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<スペシャル対談>まさかの競合対談!?「みんチャレ」×「Smart Habit」 習慣化の過去未来(後編)

三日坊主防止アプリ「みんチャレ」と習慣化プラットフォーム「Smart Habit」。

「習慣化」という同じ分野にフォーカスしたサービスを展開する、エーテンラボの長坂 剛 氏とWizWe森谷による、まさかの対談の後編は、習慣化の歴史から始まります!

エーテンラボ株式会社 代表取締役 CEO 長坂 剛 氏
・株式会社WizWe 代表取締役CEO 森谷 幸平


習慣の歴史とは?

森谷:最近人文科学というか、歴史が面白くて、昔の人の時間の使い方とか、昔にそういう習慣とかあったのかなと思ったら、すごい示唆深いですね。

長坂:私も実は歴史とサイエンスが好きなのですが、習慣を紐解いていくとまさに宗教に行きつきますよね。人間の行動規範をつくるために宗教を利用したり、法律というものをつくって利用したりといういくつかパターンがあるのですが、何かしら型を決めてそのとおりにやる。曜日を設定して休息は日曜に取るというようなことを宗教でつくったように、枠の中で人の行動のルーティンがつくられていて面白いですね。

森谷:弊社の場合、行動定着の成功がKPIの設定でほぼ決まります。どうしてだろうと。大きな話をしてしまうと科学的法則は全部正しいですよね。正しい科学的法則がたくさん出すぎてしまって、24時間での使い方が分からなくなってしまうのではないかなと。科学的に正しい他のことで時間が埋められてしまっているのではないかというような。

だから逆にやらないことを決めて、削いでいったほうが定着するのではないかなと。昔は、宗教でこれと決まっているので一方向なのが、今は宗教の権威のようなものが薄まっているので。

長坂:日本は宗教をあまり意識していないですよね。

森谷:そうですよね。習慣が課題になるのは自由と一緒ですごくいいことなのですが、そうやって正しいことが増えすぎた中で、時間の使い方を決めるというのは、結構タフなのだろうなと最近サポートしていて思いますね。誰かに責任を押し付けて、決めてほしいのではないかなというのは少し感じています。

長坂:習慣というのは目標を持てる方にはいいと思いますが、目標を持って生きている方はそんなにいないのではないかと思っています。そう考えると、その人を構成している周りの環境に影響されて習慣がつくられている。どういう環境に置くか、どういう環境をつくるかというようなことが、習慣を支配しているのかなと思います。

森谷:完全に同意ですね。「Smart Habit」は伴走サポートなので、やりとりをしていると、会話にたどり着くことが多いです。対話や会話が、時間の使い方を形づくっているなと思います。自分を取り巻く近いところの会話総体のような感じで、会話に帰結していることがあります。このことを最近、『会話プロトコル』、そして、『習慣化プロトコル』という言い方をしています。AIの専門家が会話プロトコルと言っていたので使わせてもらっています。

長坂:言語化するということはすごく重要だと思っていて、人に話すと自分の考えていることが整理されますよね。友達や会社の同僚、お客さんとの会話の中で、自己アイデンティティーが確立されていくと思っています。1人で瞑想していてもなかなか自己アイデンティティーは出てこないです。人間は社会的な生き物なので、人間同士の関係性の中で自分の役割や自分の価値を認識して、これをやろうとなっていくのかなと思います。

そういった面では、昔はお祈りという行動があって、お祈りをすることである意味自分との対話をしていました。神様と対話してお願いをしたり決意をしたりすることで目標を持つ。そういうことが、実はルーティン化されていました。健康でいたいですと願うということは、健康でいようと目標を持つことでしたが、現代ではそういった目標を意識するというルーティンはなくなってしまっているので、なかなか習慣化しづらい世の中になっているかなと思います。

森谷:初期的な会話、人に話すところがモチベーションの源泉の一番初めにあるなということを最近すごく思いますね。初期的に会話ができたのか、できていないのかで数字が変わってきます。習慣化サポーターと会話ができているのかできていないのかで、全然違いますね。これは何なのだろうと。性格や特性はそれぞればらばらなのに、話したかどうかでそんなに変わるのかというのが新鮮な驚きで、先ほど目標を話すとおっしゃっていましたが、言ったことを誰かが聞いているというだけでもすごく効果があるのではないかなと。

