「個人の尊厳」というユートピアのために
(政治について書くのは、なかなか勇気のいることだ。しかしもし、固定した現状に対して何も言わず、そしてその沈黙が自主的でない——つまり何者かに強制されているとすれば、この社会が保障しているはずの表現の自由を裏切ることになるだろう。今、史上稀に見るクリシェの氾濫という危機に瀕しており、自由な表現によってそこから救われるべきなのは、表現の自由それ自身なのである。)
戦後民主主義を、その根底から支えてきた価値観は、個人の尊厳を無条件に肯定するという思想だろう。どのような人間も、等し