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「夢の観光鉄道」はいかがですか宮脇俊三さん①

宮脇俊三の佳作「夢の山岳鉄道」をお読みになった読者は多いだろう
「鉄道ファン」を僭称する者なら必読の書である。

30年以上前に書かれた作品が再度脚光をあびたのは
山梨県を主体に富士山登山鉄道構想検討会を
令和3年2月に発足させたからだ。

「富士山登山鉄道構想」は富士山五合目アクセス交通を
現在有料道路である富士スバルラインを利用し
その道路上にLRT(軽量路面電車)を敷設する案だ。

LRTは現代的な鉄道施設イメージが強いが路面電車だ。
人力や馬力などから「電動機(モーター)」へ
牽引手段を変えただけの
もっとも古典的な電車である。

山梨県の素案を拝見して小生が直観したのは
「宮脇俊三をパクったな!」である。
まさしく俊三先生がこの
「富士スバルルートへ路面電車を敷設」
するという発想で山岳鉄道を構想している。

30年前に作家が発想した「夢」に
現実がやっと追いついたのだろう。
道路交通を・・・有料とはいえ・・・
自由に山岳地帯へ通過させる・・・
その問題点は
「尾瀬」にせよ
「上高地」しかり
自家用車を規制し公共交通機関を利用した
移動手段へ変更する試みが近年の観光振興の主眼である。

環境汚染や乱開発の防止・入域人数のコントロールなど
バスやタクシーのみが入域できる「上高地スタイル」は
山岳道路の標準仕様となる可能性が高い。

ただし・・・タクシーは
多客期間に運転者の確保が困難であり
バスは乗客数を一定のレベルまで増やすことは
可能だが・・・
運転手の確保や高頻度の運行を実現すると
閑散期には過剰な投資となる・・・
観光バスへ転用しようにも
運転手不足のため・・・
バスだけが余剰になる。

バスの利便性と電車の高速・大量輸送の両面を兼ね備えた
LRTやBRTを導入することは
日本に限らず都市近郊輸送や観光地域内輸送の
「主力」となる方向性の王道で
もはや常識的発想である。

そこで・・・もう一工夫

そのBRTをDMVへ置き換えたら・・・
「夢の観光鉄道」が完成?

DMVはディーゼルエンジンを利用したバスで
鉄道を運行するのりものだ
LRTは路面電車・・・
つまり架線から電気を取り入れる電車だ。

発想を柔軟にすると

蓄電池駆動電車型DMV

現代の技術でハイブリットのDMVは十分可能だが
さらにその発想を一歩進めて
宇都宮近郊を走る烏山線の車両のDMV版を
富士登山山岳鉄道へ導入する。

自動運転区間を富士山5合目駅~
富士スバルライン入口駅に設定し
この区間は自動運転とする。
富士スバルライン入口駅付近では
周辺に散らばった駐車場や観光・宿泊施設まで
運転手が乗車して
「リムジンバス」を運行する。

自動区間では車掌だけを載せて運行は自動にすれば
「物品販売や観光案内」と
「いざという時のための安全確保」
の両面が可能になる。

①鉄道運転士の養成には多額の費用と時間がかかるが
車掌の養成は運転士ほど時間も費用もかからない。
②路面走行区間はバスとしての機能だけを利用するので鉄道車両と規定されなければ大型2種免許で運転が可能
③将来的に自動運転技術が向上すれば一定地域のみの運転作業であるため自動運転への移行が比較的安易

気仙沼線BRTは小生が見学した頃は普通のバスであったが・・・

運転手不足からJR東日本もついに
「気仙沼線 BRT における自動運転バスレベル 4 の認可」を申請し受理された。
JR東日本というお堅い会社にしては画期的とよべる実験を
2024年3月から開始している。

「乗客不足で運行の継続が危ぶまれる鉄道」と
「運転手不足で運行頻度を低下させざるを得ないバス路線」が日本各地に存在する。

そのうち鉄道が近隣に存在するバス路線ならば
「DMVの有効活用」は決して夢物語ではない。

そして・・・
「富士登山山岳鉄道」以外にも
アクセス線として
JRや私鉄の鉄道路線が観光地の入り口まで敷設されている鉄道路線で・・・
「観光地の中心まで鉄道が到達していない」
そんな路線は日本各地に複数存在する。

そんな観光地へDMVを導入すれば
①道路輸送の利便性
②鉄道の高速性・大量輸送
が可能になる。

コストの低減と運行頻度・乗車人数の確保並びに運転区間の広がりという複数の課題が解決できる手段がDMVだ。

問題が残るとすれば
①運転車両の開発
②車両の汎用性
③法規制との整合
④蓄電池等の性能と安全性
だろう

ただし・・・

技術革新は必ず進む

阿佐海岸鉄道の営業運転は
DMVの実証実験という性格も加味され
「安全で快適な輸送機関」という面と
「低廉な維持費で運用可能な鉄道」
という両面での展開を可能とする

「夢の観光鉄道」

を実現させるための実験場でもある。

第2回からは
「富士山岳登山鉄道」を筆頭に
「ここにDMVを導入したら」という
鉄道路線を一話ずつ掲載する。

次回
尾瀬観光DMV
「はるかな尾瀬は身近」




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