトクリームだったのかもしれないし、当時はアイスクリームがあったけど今は売られていないのかもしれない。

そんなこんなで、一人でどうしたものかと思っていた修学旅行の自由時間は、親切なタクシーの運転手さんとの出会いで、贅沢な個人ツアーになったのだ。
当時、うちの親よりも年齢が上のように見えたので、もう運転手はしていないと思うけれど。
あのときの経験は、親の言う通りの優等生でいるのに疲れて、色々思い悩んでいた私にとって、ちょっとしたチャレンジであり冒険だった。
その後、北海道に行っていない私にとって、北海道と聞くと思い浮かぶのはタクシーの運転手さんのことなのだ。

もう、名前も覚えていないけれど、あのときはありがとうございました。
一人旅が好きになったのは、運転手さんのおかげかもしれません。


こんにちは。羽根宮です。
投稿企画の「わたしの旅行記」に参加いたします。
最初は昨年から今年くらいの、比較的最近出かけたことを書こうと思っていたのですが、まずはすでに書いたものを再利用することにしました。
最近の旅行記も締め切りまでに書きたいなと思っています。

旅は非日常なので、新たな価値観に触れたり色々な出会いがあったりして、良い経験になると思っています。
その土地で何を食べるか考えるのも楽しいし、お土産などを選ぶのも好きです。
願わくば好きなときに旅行に行くことができるスケジュールや資金面の余裕が欲しいですね。切実。

読んで下さってありがとうございます。
羽根宮でした。

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