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自分が疲れていると気づかなかった子にできることは感情の名前を教えること

「なんかつまんない」
8月に入ったばかりの暑さの厳しい日
幼稚園から自宅まで歩いて帰る途中
5歳の女の子がボソッと呟いた


この記事は以前書いた
子どもの話を聞くということ・自分の気持ちを話すということ①
現在のアイデアを加筆・修正しました


1,2年前、知人の子どもを
夏休みの間だけお世話をしていた
親の代わりに幼稚園に迎えに行って
親が帰宅するまで一緒に過ごしていた

ある暑い日に
5歳の彼女を迎えにいくと
家までの道中にいつも
マシンガントークのように
喋り続ける彼女が
「今日、体操教室があったんだ」
と言ったきり静かだった

手を繋いでトボトボと歩く

暑かったし、疲れたのかな?
と思って様子を見ていたらポツリと
「つまらない」
とつぶやいた

その言葉を聞いた時
きっと以前の私なら
「じゃあ楽しいお話しよっか!」
「しりとりしながら帰ろうか」
「疲れちゃった?」と
声をかけていたと思う

だけどこの「つまらない」という
言葉の裏に何があるのか
引き出してみたいと思った

「なんでつまらないと思ったの?」
「暑いから」
「暑いとつまらないと思ったんだ」
「うん」
「私だったら暑いのに体操教室に
 行ったら疲れたって思うけど」

するとその子は
突然しゃがみ込み

「疲れた! 疲れたよー!!
 おんぶして! 歩きたくない!!」

と叫んだ

あぁ、この子は自分が
疲れていることに
今気付いたんだ…

その子の幼稚園では毎日のように
運動や文字の練習がある
その時は夏祭りに向けて
踊りや和太鼓の練習があるという

そして手には濡れた水着が入った
プールバッグがある

話を聞くだけで
疲れていることは簡単に想像できた

でも、彼女は自分が疲れたと言えなかった

なぜだろう?

今、自分か感じているのは
「疲れた」という状態だと
知らなかったのかもしれない
でもきっと彼女は
疲れたを封印しなければ
いけない状態だったのだ

それは私が昔働いていた場所で
実際に起きていた

子どもが疲れたというと
クラスが回らないのだ

発表会前は合奏や劇の練習など
”やらせなければいけない”
プレッシャーがある中
30人近い子どもの
「疲れた」
「やりたくない」
と言うのに丁寧に寄り添って
声をかけるのは
はっきり言って無理だった

だから

「そんなこと言ったら
 楽しみにしてる
 お母さんもお父さんも
 悲しいと思うな」

「大丈夫!できるよ!
 一緒に頑張ろう!」と
一見ポジティブに見える声を
かけて何とか子どもをうまく
「のせて」こなさないと「回らない」のだ

だから子どもは大人が「疲れた」という
言葉を覚えさせるから「疲れた」と
言うのだ。本来子どもには
疲れる感覚はない
という上司もいた

疲れたと言う子に
「そんなこと言う子はやらなくていい!!」
とみんなの前で怒る先輩もいた

もちろん色々な考え方はある
でも私は子どもであっても
疲れている感覚を知っておかなければ
いつか限界がきてしまうと思う

この子は「疲れた」という
言葉を言えず
自分が疲れている状態だと
いうことを封印していた

だからそれを「つまらない」
という言葉で表現していた

でもその「つまらない」という
感覚は実は
「疲れた」という名前であることを
知って一気に爆発したのだろう


子どもは自分の知っている
言葉でしか気持ちを
表現することができない

だから「疲れた」を知らないと
「つまらない」になったり
空腹でもないのに
「お腹すいた」
と違う言葉で表現する
うまく言葉で表せず
イライラしやすかったり
泣いてかんしゃくを起こす

だから大人にできることは
その感情がなんというのか
子どもの話を聞いて
名前をつけてあげることだ

空腹だと思って慌てて
ご飯を用意したのに全然食べなくて
「お腹すいたって言ったのに違うじゃん!」
とイライラしたことがある人は
子どもが何か別の感情を
お腹すいたと変換しただけ
かもしれない
(私は何度も経験した)


ゲームで負けてかんしゃくを起こしても
それが「悔しい」と言う気持ちだと
ラベリングする

また、絵本や物語を通して
色々な感情があることを知って

たくさんたくさん感情と言葉を
子どもの引き出しにストックしていくのだ


「疲れた」状態を知った
5歳の女の子は
次からお迎えに行くと
「今日は疲れたー!
 だってプールしてから
 お当番もあったんだよ!」

と自分の状態の話を
するようになった

また別の日には
「今日はそんなに疲れてないけど
 でも、めっちゃ元気でもない」
と、微妙な状態を表現しようとしていた

なので
「じゃあ、ご飯を美味しく食べて
 たっぷり寝て、めちゃくちゃ元気!
 を10。
 もう、ご飯も食べられない
 今すぐ横になりたい
 何にもできない
 を0にしたら今はいくつぐらい?」
と、聞いてみると
「えっとー、6くらい」

とメーターで表現する方法を取り入れてみた


するとその方法が気に入ったようで
その後から
「今日は10だから公園で遊んでいこう!」
「今日は7くらいかな〜
 だって体操教室あったから」

と会うとすぐに今の疲れ具合を数字で
教えてくれるようになった

これがとてもわかりやすかった
大人同士でも、この表現は使いやすく
自分の状態を相手に知ってもらったり
相手の状態を”観察して察する”ことなく
具体的に知ることができる

感情や体の状態は
とても複雑で
一つの言葉で表すことは難しい

元気か疲れているの二択ではない
その間の表現を知っていること

疲れ以外にもたくさん自分の気持ちを表す
方法を知っていることで
人には色々な感情があることを知るのだ


いつも元気でなくてもいい
疲れていてもいい
疲れたって言えること
疲れたって言える関係性でありたい


yakko


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