【株式投資型クラウドファンディングのイークラウドを展開する波多江さんと対談#02】イークラウドについて
スタートアップの融資を支援しているINQの若林( @wakaba_office )です。
前回に引き続き、イークラウド株式会社の代表取締役である波多江直彦(はたえ・なおひこ)さんをゲストに迎え、同社が提供する株式投資型クラウドファンディング「イークラウド」について詳しく聞きました。
先に以下の記事を読んでおくと、今回のnoteの内容を理解しやすくなります。
イークラウドは調達成功率100% 平均調達額は業界最高水準
若林:早速イークラウドについて深堀りしていきたいと思います。どのようなサービスなのでしょうか。
波多江さん:イークラウドはクラウドファンディングの仕組みを利用して、スタートアップ企業が個人投資家から資金を調達できるプラットフォームです。弊社のご支援実績としては、平均調達額は3,000万円強で、調達にかかる期間は約2カ月となっています。
若林:「株式投資型クラウドファンディング」というジャンルの資金調達方法ですね。イークラウドならではの特徴や強みがあれば教えてください。
波多江さん:イークラウドの特徴は、私が元々ベンチャーキャピタル(以下、VC)でスタートアップに投資していた経験を生かして、案件を厳選している点です。
案件を念入りに選び丁寧に紹介することで、100%の調達成功率と業界最高水準の調達金額を維持しています。
若林:私もイークラウドの案件を見たところ、非常に厳選している印象を受けました。高い調達成功率と金額を維持するために、どのような点に力を入れていますか?
波多江さん:支援を決めた企業のPRやIR(*1)をしっかりと行い、個人投資家たちにその企業の魅力を伝えきることに力を入れています。
*1) Investor Relationsの略で、企業が株主や投資家向けに経営状態や財務状況、業績、今後の見通しなどを広報する活動
私たちのサービスは、個人投資家にインターネット上で案件を見てもらい、何分か見ていただき数十万円の投資を決めてもらうものです。
上場株と違ってすぐに売却できないため、3〜10年というような長い時間軸で企業や経営者を信頼してもらう必要があります。
そのためにも、まずは私たちが企業や経営者の魅力を理解しなければなりません。理解した上で個人投資家たちに1社1社の魅力を丁寧に伝えるようにしています。
若林:それは企業にとっても投資家にとってもありがたいですね。イークラウドで投資案件が開始されたときに、メンバーの皆さんがSNSで案件を一斉に拡散しているのを見て、コミット度合いが素晴らしいなと思いました。
波多江さん:ありがとうございます。私たちも支援を決めた企業の成功を願っているので、SNSでの紹介も地道に行っています。イークラウドを資金調達だけでなく、認知度の向上や事業の成長にも活用してほしいですね。
クオリティを重視しヒアリングの段階から真摯に向き合う
若林:イークラウドで資金を調達した起業家や、検討をしていた起業家と話したことがあるのですが、皆さん口を揃えて「波多江さんは当社のことを真剣に考え、フラットな意見と熱い言葉をかけてくれた」と言っていました。他のメンバーの方も同じようなスタンスで取り組んでいるのでしょうか。
波多江さん:そうですね。投資家には、まずは投資先となる企業に興味を持ってもらうことが大事ですので、案件数よりも1社を紹介するときのクオリティを大切にしています。ヒアリングの段階から1社1社に真摯に向き合ってきたことで、そのような感想を持ってもらえたのかもしれません。
若林:潜在的な個人投資家の中には、未上場株への投資に不安を持っている人も少なくないと思いますが、イークラウドの案件紹介では、そのような不安を丁寧に払拭している印象を受けました。
波多江さん:投資先企業が事業に失敗して投資家が損をすることが続くと「スタートアップ投資は怖い」というイメージが染み付いてしまうので、まずは成功体験を得てもらいたいと思っています。
もちろん投資なのでリスクはありますが「スタートアップ投資は面白い」と思ってもらうためにも、今は市場を作るつもりで丁寧に取り組んでいる段階です。
若林:まだまだ多くの人がスタートアップ投資の経験が無いので、イークラウドを通して興味を持ってもらえるといいですね。
イークラウドを活用しやすい3つのパターン
若林:イークラウドを最大限活用できるのは、どのような企業でしょうか。
波多江さん:主に次の3パターンに当てはまる企業が活用しやすいと思います。
1つ目はD2C(*3)のような一般消費者を対象にサービスを提供する企業です。個人投資家は一般消費者でもあるため相性が良く、資金も集まりやすい傾向にあります。イークラウドで紹介する案件全体の約4割がこのパターンです。
*3) Direct to Consumerの略で、事業者が企画立案、生産した製品を消費者に直接販売する方式
2つ目はtoBサービスを提供する企業が、業界関係者から投資してもらうパターンです。例えばゲーム会社向けにインフラを作っている企業が、ゲーム関連会社に勤務する人やエンジニアから資金調達した事例があります。
3つ目はディープテックの領域。創薬や培養肉などは不確定要素が多いため、プロでも投資には慎重になる領域です。しかし個人投資家の中には「数十万円であればこのような分野を支援したい」という人が一定数いるため、比較的大きな金額を集めることができます。
若林:ありがとうございます。事業内容と個人投資家の相性を考えるのが大事ということですね。
30社以上のVCと連携し他の手段と組み合わせた調達も支援
