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苦手なもの

私は自己紹介をするときに、
よく「納豆カレーがすき」
という入りをする。

納豆カレー?えーっ!
というリアクション込みで、
ちょっとだけ注目を引くことができるから。

そもそも私はカレーも好きで、

納豆も好きで、
でも納豆カレーは、とんでもない。
あんなのは食べ物じゃない
くらいに思っていた。

でも、昔、カレー屋でアルバイトをしていたときに、
納豆カレーというメニューに出会った。
当初は、納豆カレーなんて誰が食うんだよ。
ってな感じで、まるで相手にしていなかったのだが、
意外にも、従業員さんたちが、割と当たり前のように
まかないで、納豆カレーを食べる姿をよく見かけてた。

ある日、なんかのノリで、納豆カレーにとうとう手を出した。
食べた瞬間、世界が変わった。

ひっくり返った。
うんめぇ~。
その日から、狂ったように、
まかないで納豆カレーを食べ倒した。

これを読んでいる方で、
「納豆カレーなんて信じられな~い!Σ(゚∀゚ノ)ノキャー」
という人は、ぜひおすすめ。

私の中で、納豆カレーの定義が
おいしくないもの
と分類されていたところから、
大好物というひきだしに分類された瞬間だ。


子どもの頃は全く受け付けなかったけど、
今では、それがないと食べる気が失せるくらいのものが
割とある。
その象徴的なものが、わさび・からし・マスタード だ。
いわゆる、辛くて、若干の香りが強いものは
主役を蹴り飛ばして、がんがん主張してくる感じがしてくるのが
とにかく嫌だった。
お寿司にわさびが入ったら、マグロの握りじゃなくて、
それはわさびの握りになっちゃう。
って思ってた。

でも、その定義も私の中で大学生あたりで、
上記に挙げた辛いものたちは、すべて
大好物のひきだし

に入れられることになった。


人は、得体の知れないものが入り込んでくると、
自分の頭の中で、どのひきだしに入れるかを考える。
そうやって分類することで、きっと頭の中を整理整頓して、
安心する。

得体の知れないものを一度、NO
の判断をした瞬間から、
NO
というひきだしに入れられる。
だから、よほどのきっかけがない限り、
NOをYESにしようとも思わない。

だってNOに入れることで安心したわけだから、
それを「いや、YESなんだって。一回試してごらん」
と言われたところで、
「いやいや、俺がNOと言ってるんだから、NOでいいじゃん」
わざわざリスクを冒してまで、やろうとは思わない。きっと試したところで
「ほらー。やっぱりNOじゃん!」
って、試したことを後悔する。


子どもたちは、大人たちと比べて、得体の知れないものと遭遇する確率が高い。


子どもなりに、それまでに経験してきたことをもとに、
せっせとひきだしにしまいこんで、分類している。

そこに、どのひきだしに入れたらよいのか分類に困るものが混入すると、
途端にフリーズして、ひとまず「その他」的なところに避難させておいて
折を見て、それをどこかのひきだしに改めて整理し直す。

人は、結構、最初の印象で、
何らかの判断を下して、頭の中のどこかのひきだしにしまうと
それをすぐさま、訂正しようとは思わない。
特に子どもは、その得体の知れないものが、ひっきりなしに混入してくる。
得体の知れないものの混入は非常事態で、

子どもは一週間の中でもかなりの頻度で
頭の中で非常事態が起こっている。

だから、例えばいったん「苦手」というひきだしにしまうと、その自分の中の分類の定義をひっくり返すようなことはあまりできない。
それを都度都度、整理し直そうなんてことは思わない。
キャパオーバーしちゃうから。

塾の教室内で、よくあるのは、
「僕、図形苦手。」
「私、地理とか意味わかんなーい。」
というやつ。
この苦手というやつが結構やっかい。

まだまだ経験もそれほどないのに、
一度、できない経験をしてしまうと、
割とあっさり「苦手」のひきだしにしまいこんでしまう。
一度、「苦手」の中に分類してしまうと、
かなりの力を働かせないと「苦手」のひきだしからは出てこない。
もっとやっかいなのは、苦手としている図形のテストがあったとして、

その点数が、残念な結果だったときに、口から出てくるのが
「図形苦手だから。」だ。

いやいやいやいや。
まだまだまだまだその判断は早すぎるって!
その程度の経験値で、その結果を才能や天性的なもので片づけちゃうと、
その図形の問題というか図形という分野へのアプローチは一生できないかもしれないよ。
そうそう簡単にひっくり返るような大きな出来事は起こらないよ。

苦手じゃなくなるためには、
できる
という経験をするまでやるしかない。


才能や天性を理由にした途端に、解決策を探す手段を失う。
とても大きな機会損失だ。もったいない。

だから、初めの段階で、「苦手」のひきだしにしまわれてしまうと
その後もかなりの長い期間を要さないと、
苦手からひっぱりだせない。


私は、よく子ども達に言う。
たしかに、今回結果が悪かったかもしれないけど、
今回は「苦手」という言葉を使うのはやめておこう。
もしかしたら、もうちょっと頑張れば、合格点に到達したかもしれない。
だから、「まだできない」というひきだしに入れることにしよう。
という提案をするようにしている。

これは、子ども達だけなら、まだしも、
お母さんお父さんと面談をすると、


「うちの子は数学が苦手なんですよ。」
と言う言葉が飛び交う。
だから、そういう言葉が出てきたときには、
「ちょっとお母さん。お父さん。苦手っていう言葉、ちょっと待ってもらえますか。まだ小学4年生じゃないですか。
まだ、できるという経験をしてないだけで、これからできるようになるかもしれないじゃないですか。」
といった具合に、お母さんやお父さんにも必死で止めにかかるようにする。

放っておくと、
きっとおうちでも、同様に
「あなたは本当に数学苦手よね。」
なんてことを言っちゃったりしちゃうでしょ。
言うのは簡単だけど、それを言っちゃった日から、
次に克服するまでに、相当な時間を要することになっちゃうよー。


子どもだけに限った話ではない。
大学生のアルバイトさんや、新卒の新入社員さんも、
割とあっさり、
「自分、パソコン苦手っすから。」


的なことを言っちゃう。

ふ~。
って思う。

まぁ、私の場合は
「はいはい。苦手なのね。
 じゃあ、苦手じゃなくなるまで、やってみようか。すぐできるって。
 PCなどに触ったことのない人間にとってはきつい言葉なのかな。
 パワハラ?ですか。」

まぁ、でも
若いわけだし、触ったことないし、
もうすでに苦手のレッテルを自分に貼っていることをカミングアウトしたし、
それを逆手にとって、それでもPC頑張ります。
たぶん失敗山ほどして、迷惑かけます。


でも、失敗を繰り返して、いち早く先輩方に追いつけるようにしてみます。

できない。しらない。経験がない。
だから、しない
ではなくて、とりあえずやってみっか でいい。
失敗も想定内と考えるから、君たちがたくさん失敗することで
会社が前進するなら、ぜんぜんいいぞ。
だから、知らないことを武器にして、迷惑かけなさい。


とまぁ、えらそーに言うわけですが、

じゃあ、じゃあ、そんなこと言うあなたは苦手なものはないんですか?


あります。

朝早く起きるのが苦手です。

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