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錦光山和雄の小説編

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#小説

拙著『粟田、色絵恋模様』のためし読みはいかがですか⁉

拙著『粟田、色絵恋模様』のためし読みはいかがですか⁉

 2023年1月に発売した拙著『粟田、色絵恋模様』の「ためし読み」企画を試みることにいたしました。
 『粟田、色絵恋模様』は、京焼を代表する京都粟田焼窯元で、わたしの祖父である七代錦光山宗兵衛と祖母千恵および父雄二など、錦光山一族をモデルにした小説であります。
 下の帯にありますように、幕末から昭和にいたる京都の粟田に生きた陶家の人々の怒涛の日々、栄光と挫折、祇園に生きた女たちの愛と確執を描いた壮

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風のみち

風のみち

  伊万里を訪れるのは俊太にとって初めてであった。大川内では、陶家の赤レンガの煙突から白い煙がたちのぼり、山あいをゆっくりと流れていく。   俊太は登り窯の窯跡を見て山道を降り、陶器の破片の埋め込まれたトンバイ橋を渡った。紅い寒椿の咲く脇の石段を登ると小さい梅林がある。

 俊太は小道でたたずみ、煙草に火をつけた。山の稜線から射し込む早春の陽光が心地よい。暖かい日差しに誘われたように髪に白いものが

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