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鮮やかな鉢
雫が垂れると小石になった。ゆらゆら揺れて落ちると、コツンと音をさせて鉢の底にたどり着いた。
すると、にわかにヒビが入って赤が滲み出しはじめる。間を待たず、ひとつふたつと雫は垂れ落ち、青から緑、黄色に紫とさまざまな色が鉢の底を漂う。
滲み出した色は決して交わることもなく、壁があるかのようにたなびいていた。やがて、色は形を取り始めふらふらと鉢を泳ぎまわる魚に変わった。
ヒレの形取られていたが、エラの形はなかった。口元は形取られていなかったものの、目は丸く作られていた。身をもたないその魚たちは、悠々と好き勝手に泳ぎまわった。それはなぜか見様によっては実態を持つ魚よりも自由であるようだった。
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