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ことば遊びとショートショート46『コールドラッシュ』

 地上の水源は尽きかけていた。

 その頃、地下水探査隊が氷の塊を発見した。貴重な水を確保できると、噂をききつけた人々が集まった。

 コールドラッシュの幕開けだ。

 氷坑からは、頭のキンキンとする音が響く。トロッコで運ばれるクラッシュアイス。

 氷坑夫の街もでき、活気で溢れた。

 氷は採ってもなくならなかった。

 塊の中心部からは溶けない氷も発見された。

 氷の街がシンボルとなった。

 カチカチの氷の価値は宝石以上となり、人々を狂わせた。氷に目がくらみ、多くの人が冷たくなった。氷持ちじゃない人は、ガリガリと揶揄された。

 しかし、この氷が人類を救うと誰もが思っていた。


 ある日、氷坑で作業していた男のツルハシが妙な音を立てた。

 男は構わず、ツルハシを降り下ろす。

 氷坑のカナリアが鳴くよりも早く、氷から吹き出した炎で焼鳥となった。

 炎はたちまち広がり、世界を焼きつくした。

 消えない炎と溶けない氷の街だけを残して。

 (了)

【雑記46】

 今回のショートショートは明確に2つの作品から影響を受けている。
 物語の下敷きはショートショートの神様と言われた星新一さんの「おーい でてこーい」
 物語の雰囲気は1948年の映画「黄金」
 どちらも大好きな作品だ。

 自分でショートショートを書いていると、この作品はあれとあれの影響を受けているなぁとはっきりわかるときがある。

 そんな時、「あの作品に似てるからだめだ」とか「丸パクリじゃないか」と悲観的になるというよりは、「いやぁ、ちゃんと自分の中で結晶化されていたんだなぁ」とか「やっぱり良い作品だもんなぁ」となんだか嬉しくなってしまう。
  
 「言われてみれば…」くらいに影響を受けた過去氷をシャリシャリと削ったものに、そこに自分の色のシロップをかけて完成する。
 
 書き氷作りには先人の残した氷の存在がかかせない。

 お読みいただき、ありがとうございます!

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