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<スペシャル対談>まさかの競合対談!?「みんチャレ」×「Smart Habit」 習慣化の過去未来(前編)

三日坊主防止アプリ「みんチャレ」と習慣化プラットフォーム「Smart Habit」。

なんと今回、「習慣化」という同じ分野にフォーカスしたサービスを展開する2社による、まさかの対談が実現。

エーテンラボの長坂 剛 氏をお迎えし、「習慣化」についてたっぷりお話しいただきました。聞けば聞くほど近い考えを持っていることが分かった、代表二人の対談をお楽しみください。

エーテンラボ株式会社 代表取締役 CEO 長坂 剛 氏
・株式会社WizWe 代表取締役CEO 森谷 幸平


一般的ではなかった「習慣化」で起業

森谷:初めてお会いしたのは「かんぽ生命 - アフラック Acceleration Program」の時ですよね。

長坂氏(以下、長坂):そうですね、アクセラで。

森谷:お名前はずっと存じ上げていましたけれど。

長坂:私も森谷さんのことは存じ上げていて、習慣化のプレイヤーが出てきているなと思っていました。

森谷:軸が違うところが絶妙で面白いですよね。どういった経緯で習慣化に興味を持ったのですか?

長坂:私は新卒でソニーに入って、いろいろな新規事業に携わっていました。直近はゲーム部門の事業を担当していて、自分自身もゲームが大好きで、でも、ゲームをしているとき人は幸せになるのですが、ゲームが終わってしまうとその幸せも終わってしまいます。それって少しもったいないな、むなしいなというもやもやがあって、もっと人の人生を幸せにしたいと思うようになりました。

その時、人はどのように幸せを感じるかを調べると、人は自分から積極的に行動を起こすと幸せになるということがわかりました。それなら、みんなが行動を起こせばいいのだと思い、 行動に関する課題を見ていたときに、始められない、続けられない、まさに習慣化できないからこそ第一歩を踏み出せないという課題が見えてきて、ここを解決したらみんなが幸せな世界がつくれると思いました。

人が変わる本質を考えていった結果、習慣化に行きつきましたが、教育や医療ヘルスケアの最先端の研究をされている方は、もうしきりに習慣化だと言っていましたね。ただ、まだまだ一般化はしていなかったので、この課題を解けば、大きな社会課題を解くことができる。今まで人類共通の課題として、この習慣化できないということが連綿とありましたので、それを今こそテクノロジーの力で解決できる時代が来たのではないかなと思っていました。

習慣化がビジネスになるとは当時から思っていましたし、もっと大きいビジネスになると思っています。ただ、最初にアプリをつくってローンチしたときには、習慣化することのみにフォーカスしてアプリを制作していたので、マネタイズ機能は入れていませんでした。

森谷:「みんチャレ」を見たとき、すごいサービスが出てきたなと思いましたね。2016年ぐらいじゃないですか。

長坂:そうです。

森谷:私はその頃、WEIC(WizWeの前身)で、取締役として語学研修の「WizHeart」という完全に人軸でのやり抜く仕組みに携わっていたのですが、営業支援事業の取締役も兼任する必要が出て、習慣化事業の方は維持するだけになってしまいました。会社の方向性が、営業支援事業を伸ばしましょうとなっていたので、やりたくてもやれずにいましたね。

習慣化事業の方は、現在、弊社の取締役をしている細川が守ってくれていました。でも、維持しているだけだと人が辞めていくので、それがきつかったですね。私が会社を辞めてスタートすればできるのですが、そうすると社員やパートナーさんたちはどうなるのか。ではこのまま営業支援事業と兼任で習慣化事業は維持でよいのか、それも違う。何とか該当する関係者全てが納得する形で、習慣化事業に集中する方法はないのか、模索を続けていました。

結果、バイアウト、MBOという選択肢に行き着きます。事業ごと買うという思い切ったやり方です。多くの関係者との合意形成も必要で資金集めも必要になります。結果、バイアウトを心に決めてから、実行までに2年かかりましたね。

