ポタージュ6
一週間に一回はnote投稿するぞって決めてるんですが、いつも気がつくと週末になっています。
ポタージュがいい感じで書けているので、毎週ポタージュのことを考えているのですが、なかなか進みません。
今回もうちょいいけると思ったのですが、今書いてしまうと年末の文がなくなりそうなので短めです。
それまではこちら
ポタージュ
今夜の月は美しい満月で、冷えた空気のおかげでより一層美しく見える。コールドムーン、師走の満月はそう呼ばれるそうだ。その月の下、街はイルミネーションで彩られていて、上を見ても下を見ても良かった。美しい満月。イルミネーション。3倍になった感情で見る景色はどれも素敵だったが、それもこれも彼女が公園にいるかいないかで大分変わってくる。
公園に集まる時はいつも彼女から連絡があるが、今日はそれがない。ない、という時点でまっすぐ家に帰ることができれば良かったのだが、そうもいかなかった。わかっているからこそショックが大きいのに。どうやら僕は彼女のことがかなり好きらしい。今夜は特にそう思う。
3倍になった感情の勢いそのままに公園に向かいたかったが、足取りは重かった。3倍は良くない方にかけられたらしく、余計なことばかり考えてしまう。感情とは、本当に思い通りにならない。
街の中を抜けると目印の自動販売機が見えてきた。自販機を見るとコンポタージュを求めて、手が悴んでいることを思い出したが、今夜は素通りして公園に向かった。
公園に着くといつものベンチに彼女はいた。気が緩んでしまってうまく歩けない。どうしても浮き足立つ。告白に真剣だった彼女には申し訳なかったが、むず痒いような嬉しさがあるのも確かだ。
近づくと彼女は泣いていた。体を丸めて、人目を憚らず。その姿が、ずぶ濡れだった彼女と重なった。僕はいつからか彼女のことを強い人間だと思ってしまっていた。なぜだ。口調がきついからか。ずぶ濡れでも堂々と歩いていたからか。陽だまりのような姿に安心したからか。あの日、僕を視聴覚室から連れ出してくれたからか。バカか。彼女と僕は何も変わらない。僕らは目があったあの日から、ずっと弱かったのだ。だからこそ、出会ったのだ。
「おつかれ」
そう言って彼女の隣に腰かけた。
それに気づいた彼女が泣きながら無理矢理喋ろうとするので、いいから、というと彼女はしばらくまた、大声で泣いた。