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新刊「クラフトビールを仕事にしたいと思った時の業界俯瞰図 2024年版」一部ご紹介

前回の投稿「新刊「クラフトビールを仕事にしたいと思った時の業界俯瞰図 20204年版」発表のお知らせ」で私どもが12日にリリースする本のご紹介をしました。そこでこのように書きました。

新サービスも現れていますので重要だと思われるものについて新たに取り上げました。また、脚注を充実させ、可能な限り一次情報に当たって頂けるようにしています。

https://craftdrinks.jp/2024/08/04/craftbeerbusinessandjobsinjapan2024/

初版から2倍以上のボリュームになってしまったのですが、様々な角度から追記しています。その中から今回の改訂で新たに盛り込んだものを一つご紹介します。今後現れる、もしくは求められる仕事としてこんなものを挙げました。

⑩リブランド、事業承継仲介関連
1994年に法律が改正されて地ビールが生まれました。あれから30年が経ちますが、市場環境は大きく変わりました。主要な液種も欧州のクラシカルなものからホップを効かせたアメリカンスタイルへと変化し、特に2010年代以降はその傾向が顕著です。パッケージに関しても同様で、業務用ではワンウェイケグが普及し、小売の現場では缶が急速に増えています。

こうしたマーケットの変化を受けて旧来の古いイメージを刷新する必要があると感じているブルワリーがあることは想像に難くありません。定番ラインナップはもちろん、ロゴやラベルデザイン、ウェブサイトの改修も含めて抜本的なリブランドに迫られています。

アメリカにはリブランドを得意とするコンサルタントファームもあり 、イメージ戦略から新コンセプトの企画、商品ポートフォリオの作成も包含する総合的な計画の立案まで専門家の立場から助けてくれます。日本においてクラフトビール業界専門のリブランド請負会社というのは現状まだ難しいかもしれませんが、そういった役割を担ってくれる存在はすでに水面下では求められていると感じます。

もう一歩踏み込んで考えると、事業承継仲介の仕事も生まれるはずでしょう。いわゆるM&Aがクラフトビールの業界にも求められるというわけです。 地ビール時代に創業し、20年以上続くブルワリーの設備は大分古くなっていて、新たな投資が必要になっています。先程示したように、家庭用市場では缶の需要が高まっているので缶充填機も入れたいところですが、手元資金が無い、新規借入れも難しい企業も存在します。

試しにM&A仲介会社の案件一覧をインターネットで調べてみてください。数は多くありませんが、ブルワリーの身売りに関するものは幾つもヒットします。私がチェックしている限りにおいてですが、コロナ禍以降ブルワリーの身売り案件は増加気味のようです。具体的な名前は挙げませんが、外部から資本が入り創業社長が退いた会社が既にあると聞いていますし、M&A仲介会社から市場環境や今後の展望に関する意見を求められたこともあります。たまたまではなく、既にそういった動きがあると見て間違いない。

今後こうした動きが本格化するかどうかはまだ分かりません。営業活動、売上次第という面もありますし、為替や景気も含めたマーケット環境次第ではあります。しかしながら、大きな資本の傘下ではなく、独立したファミリービジネスの形態の場合、全てを取り仕切っていた社長(であると同時にブルワーであることも多い)の怪我や事故などによって突発的に経営が成り立たなくなるリスクも潜在的に抱えています。オーナーの急逝によって閉鎖になったCascade Brewingの件を思い起こしてみても良いでしょう。

クラフトビールはトレンドの移り変わりも早く、総じて新陳代謝の早い業界なのでリブランド、事業承継も日本でいずれ議論されます。これは後継者の育成に関する問題とセットで考えるべきことです。昨今進むヘッドブルワーの交代のみならず、経営者の交代も意識すべきこととして顕在化するということは頭の片隅に置いておいて損はないはずです。

アメリカンスタイル、特にIPAが全盛となって久しいです。そういう流れにアジャストしていかないと今後しんどいでしょう。あまり考えたくないことなのですが、クラフトビール界隈でM&Aの話もそろそろ表面化することは恐らく避けられません。コロナ禍ではお酒の需要が著しく減少し、売上低下に苦しむブルワリーが多くありました。そこで政府によって大量倒産を回避する為に行われたいわゆるゼロゼロ融資の返済がすでに始まっていて経営を圧迫しているケースもあるようです。

「いやいや、今こんなにブルワリーが急増しているし、コロナも明けたようだからここから上向くでしょ」と考える方もいらっしゃるでしょう。けれども、そんなに楽観的ではいられないのです。事実、直近でこういう案件こういう案件が公開されています。なかなか痺れますよね・・・

こういう事実、状況を受けて今正に事業のテコ入れという意味でのリブランドを行うタイミングではないかと私個人は感じます。また、今はブルワリーを買いたい企業もありますから事業承継という手に潜在的な可能性があります。クラフトビール業界専門となるかはさておき、その支援は仕事として成り立つように思います。

ということで、新刊「クラフトビールを仕事にしたいと思った時の業界俯瞰図 2024年版」では業界のことを様々な角度から綴っております。ご拝読賜りますようお願い申し上げます。現在BASEに設置したCRAFT DRINKSの本屋にて予約を承っておりますのでご検討くださいませ。期間限定ですが、即売会場と同じ価格のキャンペーン中です。


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