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恐縮ですが育児中! 〈15〉 車か鉄道か

子ども……というか、男子って乗り物が好きですよね。

公園に着いても、鉄棒やジャングルジムといった「静物」ではなく、まずはブランコやシーソーのような「動く乗り物」めがけて、全力疾走します。

(余談ですが、A地点からB地点に移動する時は必ず、無意味に全力疾走する息子を見るたびに、このエネルギーを発電か何かに回せないかと思います)

当然、現実の移動に使われる各種のヴィークルにも、かなり小さい頃から興味を示します。

ところで、この乗り物趣味。周囲の子たちを見てると、早くから「クルマ派」「鉄道派」に分岐するのが面白い。あらかじめ玩具がたくさん用意されているキッズ・パーク的な場所に行くと、はっきりわかります。

レールを自分でつないで回転寿司みたいな周回軌道を作り、電車を延々と動かして飽きない子。ミニカーを集めてブーブーと自ら擬音を発しながら、整列させたり激突させたりして興奮してる子。

両者は別々に遊び、まるで別の惑星の生き物のように、ほとんど交わりません。果たして生まれつきか、環境のせいかはわかりませんが、とにかく男子は2つの派閥に分かれるようです。

ちなみに、うちの息子は完璧にクルマ派。鉄道系のオモチャには一切、興味がない。ためしに鉄道博みたいなイベントに連れていっても、一向にテンションが上がらない。

しかし彼の気持ち、わからなくもないんです。実は当方も鉄道には、実用性以外の興味が全くないもので……。

聞くところによると、鉄道ファンというのは「乗り鉄」「撮り鉄」「呑み鉄果ては時刻表を読むだけの「スジ鉄」など、果てしなく細分化して、ほとんどアンダーグラウンドなフェチの世界みたいになってるらしいじゃないですか。とてもじゃないが、当方のようなドシロウトが入っていける甘っちょろい業界ではありますまい。

一方、自動車ならば、当方もまあ日常から運転はしている身だし、それなりにコダワリもあります。ミッションがイカれた、エンジンが火を噴いたと、故障すればするほど嬉しがって吹聴するド変態なカーマニア(イタリア車や旧車のファンに多い気が……)には遠く及びませんが。

コーヒーをすすりながらカタログを眺めては、「ほう、ツインカムターボか…などと、何に使う装置かもわからないくせに、どこかで聞きかじった専門用語をつぶやいてみたり。

「カーナビ? あんなのシロウトのオモチャですよ。頼っちゃいけない」と、己のカンだけを頼りに道を選ぶ孤高の男を気取ったものの、いつの間にか農道のように狭い袋小路に入り込んで、前進も後退もできなくなってみたり。

その程度には、クルマ好きと自負しております。

それはともかく。他の子連れ家族を見るにつけ、どうやらこの「派閥」は高い確率で、父から子に遺伝しているようです。

児童館や、キッズ向けの遊具コーナーのような場所に行けば、一目瞭然。

プラレールで遊ぶ鉄道少年の横には、腹這いになって目線を電車の高さに合わせ、「このレールはそっち!そこに、このモハ43系を置いて!」と唾を飛ばし、しょっぱい声で叫んでいるお父さん。

トミカで遊ぶミニカー少年の横には、「はい赤はこっち。白いのはこっちに整列させて……」などと色や種類ごとに車を分類し、テーマパークとかデパートの駐車場係への転職を勧めたくなるほどの几帳面さで、並べ続けているパパさん。

いずれも子どもをさしおいて、 開ききった瞳孔をギンギンに輝かせながら、それぞれの作業に没頭しているところが共通しています。

居合わせたそんな父親同士、もの言わぬままアイコンタクトで意思疎通し、協力し合って長く複雑な鉄道路線を構築したり、信号や建物をくっつけてリアルなドライヴコースを設計したりと、子供そっちのけで「仕事」に没頭するのも、よく見かける風景です。

ふと後ろを見ると、遊び場の外のスツールに腰かけ「勝手に遊んでてね」といった体で、スマートフォンを無表情にスクロールし続ける、お母さん方の姿。

「自分も含め、大人の男とは結局、図体が大きくなっただけの "男児" にすぎないのか……」と、あらためて認識させられるのは、こんな瞬間です。

いやはや、まったく恐縮です……。


明和電機ジャーナル 第19期 第4号 (2012年11月15日発行) 所収, に加筆訂正


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