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ようもうとみどり
2021年12月6日 21:00
雫が垂れると小石になった。ゆらゆら揺れて落ちると、コツンと音をさせて鉢の底にたどり着いた。すると、にわかにヒビが入って赤が滲み出しはじめる。間を待たず、ひとつふたつと雫は垂れ落ち、青から緑、黄色に紫とさまざまな色が鉢の底を漂う。滲み出した色は決して交わることもなく、壁があるかのようにたなびいていた。やがて、色は形を取り始めふらふらと鉢を泳ぎまわる魚に変わった。ヒレの形取られていたが、エ
2021年11月8日 21:53
ただ一本の水草は、気泡をいくつか吐き出した。酸欠気味の魚たちは、すがるように水草周りを回遊し本能により命を繋ぎ止める。仄暗い部屋で煌々とひかる水槽は自然を切り出したというよりも、人間の美的感覚により作り込まれている。水草や岩の配置は目に見えるところに整理され、現実の鬱蒼とした水面の様子は軽視された。未熟な主人は魚の目が白く濁っていることも知らず、ただその色合いに感動した。「水草に集まる