長坂:私もソニーからスピンオフという形なので、そういった意味では、2人とも会社からのスピンオフですね。

森谷:一緒ですね、確かに。

長坂:「みんチャレ」のアイデアは、個人で友人とやっていたアプリのプロジェクトから生まれました。たまたまソニー社内でビジネスコンテストがありまして、それに通って1年半の育成期間を経て、そこから独立させてもらった形です。

起業したのは2016年ですが、アプリ自体は2015年に出来ていたので、最初はソニーの「みんチャレ」でしたね。でも、アプリストアではソニーということを隠していました。もともと独立する前提で応募していたので、作った会社をよく見ていくとソニー株式会社と書いてはあるのですが、隠して一般のスタートアップっぽくアプリを出しました。

森谷:ソニーさん、すごいですよね。

長坂:懐がかなり深いですね。

森谷:ある意味、本当にイノベーターだなと思います。大企業の中から、新規事業でこんなに大きくなる会社が生まれてくるのはすごいですね。

長坂:仕事ではない新規事業ができる会社って、そうないですよね。

森谷:すごいと思います。エムスリーさんもソニーさんですよね。

長坂:そうですね。ソニーの新CEOに就任された十時裕樹さんが、私たちがSonyStartup AccelerationProgram(ソニーの新規事業育成プログラム)をやっていたときの担当役員でした。すごくスタートアップに理解がありまして、海外のアクセラレーションプログラムのような仕組みをつくれないか検討してくださいました。そのおかげで、本当のスタートアップという形で独立させてもらったという経緯があります。

毎日新たな発見ばかり「習慣化」は面白い!

森谷:習慣というのは、今でこそ行動変容と言葉がモダンになってきて、ようやく。当時はなかったですよね。

長坂:そうですね、学問自体はあって、行動経済学とか、ゲーミフィケーションとかも言われてはいましたけれど、本当に一部の業界でという感じでした。ゲーム業界だと結構メジャーではあったのですが。

森谷:ともすると、私自身は、何だか習慣化とか継続する方法論について、やたら熱くて、ちょっと怪しい人という印象も周囲に持たれていました。懐かしいですね。習慣化って面白いですよね。

長坂:私は行動経済学や心理学がすごく好きですね。偉い先生がいろいろ論文を出されているのですが、同じ試験をやっても半分ぐらいしか同じ結果が出ないというジャンルです。定説だと言われたものが実際は違っていたり、少し環境や対象が違ったりすると全然違う効果が出るなど、まだまだ発展途上の学問なので、絶対こうしたらこうなるというのがないから、スタートアップとしてすごくやりがいがあります。

仮説検証を繰り返していくというところが本当に面白いですね。毎日新たな発見ばかりがあるという、刺激的な分野かなと私は思っています。自信満々の仮説でも検証してみたら予想しない結果になったとか結構ありますね。
 
セオリーどおりなら絶対こうだろうという理論から機能を入れてABテストをしたら、絶対こっちが上がるはずだと思っているのに実際は別の方が上がったり、新たに入れた機能で習慣の成功率が下がったりというようなことがたくさんあります。

理論を解釈してアプリとして実装するのですが、その解釈が違うのか、通し方が違うのか、ユーザーのベースが違うのか、何か違うのか分からないのですが、やってみないと分からないというところで、常に実験を繰り返しながらアップデートしているという感じです。

森谷:最近、習慣という言葉が定着してきた感じがあって、そこはありがたいなと思います。

長坂:習慣化や行動変容というのは定着してきましたね。コロナになってから行動変容という言葉が結構広まりましたね。

森谷:そうですね。コロナ禍で時間の使い方や行動スタイルが変わったことで。最初の頃は習慣化と言っても誰にも信じてもらえない感じでしたけれど。

長坂:そうですね。コロナ以前は、習慣化という言葉は一般的でなく、何かを習慣化したいと思っている人なんていないのではと感じたこともありましたね。

如何に人に習慣化をしてもらうかということは、極論、人をどう動かすかということになってきますが、そこの成功率を高めるという分野なので、コロナがきっかけで、みんなで協力し合わなきゃとか、新しい段階に自分たちが行かないとこのままだと滅びるというような意識が若干出てきたことにより、習慣や行動変容が注目されるようになったのかなと思っています。