若林:イークラウドを利用しているスタートアップはどのくらいの成長フェーズの企業が多いのでしょうか。
波多江さん:イークラウドの平均支援金額である3,000万〜5,000万円くらいの調達ニーズがあるフェーズの企業ですね。シード(*5)やアーリー(*6)の段階もあれば、他の調達手段と組み合わせて3,000万〜5,000万円をプラスで調達したい企業にも利用してもらっています。
*5) 起業前のアイデア段階
*6) 起業後だがマネタイズできていない段階
若林:なるほど。イークラウドはVCとの連携に積極的なので、他の調達手段との組み合わせもやりやすそうですね。
波多江さん:30社以上のVCと連携関係にあり、案件を紹介してもらったり、逆に紹介したりしています。
少し前までは「VCと他の調達手段を組み合わせる」という考え方はあまり浸透していなかったと思いますが、今ではVCはもちろん、融資との組み合わせも一般的になったと感じています。
若林:イークラウドでの調達は「or(他の調達方法との比較選択)」ではなく「and(他の調達方法と併用)」ということですね。VCやエンジェル投資家からの調達と比較すると、関係を持つ投資家数が多くなると思いますが、投資家の対応やフォローは大変ではないのでしょうか。
波多江さん:投資家へのフォローに要する手間などは最小限で済むように、ITツールを組み込み効率化しています。
起業家に対し、投資家からの問い合わせ対応や頻度に関するアンケートを取ったところ、「個人投資家200〜300人への対応とVCや事業会社1社との対応に大きな差は無い」という回答が得られました。
若林:VCが1社増える感覚で個人投資家から資金調達できるのであれば、負担も少ないですね。
スタートアップが投資家と交流しながら企業価値を高められる仕組みを作りたい
若林:前回のお話では、マーケティング目的でイークラウドを利用する企業も増えているということでしたが、目指している形のようなものはあるのでしょうか。
波多江さん:スタートアップが、投資家と交流しながら企業価値を高められるようなプラットフォームを目指しています。
上場企業ではカゴメやオリエンタルランドなど、株主優待を通じて投資家と交流し企業価値を高めている企業が珍しくありません。
非上場企業であっても、イークラウドを活用して企業価値を高められる仕組みを作りたいと思っています。
若林:イークラウドの今後の展望を聞かせてください。
波多江さん:さまざまな成長ステージや業態・業種のスタートアップへの支援を広げていきたいです。
クラウドファンディングの面白いところは、200〜300人の投資家=応援団を集めることができれば、その資金を元に次のフェーズに進めるところだと思っています。
私がVCで投資を実行していたとき、成長が厳しいと思った企業が急成長してIPOやM&Aしたのを目にしてきました。
また、個人的に投資したかったものの投資委員会の認可を得られず投資できなかった企業が、時価総額数千億円に成長し上場したこともあります。
ベンチャー投資は不確実性が高いのが前提ですが、数百人の仲間を集めて次のフェーズに進むことができれば、成功確率を高められるかもしれません。
私たちはスタートアップが挑戦しやすい環境を作ることで、日本全体を元気にできればいいなと思っています。
イークラウドを利用するには
若林:最後に、実際にイークラウドを利用する場合の流れを教えてください。
波多江さん:まずは、VCから資金調達するときと同じように、デューデリジェンス(*7)に必要な資料を用意してもらいます。期間としては、問い合わせから調達まで約2〜3カ月必要になります。
*7) 投資先企業の価値やリスクなどを調査すること
資料を元に社内審査を進め、審査に通れば案件を掲載、クラウドファンディングで投資を募るという流れです。
若林:個人投資家向けの資料やコンテンツは作成しなくてもいいのでしょうか。
波多江さん:個人投資家向け資料は弊社が審査と並行して作成し、審査が終わった段階でウェブサイトに掲載できるようにしています。
若林:VC向けのピッチ(*8)資料とは違い、ウェブサイトにリッチなコンテンツが掲載されていますね。
*8) 短いプレゼンテーション
波多江さん:はい、テキストや図解、動画を用いて情報を整理、補完してコンテンツを作成しています。起業家の方にはVCにしているようなピッチをしてもらいます。それを私たちが個人投資家にも理解しやすい内容に最適化します。
若林:イークラウドを使って資金調達したいと思ったら、まずは何をすればよいでしょうか。
波多江さん:TwitterのDMか、サービスサイトのフォームから問い合わせください。
最初の打ち合わせでは、フロントメンバーがさらに細かい仕組みや流れを説明します。ピッチ資料や資本政策を用意してもらえれば、調達可能額の目安も回答できますので、まずは気軽にご相談ください。
若林:波多江さん、本日は貴重なお話をありがとうございました。
まとめ
今回はイークラウド株式会社代表の波多江さんをゲストに迎え、イークラウドの特徴や強み、今後の展望などについて聞きました。
イークラウドは案件を厳選、1件ずつ丁寧に紹介することで100%の調達成功率と高い平均調達金額を維持しています。
VC向けのピッチ資料があれば、簡易的な審査をして調達可能額の目安も回答してもらえるとのことですので、まずは気軽に問い合わせてみてはいかがでしょうか。
▼イークラウドのサービス詳細ページ
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