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毎日が女子会!?『女ふたり、暮らしています。』

いきなりだけど、本書翻訳者のあとがきから一文抜粋します。

女性なら誰でも一度ぐらいは、年を取ってお互いにひとりだったら一緒に暮らそうと、冗談半分、本気半分で女友だちと話したことがあるのではないだろうか。

訳者(清水知佐子さん)解説 P. 334より

これね。あんまり「女性なら」「男性なら」と端的に括るのはイマドキ慎重にならなければと思うものの、これに関しては少なくとも私はあるー。あるあるー。中高生の頃かな、いや社会人になってからもかな。それに、女子が仲の良い友達同士でこういう会話するところは、容易に想像できる。

何せ、最近はこんな漫画も売れてるみたいだしね。私はまだネットで紹介されてる部分しか読んだことないけど、この3人のマダムたちの日常、めちゃくちゃ素敵なのよね〜!

『マダムたちのルームシェア』- 著者: seko kosekoさん


男性はそんな風に、「将来もしひとりだったら一緒に暮らそうぜ!」って男友達と冗談半分、本気半分で話すことは、あるのかな?あるあるではないのかな?男子がキャッキャしながらそういう話をしてるところ、私は見たことないなぁ。なんでだろう。

さて、この度たまたま目に入ったのは、この本。実際に女友達同士で住み始めた、韓国に実在する女性たちのエッセイです。これはもしや、友達とワイワイ色々想像(妄想?笑)していた、「めちゃくちゃ仲良い友達と住み始める」ということが、リアルに描かれているのかも知れない、と思って何となく読んでみました。

女2人、例えば家族(母娘とか姉妹とか)や恋人(つまりこの場合同性カップル)で同居している実例は知ってるけれど、とにかくめちゃくちゃ気の合う女友達と住む、を実践している実例は今のところ身近に知らないので、実際どんな感じなのかってのは興味津々。

『女ふたり、暮らしています。(여자 둘이 살고 있습니다)』- 著者:キム・ハナ(김하나)さん、ファン・ソヌ(황선우)さん


家、買っちゃう

だいたいそういう「友人とのルームシェア」的なことに対する私の勝手なイメージは何となく賃貸住まいなのだけど(ほら、『NANA』も確か賃貸だったよね?あれはドロドロだったけど…😅)、このお2人、ハナさんとソヌさんはすごい。いきなりマンションのお部屋購入です。

しかも、その部屋に先に惚れ込んだハナさんが、コピーライターであるご自身の職業的手腕を活かして(濫用して?)ソヌさんに同居を提案&言葉巧みに説得し、かつ、フリーのお仕事をしていたハナさんではなく、意図せずとはいえ結果的に会社員のソヌさん名義で購入することになるという…!

エッセイは概ね交互に、お2人がそれぞれ同じ出来事についても別々の主観や所感を綴っていて、例えばそのお家の購入における感情の表出が全然違うところも面白い。そりゃソヌさんそうなるわ笑、と少し同情しながら読む。

ちなみに、韓国の不動産事情や、家を借りたり買ったりする制度の日本との違いなんかも、読み進めることで分かってきて面白いです。

真逆の性格が発覚!?

社会人になってから知り合った友人同士にも関わらず、唯一無二の仲良しと言えるレベルのお2人。無茶苦茶気が合うので安心していざ同居を始めたら、何と性格や生活スタイルが実は真逆なことに気付く。それも、なかなかの度合いで!なななんと。

ハナさんとソヌさんも、共に生活をしていく中で、すれ違ったり衝突したり和解したり仲が深まったりと、色んな変化を体験します。興味深いのは、友人同士だろうが、夫婦や恋人同士のそれと同質の問題が生じてくるということ。

例えば、家事。それぞれの得意不得意やスタンスの違いも相まったり、いい大人と認識される年齢を重ねる中でそれぞれにできたルーティーンがうまく噛み合わなかったりすると、一見些細なことから不均衡が生じたり、どちらかもしくは双方が、何らかの不公平感を感じるようになる。うんうん。

相手のことは大好きだし尊重してるけど、いざ具体的に物理的に毎日を共にしてみたら、ぬぬ!?ここは相容れないぞ!?ええ!?そんなことするなんて理解できないよ!?みたいなことは、大なり小なりたぶんきっと恐らく必ずあるんじゃなかろうか。それが、生活を共にする、ということの一つの重要な要素なんだろうな。

歩み寄りとか、できるところの改善とか、そりゃ自分以外の人間と暮らすんだから、相手が誰であろうが必要だよね。そういう表層的な調整のみならず、お互いを尊重し尊敬し合える、何というか根源的な相手へのリスペクトを持つことは、誰と同居するにおいても大切なんだなあ。それができたらもう立派な「家族」だと思います。

「家族」の多様性が開けた世界へ

生まれてからこの世を全うするまでの間、途切れることなく誰か、それも書類上も法的に定義される家族と同居し続ける人は、案外多くないかもしれないですよね。子どもやパートナーがいる人だって、子どもは巣立つことが想定されるし、親や妻や夫がいたって、人生何があるかは誰にもわからない。

韓国も日本と同様に、若年層も中高年層も、単身世帯はどんどん増えているそうです。もちろん、一人暮らしにもその良さは大いにあるし、それを謳歌できることも素晴らしいと思います。だけど、誰かと同居したい、共に責任を持って一緒に暮らしたい、となった時、結婚や血縁で定義されるだけの家族ではなく、もっと自由な「家族」が日本にも韓国にもあっていいんじゃないかしら。

本書によると、フランスの「民事連帯契約(PACS)」をモデルとした「生活同伴者法」という法案が、韓国で議論になったそう。

血縁関係や婚姻関係でなくとも、異性、同性に関係なく成人ふたりの同意に基づいて同居する場合、家族として必要な社会福祉や法的保護を受けられることを目的としている。しかし、既存の家族制度を脅かすといった社会的反発などから法案提出そのものが棚上げされたままだ。

訳者(清水知佐子さん)解説 P. 333より

家族制度、戸籍、血縁主義。それ以外を正式なものとして認めないことで、世の中で実際どのぐらいの人たちが不甲斐ない思いをしているんだろう。逆に、異性だろうが同性だろうが友人だろうが恋人だろうが、一緒に暮らそう、「家族」になろう、とポジティブに決めた人たちが法的に婚姻同等の権利を得られれば、どれだけの人が安心できるんだろう。

こういう仕組みが成立したとして、既存の家族制度は、本当に脅かされるのかしら。選択的・・・夫婦別姓と同じだと思うけどなあ。既存の仕組みに乗りたい人はそのまま乗れる。多様な仕組みを使いたい人は使える。それで何か困るのかしら?そもそも、既存の家族制度とやらが崩れたとして、何が問題なんだろう?

社会福祉や法的保護がしっかり受けられるとなったら、きっとあの3人のマダムたちだって、より安心して共同生活を続けられるんじゃないかな。

色々書いたけど

とにかく、ハナさんとソヌさんが毎日あーだこーだ言いながらもものすごく楽しそうで、ユーモアも散りばめられてます。お2人のキャラがいいのかな、自然と周りにも仲間が集まって、集合住宅や街全体で「家族」「共同体」を感じられます。あったかい気持ちになって、オススメです。

これ、男友達同士だったらどんな感じなんだろう?またノリが全然違うのかな?そういう本があったら、どなたか教えてくださいね。

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