見出し画像

オフィスとリモート、どちらが満足して働けるのか。その鍵は休憩や業務時間外に?

2022年ももうすぐ終わり。オフィスとリモート、今年はどちらで多く働きましたか?来年以降の働き方、オフィスのあり方を考えていらっしゃる方もいるかと思いますが、結局のところ、どちらの方が満足度高く働くことができるのでしょうか?

こういった議論では、集中やコミュニケーションなど業務時間中にどんなメリット・デメリットがあるかの議論になることが多いかと思います。そこで今回は、働く人の満足度は勤務時間の前後(勤務前、休憩、勤務後)の影響も大きいと考え、通勤・休憩・残業に絞って、リモートとオフィスの満足度について考えていきたいと思います。

<通勤>ストレスがなくても、満足度が高いわけではない

オフィス出社とリモートワークについて、まず勤務時間前の過ごし方や業務への影響について考えます。ここでまず確認しておきたいのが、「通勤ストレス」に関する調査です。通勤ストレスが実際に業務やエンゲージメントについてどのような影響を与えているのでしょうか。ザイマックス総研の通勤ストレスに関する調査では以下のような傾向が確認されています。

通勤ストレスが低いグループほど仕事満足度が高い傾向がみられた。
通勤ストレスが低いグループほどプライベート満足度が高い傾向がみられた。
通勤ストレスが低いほど、生産性やエンゲージメントに関する項目について「あてはまる」と回答する割合が高くなる。

ザイマックス総研「通勤ストレスがワーカーの満足度に与える影響」

この調査の結果から、通勤時間に関わらず、通勤ストレスが生産性や仕事のやりがいに影響を与えることがわかりました。ではリモートワークの選択肢を加えて見ると、どうなるのでしょうか。ここからはコロナ禍で広まった在宅勤務という選択肢も含めた「通勤時間別の幸福度の平均値」についてみてみましょう。

在宅勤務の該当者は少ないため、信頼区間が広くなっているが、係数はほぼゼロで、片道の通勤時間が10分以内の人と幸福度に大きな違いが確認できないことを示している。一方で、在宅勤務ではない人については通勤時間長くなるにつれ、係数がより大きくマイナスになっていくことが確認できる。つまりこの推計結果は、通勤時間が長くなるほど幸福度が低くなる傾向を示している。

ニッセイ基礎研究所「通勤時間と幸福度の関係-リモートワークの拡大で幸福度は高まるか?」

この調査では、通勤時間が長くなればなるほど幸福度が下がるという傾向を認めていますが、リモートワーカーについては、仕事と幸福度に関係する項目(家族構成、年収、健康状態など)が多様であるため、満足度のばらつきが見られるとしています。よって、通勤ストレスがないからといって幸福度や満足度が必ずしも上がるというわけではなさそうです。

<休憩>どこにいたって取りづらくなっている

次に考えたいのが、オフィスvsリモートでのお昼休みの違いです。1日に平均8時間働くのであれば、途中の休憩時間は体力的にも集中力を保つためにも欠かせない時間です。しかし、オフィスワークにもリモートワークにも休憩が取りにくいと言う問題が共通してありそうです。
まずはオフィスで休憩が取りづらいと感じている調査です。

◆オフィスワーカーの81.8%が業務中のこまめな休憩が必要であると回答。一方で、約半数の49.0%は業務中に休憩が取りづらいと回答。
◆また、オフィスワーカーの81.4%は「周囲の人には適切な休憩を取ってほしい」と感じており、69.0%は「業務中に頻繁にリフレッシュする時間をとること」に対して賛成と回答。個人の実感と周囲に対する考えとで休憩に対する意識に大きな差があることが分かった。

JT「日本における「職場の休憩実態」を調査!「周囲の目」によるオフィスワーカーの“休憩忖度”の実態が判明」

次はリモートワーク時にランチ休憩が減っていると言う調査です。

リモートワークをするようになり、ランチ休憩時間が減ったと回答した人は、約6割となりました。さらに約2割の人は、ランチ休憩時間が50%以下に減少していることが明らかになりました。休憩時間が短くなった理由としては、「ついつい頑張ってしまう」「仕事に集中できない分、食事の時間を短くしている」という回答がありました。
67%の人は、ランチの休憩時間が60分未満であることが明らかになりました。
◆休憩時間が減って困っていることは、「オンとオフの切り替えができない」が最も多く73%となり、ついで「ご飯をゆっくり食べる時間がない」(40%)、「集中力が続かない」(30%)という結果となりました。

