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ほのぼの生きる  182_20230723

ばあちゃんの認知症

うちのばあちゃんは96歳。
私が嫁っこに来たときは、82歳だった。
義母はまだ60歳前でバリバリ仕事していたから、家事はばあちゃんがやっていた。

嫁っこになった私は、張り切っていいところをみせようと思い、家事を手伝った。
ところが・・・
ばあちゃんのやることを取り上げてしまった。

人は楽を経験するとどんどんそちらの方に流れていく。
これまでできていたことが、だんだん面倒くさくなり、人を頼るようになってしまう。

私は善意のつもりでばあちゃんを助けようとしたが、結果、ばあちゃんの認知症を進行させる方向に舵をきってしまった。

嫁っこが一人増えただけで、我が家の中は一変した。
台所も食器が増え、物の置き場も変わり、要らなくなったものを整理し、整理整頓・掃除が始まる。

近所の叔父と叔母もやってきて、せっかく嫁っこさ来たから、綺麗にすんべ、と言い出して、じいちゃんとばあちゃんの部屋まで綺麗にし始めた。

そんなある日、ばあちゃんが「財布がない」と言い出した。
箪笥を漁ってはうぁんうぁんと泣いている。
何事かと思いきや「盗まれた」が始まった。

環境の大変化にばあちゃんの脳がパニックを起こしてしまったのだ。
それから躁鬱状態と思われる症状に見舞われ、精神科に連れて行き、安定剤を処方してもらい、落ち着いたかのように思えた。
しかし、症状は一向によくならない。むしろ悪化しているように見えた。
あんなに気丈だったばあちゃんがありえない!と夫が見るに見かねて、高齢者施設を探し回り、やっと老健(介護老人保健施設)への通院をとりつけた。

お医者さんとも相談して、安定剤の服用も中止し、老健でリハビリを重ねるうちに、ばあちゃんの認知症はどんどん回復して、ほとんど症状がなくなった。
あれは一体なんだったんだろう。

私が新しく家族のメンバーに加わり、孫夫婦の生活が中心となり、自分たちのペースでなくなってしまったことによるストレスから来たものかもしれない。
これまでやっていたルーティンも急に崩れてしまい、新しい環境に合わせようとしたが、じゃっかんのパニック。
妙に「お年寄り扱い」されたこともショックだったかもしれない。

とにかくこの10年余りの間で、大きく認知症の症状が出たのは、私が嫁いだ直後で、その後は驚くほどの回復を見せ、今はほとんど症状がないように思う。

自宅での介護は、甘えを許してしまう。
それは本人にとっていい甘えではない。
やることを奪ってしまうため、自尊心を欠いてしまうのだと思う。
自宅では、お世話はするが年寄り扱いしかしないため、会話もそれほど成立しない。
私とばあちゃんでは年齢差がありすぎるのだ。

一方、老健(介護施設)では、お友だちがたくさんいる。
同年代の人とお話ができる。
逆に、同年代の状態を見て競争心も生まれているようだ。
あの人は私より若いのに、あれもできない、これもできない。
このことが本人の自尊心を維持させているように思う。

そして施設職員さんは、家族よりもばあちゃんの「人としての尊厳を大切にしてくれている」ように思う。
家族ではどうしても「敬う」気持ちが薄れてしまう。
それを施設ではお客様として対応してくださるので、大事にしてもらっているように思う。

介護施設は高齢者の憩いの場、自尊心を高める場でもある。
お世話になっていて大変ありがたい。
ばあちゃんは農業をしていたから、体がとても丈夫である。
頭もまだまだしっかりしている。
大事にしてあげれば、もっと長生きできるように思うなぁ。

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