長坂:一貫性の法則ってあるじゃないですか。サポーターさんに対して自分がやりたいと言ったことを、無意識のうちに思い込んでその後きちんとやるということにつながっているのかもしれないですね。

森谷:そうですね、返信が来ない人は大体離脱します。立派なサインなので、そこは完全に個別介入します。そこで話せると変わりますね。話せないと習慣定着が難しくなっていくという明確な法則性があります。

AIと習慣化

森谷:個別介入をAIがやったときにうまくいくのかが最近の重要な関心どころですね。今、カウンセリングができる人自体が少なくなっていて、すごくリソースが限られています。

長坂:私もAIを使ってチャットボットをやっているのですが、どこかのタイミングではシンギュラリティのポイントがくると思います。意味理解までいくともうできると思いますね。今の要約やWEBから持ってきたものを話すというところはすごいと思っていますが、この人が何を言っているのかを理解するというところまではまだいっていないですよね。

でももう近づいているので、どこかで意味理解までいって、一気に人とほぼ同等の会話ができるようになれば、そのタイミングが来るのではないかと。

森谷:そのときに一緒に楽しく共生していたら最高だなと思いますね。

長坂: AIの理想は、人の力を引き出すというのももちろんあるのですが、人と人との関係を良くしてくれるということが、AIの究極の姿なのではないかと思っています。道具はあまりAIである必要はなく、本当に仲良くなるためにAIがいる。人を理解してくれて、人類の関係性を良くしてくれるという存在が理想のAIではないかと私は思っています。

森谷:面白いですね。ゲームについてはどう思いますか?習慣化の世界を追求していくと、ゲーム的なノウハウとかゲーム的なサポートとか、ゲーム的な考えがどんどん入ってきますよね。ゲームは全部自動で仕上がるようになっていて、かつゲームを楽しんでいる人は苦痛ではなさそうというところでも完璧だなと。どんどん社会実装されていくといいなと思っているのですが、その辺りはどうですか?

長坂:「みんチャレ」は、ゲーミフィケーションを使って人を行動変容させるというアプリです。現代ではゲームをする人の行動を全部シミュレーションして、理解して、次の行動を与えています。ゲームはすごくAIが進んでいて、ユーザーの行動に対して、前回と違う行動をどんどんしてくるという形で、飽きさせない仕組みができていますよね。

ただ、まだどこまで行ってもプログラムです。人は学習能力がすごく高いので、同じことをされると飽きる特性があるので、どんどん敵のレベルが強くなったり、演出が派手になったり、行きつくところまでいったらもうボスを倒して終わりという形です。
 
ソーシャルゲームのような、人との関係性がずっと続くゲームももちろんあるのですが、どこかで飽きてきます。同じ反応でないことを返せるAIが生まれたら、ずっと続くゲームが生まれるのではないかなと。それが行動変容やソリューションなどに結び付いてくるのではないかと思っています。

森谷:健康増進とか教育にうまく連動されるといいですよね。きっとそうなると思っています。

ハマる仕組みをインプットする

森谷:私のところにいろいろな案件が来るのですが、社内で議論が生じたものがいくつかありました。主に娯楽関係なのですが、この案件をWizWeは受けるのかというワークショップをしましたね。

私は、「娯楽に関する継続を支援する」という方法を考えるインプットは社会課題解決を考える上で、大事なのではないかなと思っていたのですが、どこで線を引くのかとよく言われます。楽しいから続けるというゲーム的アプローチというのはそういうところにあると思うので、やっておかないといけないのではと思っていますね。

長坂:ギャンブルもすごくゲーミフィケーションで、人がハマる心理というのをすごく使っていますよね。なので、パチンコにハマってしまう人も、その人がいけないのではなくて、そういう仕組みになっているので、その場に行ってしまったことでもう仕方がない。お店に入ってしまったらたら、そういう仕掛けになってしまっているで、その人が何というよりは仕組みがすごいということですよね。その部分を勉強することはすごく合っていると思います。

