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小説「バスターユニオン」

プロローグ Baster Union

 時はX年、地球が滅びてしまった。

 謎のウイルスによる襲来で地球環境が崩れて、そこに住んでいる人類が死んだのだ。
 ウイルスを放ったのは宇宙から来た異星人。いや獣人である。

「地球人よ、我々は宇宙から来た使者だ。今からこの国は我々、獣人が支配する。万一、この地球から逃げることがあれば殺す」

 そう宣言したある獣人は地上に兵を引率して、大人のみを感染、または殺して、抗体を持つ子供のみを捕虜にした。

「ママー、死んじゃイヤだー‼」
「ほら、餓鬼‼グズグズするな‼」

 地球にいる子供は両親を殺害されて号泣するが、獣人はお構いなしに手錠をかける。

 そして獣人の世界中の人間を次々と支配下に置き、最強の力を持つ獣人の権力によって人類は彼らの手に落ちてしまった。
 つまり獣人たちが地球人を人身売買として扱い、奴隷、剣闘士、娼婦など誇りを失う仕事道具になったのだ。

「そこの人間、誰が食事していいと言った‼」
「すいません。ですが・・・・・・」
「うるさい‼」
「グハッ‼」

 何か言い訳をすれば、その場で殺す。何か有るごとに自分の欲望のために酷い扱いを受ける。
 それは人類が歴史上で、最も恥を知った瞬間だろう。

 しかしそこから十五年経った頃。
獣人の知恵と歴史と人類の先端技術を融合させて、反乱が起きても対応できる殺戮兵器を開発した。

 その名は『U-revolusion(ウイルス・レボリューション)』

「これで人類は永遠に獣人のモノとなるぞ」

 まさにその兵器は獣人の強さを体現した発明品となり、地球征服が進んでいく兵器だろう・・・・・と思ったが、ある一人の人間が反乱を起こす。

「お前らぁぁ‼獣人どもを蹴散らせぇぇ‼」

 その人物は三河衆の松平家、また俗に徳川家として天下まで成り上がり、日光東照宮で神として祀られた家康の血を持つ男。

 その名を徳川清信という。

「清信様に続けぇー‼」
「おぉー‼」

 彼は捕虜として扱われた地球人を集めて、十五年経ったその時に反乱軍を形成させた。
 また、獣人より元々高いIQを持っていたため、彼が戦闘技術を磨くための地下シェルターを建設させて、部下を軍事教育する施設を作り上げたのだ。

 その軍隊は後にこう呼ばれた。
『バスター・ユニオン』

 さらに人類は獣人に勝つためのある兵器を密かに開発した。

 その名は人型兵器『U―baster(ウイルスバスター)』

「俺たちは異星人を倒して、緑豊かな地球を再生させる‼」

 この二つの力が重なった人類は、まさに最強のしぶとさを持つ主人公のような活躍を見せる。そして遂に勝利を掴んだのだ。

「徳川家バンザーイ‼清信様バンザーイ‼」

 こうして下克上を果たしたアンチユニオンは公認組織として政府に認められ、徳川清信は伝説の救世主となった。

 そして、そこから百年経った今。

 その兵器は人類が発明した伝説として軍事機密の戦闘用兵器となり、徳川家の末裔が戦国時代を終わらせた時以来の大活躍を見せたという歴史は、教科書に徳川家の新たな一ページとして語られることになった。

 そう。人型兵器の発明と清信という徳川の血を持つ者のおかげで戦争に勝利したと次の世代に引き継がれたのだ。
 これで世界は平和になる。全人類はそう思っていた。

「おら獣、ちゃんと歩けよ」
「ご、ごめんなさい」
「人類に逆らうと、どうなるのか教えてやろうか?」
「ヒィイィ⁉」
 しかし、徳川清信の死後。人類は獣人を捕虜としていた。

 要するに、獣人に対して仕返しをしたのだ。

 人類にとって獣人は悪であり、許せない所業をした犯罪者であると教え込まれた。恨みと言うのは本当に怖い。

さて、そもそも恨みを持つ生き物は二つの思考があると考える。

 何かされたら仕返しをする。
 だが、立場が逆転すれば即刻に反撃する。

 この二つの思考で無限に続く終わらない争いが繰り返される。それこそ全生物にある事実。

 何処かで終わると考えるが、忘れることができずに反抗してしまう行動。

 戦争は人の思考を狂わす危険な行為なのだ。

『俺たち地球人を支配したことは忘れない』

 地球で暮らす俺はそんな危険な戯れについてある日を境に考えていた。

 その事実を知った時にそんな生物がいると。
 それが地球上で最も規模の大きい戦争の末路であると。

 これを聞いている人に問いたい。そんな大きな恨みを持つ戦争を経験したことはあるかと。
 もちろん俺は経験をしていない。

 だから、俺は考えた。 

 まずは仕返しをせずに戦争を起こそうと考えた悪人を倒す。
 次に異星人を解放して同じ人種である地球人に拳を喰らわす。
 最後は両者が平等である世界を目指す。

 それを実現させるためにも動こうと・・・・何てことはなく俺は一人の耳と尻尾がついたメスに絡まれただけである。 

「ハァ、ハァ、ハァ」
「待てっ、小娘‼」

 そう、この話は少女と俺が出会ってから始まった政略戦争だ。

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