20230707 子供の時間的スケール

保育園・幼稚園をはじめとした、子供をメインの利用者と想定した建築の設計時には、スケール感に留意せねばならないのは既に様々なところで試みられている通りである。目線の高さが違う、体の大きさが違う。開口の高さ、家具や什器の寸法、アルコーブなどの寸法感などが変わってきて、消極的にも改善されるが、さらに積極的豊かさの可能性が生まれる端緒にもなり得る。

しかし、子供が大人と違うのは空間的スケールだけではない。時間的スケールも異なるというのは、経験上は誰もが分かっていることだろう。

子供の1時間と大人の1時間の密度は違う。子供の1年と大人の1年も違う。二項対立的な話でもなくて、一般的には、年齢を重ねるにつれて時間の感じ方は連続的に変化する。そして、空間的スケールと同様に、ある程度個人差もあるかもしれない(それを観測・比較することは容易ではないが)。

子供の忍耐力のなさはこの差からきている可能性がありはしないか?大人が1年かけてやるプロジェクトと、子供が1年かけてやるプロジェクトではわけが違う。

ある本のフィクションで、おそらく小学校だろうが、近隣でマンション建設が始まり、景観保存上の問題点を学級新聞がとりあげ、メディアがそれをさらに取り上げ、反対運動まで発展し、その後にそのマンションをどう作るかのコンペが始まり、先生と一緒に子供たちが設計をし、最終的に竣工した(ような絵が描かれていた)。以上の過程は果たして全体で何か月かかったのだろうか。大人でも長期戦を覚悟するような案件である。少なく見積もっても1年、普通に考えれば2~3年かかりそうなものだ。にも拘わらず、本の挿絵上に描かれる子供は、マンション建設計画の発覚から竣工まで、まったく姿が変わっていない。1年もかかっていないように見えてしまう。

本の中ではどうでも良い話かもしれないが、子どもの1年は長いし、成長も早い。先生はもちろん、子供にかかわる人、子供と一緒にプロジェクトをやるような人はそれを考慮に入れる必要がある。加えて、描写するときにも相応の書き方をしなければ、私のような人が違和感を持ってしまうかもしれないのである。

20240122 追記
時間感覚、心理的な時間みたいなものの研究はどこまでされているのだろうか。是非とも知りたい。

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