ただ事業としては、ギャンブルと暴力とドラッグはやらないと最初から決めているので、やらないのですが、ただハマるという仕組みについては勉強したいですね。

森谷:マッチングアプリや婚活サイトのコミュニケーションは、応酬話法の勉強になりますよね。無視されないコメント、ショートコメントとか絵文字とか、ちょっとビーンボール投げてみるとか、それがコミュニケーションの充実においてすごく重要なのではないかと思っています。

教育系から出ていくとすごく正しいフォローをするのですが、長くなってしまいます。それだと、なかなかコミュニケーション上つらいのではないのかなと。

長坂:まさにそうですね。「みんチャレ」を始める前にいろいろな出会い系アプリを使いまくりました。

森谷:やはりそうですか。

長坂:ピアサポートなので、同じ目的の人たちと5人1組のチームを組みます。出会い系は2人ですけれど、どうマッチングするのかのアルゴリズムなどを調べるためにいろいろ見ました。

当時アメリカかどこかの出会い系サイトがハッキングされて全部botだったというのがありましたね。そうすると、ある一定の行動に収束すると、ある程度人間の模倣でも人をだませてしまうということも学びました。

森谷:それを何に使っていくかという使い方の話で、そういうヒントを実装することはすごく重要なのではと思っているのですが、私が言う度に社内で物議が醸されます。でも、そういうものもきちんと調べて転用していくというプロセスが、習慣化事業では重要なんのではないかと思っています。

長坂:出会い系のサイトやアプリをつくっている方たちの話を聞くと、逆に教育系から学んでいたりもしていますね。先生が生徒の興味を引くためにどう授業を楽しくするか、ただ黒板に書いて教科書に載っていることを話しているだけではつまらないから、生徒を指したり、どう思うかを話したり、少し違う角度から言ってみたり、先生たちも工夫されている。それをアプリにしたらどうかと考えてつくっているという方がいらっしゃいました。お互い学び合ってつくっているのかなと思います。

森谷:ライバーやYouTuberなどについては何か研究されたりしていますか?彼らはコミュニティー活動とか双方向ですよね。うちも1対マスなのでYouTuberすごいなと思って見ているのですが。

長坂:ライバーやYouTuber、地下アイドルなどは近いものがありますね、マスだけど身近に感じるというところで。自分の隣にいる人が話し掛けられて、自分も話し掛けられた、目があったと思うような、言葉のコミュニケーションを全員と交わしているわけではないのですが、いろいろな身体言語などでコミュニケーションが1対マスでも生まれるという世界が来ているのかなと思っています。

森谷:世界観近いですね。考えていること、研究していること本当に近いですね。

将来「習慣化」で実現したいこと

長坂:この先、医療ヘルスケアの課題を行動変容で変えていくというところは変わらないです。長期的にやりたいことは、世界平和というところにあります。

私たちのデジタルピアサポートは同じ目的の方たちがお互いコミュニケーションするという目的なので、世界中の人と同じ目的で集まることができると思っています。ウォーキングしようということを、今は日本だけの展開でやっていますが、アメリカや中国、インド、イギリスなどで展開したとしても成り立ちます。目標はみんな同じなので、住んでいる環境は違うけれど同じ目的を持った人たちが、同じ話題で話せると相互理解が進んで、世界平和につながるのではないかと。
 
今、インターネットの分断が進んでしまっていて、興味がある人だけ、この人だけ、この言語の人たちだけといったコミュニケーションになっていますが、インターネットが最初に生まれた頃はそうではなくて、いろいろな国の人たちと自由に会話していました。今は実名のSNSで、自分の興味のある世界の仲間たちとより強くつながるという形なので、もっと全然違う世界の人たちともコミュニケーションするということが世界平和につながるかなと思っています。

森谷:私はお金ですかね。短期的に資本主義を根底から覆せるかというと、なかなかそれは難しいのではないかと思っています。社会が次のステージに行くとしても、今の資本主義の構造がしばらく続くとなったときに、一定の経済条件を満たす人をどれだ増やせるかが重要かなと思っています。

