読書録『かか』

かか、という何をいいたいのかわからない題名に惹かれてずっと読みたかった本を買い、勢いで一晩で読んでしまったので、感想を。

主人公「うーちゃん」は、アル中になった母「かか」のことで苦しんでいる。うーちゃんは浪人生で、かかと語る相手である弟と、母親を亡くした従姉明子と明子を可愛がるジジとババと犬のホロと暮らしている。複雑な暮らし。うーちゃんは神様のところへ、一人旅に出掛ける。
この物語は「かか語」という方言のような口調で進む。自然と語り手の心のなかに入っていくような刺さる言葉だ。

この物語のポイントは母と娘の関係だ。うーちゃんとかか、かかとその母であるババ、明子とその母親。そしてその関係を女の身体にも観点を置き語られる。

うーちゃんとかかは「一体化」している。それは、かかの感じる痛みと同じ痛みをうーちゃんも同時に感じていると考えると物語の意味がわかる。私はその事を1度目に読んだときに読み漏らしていたから訳わからなかったけども。

この物語の私的キーポイントは、主人公がSNSのなかに居場所を創っているということだ。同じ趣味の人で構成された小さなコミュニティに、うーちゃんは悩みを告げる。

個人的な話になるが、私は和歌山県紀南地方にゆかりがあって我が家の初詣はいつも熊野那智大社に行っている。だからこの作品で出てくる地名には親近感が湧いた。

うーちゃんのかかへの感情を表現する言葉に心を奪われた。冒頭の「女の――」という表現も斬新であり衝撃であった。

知識の浅い私はこんなに素晴らしい本にあれこれ言えない。ただ、私のこれからの生活は変わること間違いない。いい時間を過ごせた。

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