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フィンランド在住の児童民生員が教える、思春期の子どもとの穏やかな関係の作り方③学校いじめ


子供の頃に起きた出来事が、
大人になってもまだそのトラウマに苦しみ、
その出来事が後の人生にどれほどの影響を与えて、
どのように生活で気付くか、知っていますか?

クーシカッリオは著書で性的被害者たちは共通して被害に遭っていない人に比べて、よりストレスを感じやすく、より自分を責めやすく、より性行為の必要性を感じやすく、心を十分に落ち着かせるのがより難しく、性行為を一切しないと考えます。(Kuusikallio ym. 2012) 

性的被害、家庭内暴力や育児放棄などのニュースは自分の世界と
かけ離れ過ぎていて、稀な出来事で私の周りにはそんな経験がある人はいないよと信じていませんか?では、学校いじめはどうでしょう?

児童民生員の私は学校いじめが与える大きな出来事が今の困難の根源になっていることが多々あります。自分の子どもが学校に通い始めた時、自分がいじめを経験した年齢に達した時に普段は眠っている昔の出来事が思い出されて息がしにくくなったり、パニックになったり、鬱の症状が出たりすることがあります。(Mileli n.d.) 

フィンランド人写真家のAnnuska Dal Masoはブログで学校のいじめは誰の責任なのかを保護者の意見として書いています。なぜ学校イジメを撲滅することやすぐに芽を摘むことが出来ないのかは彼女にとって謎だとしています。KiVa-Kouluプログラムがあってもイジメは無くならず、そして彼女の周りにいる教師たちに聞いても納得する出来ない理由が貰えたことがないとも書いています。そして保護者もおかしいと感じてもすぐにいじめの芽の報告することや、いじめっ子を責めたり、強くなりなさいと言うこと以外で対応することが出来ていないとも書いています。保護者としてなぜすぐに行動に移せない一つの原因として自分の子どもがいじめられる恐怖があります。それと同時に自分の子どもがいじめっ子かもしれない事実が怖いことが挙げられています。自分の子どもがした行動がいじめられっ子の人生を狂わしたのではと考えるのも、向き合うのも辛いとしています。(Annuska Dal Maso 2019)

....juuri siihen minä uskon, että meillä on mahdollisuus puuttua.
(保護者の感じる恐怖にたいして)私たちは何か出来る可能性があると信じています。- Annuska Dal Maso, 写真家

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KiVa-Kouluとは?

フィンランド人写真家のAnnuska Dal Masoの言葉のように保護者以外の人たちも学校いじめに対して何か出来ると信じていると思います。学校いじめを保護者側ではなく学校環境の面から考えていきましょう。

フィンランドには10年以上続いてるKiVa-Kouluというフィンランド発のいじめ対策学校プログラムがあります。2000-2009年の間には増加傾向があった学校いじめも、最近では現状が少しづつ改善されて行っているという報告があります。しかし残念ながら全くのゼロになったという報告はなく、子どもや若者から学校いじめの話を聞きます。
KiVa-Kouluはトゥルク大学が主体となって進めているプロジェクトですが、多くのフィンランド国内外で使用されており研究も活発に行われています。

"KiVaとはフィンランド語の Kiusaamisen Vastainen(いじめに立ち向かうこと)の頭文字をとった造語であるが,フィンランド語の形容詞でkivaという素晴らしい,気持ちのいい)の意味とも掛けています。このプログラムは教育省の補助金によって考案され,学識経験者によって強化されました。いじめに対する学校教職員の使う道具として考えられたプログラムです。学級単位、学校単位の2つの視点からいじめ防止としつこいいじめが無くなることを目的に問題に立ち向かっていくものです。このプログラムは基礎教育学校1~9学年生(訳者注:日本の小中学校に当たる)に照準を合わせています。" http://www9.plala.or.jp/Jussih/kivakoulu/toimenpiteet_kouluissa.htm より

