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Life Cinematic 2004-2010

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2004年から2010年にかけて書いていた映画エッセイをnoteにお引越し。 不定期更新。時間があるときにまとめて載せていきます。
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#映画

9年の平等-カレンダー・ガールズ-

「美容院で髪を切るとき、いつもなんて言ってる?」 という友人の質問があまりに的を射ている…

田中優子
1年前

理想的な一日-ボンボン-

床暖房に寝そべってレシピ本などめくっていたら、うとうとと夢の世界に迷い込んだ。 ふと気づ…

田中優子
1年前
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揺さぶり-WIZ/OUT-

10年ほど前は何かというと足を運んでいた気がするけれど、最近は、映画を観るときくらいしか渋…

田中優子
1年前
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銀座の夜と彼岸花-岸辺のふたり-

高校野球を最高潮にして、この暑い夏もようやく落ち着きを取り戻した。 少しばかり過ごしやす…

田中優子
1年前

くされ縁-ハンニバル-

平日午後7時半から8時頃にかけて、銀座8丁目界隈は夢みたいな空気に包まれる。 蝶のように美し…

田中優子
1年前

富士山と愚問-もののけ姫-

「なぜ山に登るのか」と問われ、登山家ジョージ・マロリーが「そこに山があるからだ」と答えた…

田中優子
1年前
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一期一会-おまけつき新婚生活-

考えてみれば、これまではいつも、若くてこざっぱりした人ばかりだった。 一貫していたのは、皆、静かで穏やかだったこと。 私を守ってくれたこと。 けれどもそれでは飽き足らず、次第に欲張りになっていく私は、一層に包み込んでくれる寛大さを求めるようになった。 あらゆることが私にとっては初めてづくしで、春から夏、秋から冬への一年で、一緒に大人になっていった気がする、大阪の人。 私は慣れない料理をおぼえ、生活ごっこに夢中だった。 飽きるほどの夜更かしや長電話、ときめきもぬくもりも全部教

視界の限り-約束の旅路-

気分のとどまりを、淀みのように思うのは、近頃のよくない傾向だ。 よくない傾向だが、それに…

田中優子
1年前

息吹の約束-卒業-

今年は桜の開花が早いらしい。 折からの暖冬のせい。 卒業式に桜が咲くというのは錯覚で、桜…

田中優子
2年前
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人を守るということ-硫黄島からの手紙-

何人かの人が勧めてくれたのをきっかけに、初めて東野圭吾の小説を読んだ。 「手紙」は、昨年…

田中優子
2年前
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固有の視点-イン・ハー・シューズ-

日曜の午後だったか、そういう時間帯に観るのにちょうどいい映画だと思った。 それも自宅で、…

田中優子
2年前
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ミュージカル映画考-マイ・フェア・レディ-

「オペラ座の怪人」をご一緒した方から、そのサントラをいただいた。 映画のサントラというの…

田中優子
3年前
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匂い立つ多重奏-オペラ座の怪人-

条件反射的に涙が溢れたのは、久しぶりのことだ。 良い芸術作品を観ると、胸が震えて涙腺が堪…

田中優子
3年前
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ユタさんとジャック-A.I.-

大学1年のとき、ニュージーランドで一ヵ月半ほどホームステイしたことがある。 ライオンズクラブのstudent exchangeプログラムを利用したもので、期間の前半を首都Wellingtonから車で1時間ほどの小さな町Fielding、後半をNZ最大の都市Aucklandで過ごした。 Aucklandでお世話になったホストファミリーは、ドイツ系の一家だった。 ホストマザーのユタさんは50代の専業主婦、ホストファーザーのラインホルトさんは大工、それから大学生の息子ヨハンとおば