エデンレッドジャパン「<調査>リモートワーク中は約6割の人がランチ休憩時間減少」

オフィスで仕事をしていると、一緒にお昼ご飯を食べる人がいたり、休憩時間の終わりにはみんなで業務に戻ることができたりとメリハリはつけやすい状態です。そのため、家にいると自分の都合のみで短めの休憩を取ったり、結果的に休憩がなくなってしまったりすることが増えていそうです。

また、リモートワーク時には休憩時間がバラバラになってしまうことも多く、自分の休憩時間に他の人が働いている場合は、電話やチャットなどがくることによって「休憩を取っている時に邪魔をされたくないなど、スキルの高い労働者がフルタイムのフリーランスになるケースが増えている」と指摘する声も上がっています(Business Insider「監視されている方がやる気が出る? 管理職の3分の1は従業員にフルタイムでオフィスに戻ってほしい —— 最新調査」

本来、在宅勤務中の休憩時間を自由に選べる理由は個人の働き方にベストなタイミングで休憩ができると言うことが満足度にも関わる大きなメリットなはずです。より生産性的に働くために、どんな長さの休憩をいつとるかは個人次第でOKという柔軟性も、結局邪魔されてしまったり、十分に休息できていないと感じれば、逆効果になってしまいかねません。
休憩時間に関しては、オフィスにいた方が直接的に周りの目が気になると言うことはありつつも、オフィス/リモートに共通して「意識」に関わる課題が多く残っていそうです。

<残業>数字と実態があっていないかも

最後に注目しておきたいのが、業務時間後。すなわち残業です。
2020年に在宅勤務が普及してから、オフィス勤務と在宅勤務での残業を比較する記事が多く出ています。基本的には各企業で勤怠打刻を徹底したり、PCのログなので実際の勤務時間がわかるようにするなど、残業が増えすぎないような工夫をしているようです。ただ、その中でも自宅など、周りの目の届かないところでサービス残業をしている人はまだまだ多いとも考えられています。
厚生労働省が発表している調査では、業務時間を短く報告している例についても注目しています。

◆テレワーク実施者の所定外労働・深夜労働・休日出勤の労働時間の報告の状況について、「おおむね働いた時間どおり報告している」が多いが、「働いた時間よりも実際には短く報告することが多い」「PCログ等で労働時間が把握されている(自己申告しない)」も一部存在。 ◆テレワーク実施者のうち、「テレワーク(在宅勤務)時の労働時間を実際より短く報告する」と回答した者にその理由を尋ねたところ、「働いた時間の中に作業に専念できない時間があったから」が多い。また、「実際に働いた時間のとおりに報告しにくい社内の雰囲気があるから」も一定程度存在。

厚生労働省「テレワークの労務管理等に関する実態調査【概要版】」

「サービス残業」や「隠れ残業」防止のために、オフィス出社をメインにし、退社時間を徹底することで残業を抑制するという方法もあります。しかし、業務効率化や「サービス残業せざるを得ない」という状態を変えていくことで、満足度を変えられる本質的な変化が求められているのではないでしょうか。

まとめ

仕事はただ終わらせればいいというだけでなく、満足度高く仕事をするのであれば、その前後の時間の使い方に大きく左右される複雑なものだと思います。

ここまでの内容で分かったことは、

  • 基本的に通勤時間が長いほどストレスも強く、生産性やエンゲージメントに影響を及ぼす可能性がある

  • リモートワークは通勤と比べると幸福度が高くなる傾向にあるが、個人差も大きい

  • 十分な休憩時間が取れないと感じるのはオフィス/リモートに関係なく、周りの目が気になるかどうか

  • リモートワークにすることで、勤怠管理を徹底する企業も増えているが、業務時間を実際より短く報告するなど「隠れ残業」の課題あり

  • 残業対策としてオフィス出社を促すこともできるが、本質的な変化があるわけではない

結局のところ、オフィス出社だから、リモートだから問題が全て解決されるということではありません。ただ、以前のオフィスだけ、リモートだけの働き方では通用しなくなっている理由として、会社の文化・雰囲気・業務効率化や、個人の業務内容・家族構成・年収・健康状態などが関係することを実感している企業・人も多いのではないでしょうか。多様な働き方をサポートする上で、働く場所だけでなく、働く時間や仕事のON/OFFの境目となる業務時間外に注目することも、これからの多様で持続可能な働き方を見出すきっかけになるかもしれません。


Workstyleラボ 「これからのワークスタイルを考える」マガジンでは、国内外でのリサーチやインタビューをもとに、変わりゆく働き方について発信しています。

みんなにも読んでほしいですか?

オススメした記事はフォロワーのタイムラインに表示されます!