このKiVa-Kouluには6つの要素が含まれてます。
このプログラムでは特定のグループに対しての学びの場の提供ではなく、学校に関わる全員が参加していじめ対策をします。

1. 多様的で実用的な教材・マテリアル
教師用、生徒用、家庭用のマテリアルが含まれます
2. デジタル教材と学習環境
このテーマを学ぶためのアプリやゲームもあります
3. 集団全体に影響を与える
イジメ防止やいじめをなくすために努力して、全体のウェルビーイングをよくすることは各自の責任です。いじめは許さないという態度を示す、いじめの被害者が安心できる方法を提供しましょう。
4. 生徒と家庭の参加
家庭にもこのいじめ対策プログラムに参加してもらうための資料があります。また、学校と家庭が一緒に働くときに使える技法も含まれます。
5. 防止と介入
全体向けとケースごとの2つあります。
6. 自分の学校状況の追跡調査


最後に児童民生員の私から学校いじめと向き合うのを出来れば避けたいと思う方たちへ

フィンランドで学校のいじめが無くならないのはKiVa-Kouluというフィンランド発のいじめ対策学校プログラムが悪いのか、それともそれに関わる大人が学校いじめに対して向き合うことに怯えてしまっているのか?

私は自分の学生生活を振り返りあの時にはこうしていれば相手を傷つけなかったかもしれない、あの時の自分の行動で今もあの人は自尊心が低いまま大人になってしまったかもしれないと色々と思い出します。その1つ1つを考えると申し訳ない気持ちとなんで誰も助けてくれなかったのと誰かを責めたい気持ちと全てをひっくるめて何とも言えない気持ちが入り混じり一言では表現できません。今の仕事ももしかしたらその気持ちを少しでも和らげるための罪償いなのかと考えることもありました。

私は今も未熟で臆病なので、学校いじめなんてないと信じていたいし、関わりたくもありません。私は学校いじめに積極的に関わることで学校いじめは撲滅出来ることを信じるようにしています。もちろん願いはイジメが無くなることです、でもすぐにはそれが解決出来ないのであれば毎日最善を尽くすしかありません。個人の力で最大限に頑張っても変えられないものもあります。どう進んでも後悔があるのであれば、後悔する内容は自分で決めませんか?


あなたは未来でどちらの後悔をしますか?



いじめを見過ごした後悔

もしくは

一生懸命無くすためにあらゆる努力したけどゼロにはならなかった後悔



▼次回のワークショップ案内▼

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7月31日・8月2日に高校をテーマにした2日連続ワークショップの開催します。悩みが多い思春期のフィンランドの子どもたちがどのような環境で生きているのか、大人はどのように接しているのかを高校教師の視点から紐解いていきます。

詳細・お申し込みはこちらから
http://ptix.at/91mbhj




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(参考文献)
Kuusikallio, V ja Kuusikallio, K. 2012. Hyväksikäytetyt Selviytyjät kertovat. Minerva Kunstannus Oy. helsinki【Viitattu 26.7.2020】

Mieli Suomnen Mielenterveys ry. n.d. Palaako lapsuuden koulukiusaaminen mieleen vielä aikuisena? Saatavissa: https://mieli.fi/fi/mielenterveys/vaikeat-el%C3%A4m%C3%A4ntilanteet/koulukiusaaminen/palaako-lapsuuden-koulukiusaaminen-mieleen 【Viitattu 26.7.2020】

Dal Maso,A. 2019 kenen vastuulla kuolukiusaamiseen puuttuminen on? Lapsen maailma. Saatavissa: https://lapsenmaailma.fi/blogit/one-glass-of-milk-please/kenen-vastuulla-koulukiusaamiseen-puuttuminen-on/ 【Viitattu 26.7.2020】

KiVa-Kouluのリンク
http://www.kivakoulu.fi/assets/files/kiva_koulu_opettajanopas_avain_kivaan_kouluun_fi_2018.pdf


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