森谷:企業側の注目が社会課題解決型に移ってきましたよね、自然に。それはありがたかったところがありますね。

お互いヘルスケアの「習慣化」にフォーカス

長坂:今、私たちがフォーカスしていこうとしているのは、医療ヘルスケアです。もともとは、習慣化だったら何でもできるというコンセプトで「みんチャレ」を出して、いろいろな習慣化に使っていただいていました。

今もいろいろな習慣化に使っていただいてはいるのですが、一番深く長く使っていただいているのが、ヘルスケアや自分の治療を継続するための用途に使っていただいているユーザーで、そこが一番、習慣化に関する社会的インパクトが大きいということが分かりました。

森谷:サントリー様が資本参加してからなのですが、実は私たちもヘルスケアの色が。。。すみません。ヘルスケアのところの期待値といいますか、周囲がお困りで、そこに我々がやれることが大きいので、できることはやって行きたいなと思っています。

ただ私たちは教育から出てきたので、教育への期待値は高くて、将来的には何とか教育をやりたいというのはありますね。ただ残念ながら現状の我々のSmart Habitだと中学生以下だと厳しい。高校生は何とかいけそうなのですが、中学生だと本当に厳しいですね。何かやり方がないかなと思っています。

長坂:「みんチャレ」も、基本は高校生以上からですね。「みんチャレ」はお互いを認め合うというピアサポートで、勇気づけ合うことによって習慣化していくシステムですが、勇気づけられてうれしい対象が社会に広がるのが思春期以降らしく、その前は親とか先生とか、身近な人に褒められるほうがフィードバックの重みがある。

思春期以降になると、親に言われるとうるさく感じて、世間に言われる方がうれしくなるという、そういう変換の起こるタイミングで、ピアサポートが効きやすくなるというのもあるのではと思っています。もしかしたら、外部からのサポートなどに対しても、そういう心の変わり具合というところがあるのかなと感じました。

森谷:中学生以下の方々は、習慣化サポーターのメッセージをなかなか読んでくださらないですね。ご返信などもいただくことが難しく、今の我々のメソッドは、この年齢層にはまだ効果的でないですね。教育は重要なので何とかしたいです。

ヘルスケアの問題を考えたときも、初期的な日常生活の習慣定着が重要という考えもあり、そこは教育の問題に帰結するところもあると思うので、何とかやれるところまで進化させたいなとは思っています。

ただ、今のタイミングはまだ時期ではなく、今、若年層の教育の方へ全体フォーカスすると、習慣化法則の樹立もマネタイズも容易でなく、弊社の事業がなかなか立ちいかなくなってくるように思います。必要とされているところほど難しくお金も付きづらい印象があります、本当に。

長坂:お金の出し手が、本当に困っていることに対してなかなかお金を出さないという問題はありますよね。問題が顕在化していかないとお金を出しづらいという。

森谷:そうですね。

長坂:教育は必要なところなのですが、問題が出てくるのは50年後になるので、みんなどこか痛くなってからお金を払いに行く。そうではなくて、本当は前から知っておけば。

森谷:課題ですね。習慣を考えると、どうしても哲学の分野に入ってきますよね。

長坂:そうですね、どこまで行っても、サイエンスを使っても全部人に返ってきますので。人の理解というところで、なかなかサイエンスだけで切り分けられない部分が出てきますね。

<スペシャル対談>まさかの競合対談!?「みんチャレ」×「Smart Habit」 習慣化の過去未来(後編)に続く