インパクト投資という概念が出てきていますが、例えば、若年時に教育を受けるお金が支援されて、学びを得ることができると、大人になってからの就業率が上がり、犯罪発生率が下がり、結果社会的に出動する税金総量が下がっていく、ヘルスケアも同じで、若い間に規則正しい習慣をつけておけば60代越えてきた時、生活習慣病が発症しないというようになると、社会保険に関わる出動が減るという概念で、こっちにお金を回せるのではないかなと思っています。

そうすると学習や健康でいい行動をすると、お金が手に入るというような仕組みの循環をつくれると、経済状況を変えられるのではないかと思っています。習慣のデータを取っているので、それはすごく金銭価値になるかなと。

それから、人間にとっての、金銭的な見返りという観点で考えた時に、どうも、自分に戻ってくるお金の分量が一番大きいこと、「つまり最大の見返りの投資」は「自己投資」ということで、つまりは学習などの自己研鑽への投資のようなので、その辺りも習慣を通じて。やっぱり教育になってしまいますね。ヘルスケアと言っていますが、根源は教育になってしまう。

長坂:ヘルスケアも、ある意味健康経営というように見れば教育も近いかなと思っています。もちろん健康診断でCとかEとか出てしまった人は、すぐにでも行動変容しなくてはいけないというのもあると思いますが、別にそういう世代ではなくて、20代30代でまだ何も問題ないという人でも、生活習慣がよくない人がたくさんいます。そのまま放っておいたら40代50代で問題が出てくるので、そこを教育で変えていくとか、そういった会社全体のリテラシーを上げてくというような教育も、ヘルスケアにつながっているのではないでしょうか。

森谷:そう思いますね。健康増進もそうですし、いざとなったときの修羅場の踏ん張りをたどってくと、基礎的な生活習慣あるいは時間に対しての規則正しさが、しっかりしている人のほうが強いみたいですよね。そこを実現できるのか、難しいところがたくさんあるのですが。

長坂:そういった意味で「みんチャレ」は習慣を通して自己肯定感や自己効力感を高めることを狙っています。自己効力感が高まると、自分はできるはずだということで、また新しい習慣を始めます。

第一歩を踏み出せるので、どんどん新しいことを始めて幸せになれる行動が続く。その裏付けとなるのは、きちんと習慣化できたという自信です。何か成功したという自信は、かなり運の要素が多いのですが、続けてきたというのは本当に自分の過去の実績なので、それが自信になる。

小さい頃から、教育によってきちんと続けられてきて、そういった自信があるのであれば、将来的に何か大きな問題起きても、ある程度自分はできるはずだと、前向きに問題に取り組めるのではないかなと思います。

森谷:今、過疎化が進んでいますが、孤独は教育に対しても敵だし、健康に対しても絶対に敵だと思っています。年を取ってくると友達が減りますよね。長坂さんのお話を聞いて、「みんチャレ」さんも「Smart Habit」も、そういうときに根源的な課題を解決することができそうだなと。孤独を防止したいですね。

長坂:ピアサポートでみんな集まるので孤独が解消されるというのはそうですね。ヘルスケアや医療に対するリスクとして一番高いのが孤独です。実は喫煙や飲酒より孤独であることが問題であったりします。

習慣化を一緒に盛り上げたい

長坂:習慣化は、最近盛り上がってきましたけれど、まだまだだと思っています。ユーザーの根源的な欲求として、まず習慣化したいということがなかなかなくて、TOEIC600点取りたいとか、ダイエットしたいとか、そういう欲求の方が高いです。きちんとやっていくと習慣化が必要だと分かるのですが、まだまだそこにたどり着いてない方たちが多いですね。ですから、何か必要だと思ったら、すぐ習慣化を想起できるように、スタートアップ界隈で一緒に習慣化を盛り上げていけたらと思っています。

森谷:「みんチャレ」さんがパイオニアとして習慣化市場を切り開いてきたと思っています。習慣化というマーケットが広がったのは、長坂さんの企業家精神によるものですよね。尊敬しています。マーケットがたいへん大きいため少しいかがわしく見られることもまだありますので、一気に広げて、社会的認知をもっと上げられるよう頑張ります。

<スペシャル対談>まさかの競合対談!?「みんチャレ」×「Smart Habit」 習慣化の過去未来(前編)はこちら