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秋田・ナマハゲを知る

2023年4月半ば、車で秋田県へ向かった。
東北も東北の地。関東と比べ春の訪れが遅くあちこちで満開の桜が迎えてくれる。地元の人の話によるとそれでも今年は早いとのこと。タイミングよく、春めいた秋田各地を移動して周った。

さて、男鹿半島へ向かった。
男鹿半島には本山・真山・毛無山(または寒風山)の男鹿三山がある。修験道の霊場として山岳信仰が盛んな場であったそうだ。男鹿半島を車で走っていると、こうした山々が姿を見せる。日本海に面した北国、特に真冬の厳しさは想像を絶するが、土地に暮らす方々にとって山々の存在は心の拠り所になっていたのかもしれない。

男鹿半島の先端の入道埼灯台。険しい岩礁と日本海が広がる。この日は風が強くとても立っていられない
入道埼八望台北浦線の途中にある八望台より。真山・本山が見えた

男鹿半島といえば「ナマハゲ」が有名で、おそらく誰もが一度は見聞きしたことがあるはず。ユネスコ無形文化遺産や国指定重要無形民俗文化財にも登録されている。真山の麓・真山地区には『男鹿真山伝承館』と『なまはげ館』が並んでおり、訪れてみた。この「ナマハゲ」という風習を深く知ることができたので紹介したい。

真山の看板。登山口の真山神社の境内にある
なまはげ館の展示室に立つナマハゲ

ナマハゲは「冬の間、囲炉裏に長くあたるとできる火斑(ナモミ)を剥ぐ」というのが語源とされ、怠け心を戒めるために山から降りてくる来訪神。起源は鬼説・修験者説・異邦人説など諸説あるようだ。
大晦日の晩に集落の青年たちがナマハゲに扮し、地域の家々を周るこの風習は、現在でも約50の集落で続けられているという。身につける面や衣装はその地域によってさまざまなことも魅力的だ。

ナマハゲには作法がある。ナマハゲはまず、「先立ち人」と呼ばれる人物の案内で大きな唸り声を上げながら家に入り、家の戸口や壁などをバンバン叩きまわり、家の者がきちんとやるべきことをしているのかを問う。子どもたちは畏れおののき泣き叫び、家主はナマハゲをなだめながら、お膳やお酒でもてなす。これはお決まりの「ナマハゲ問答」と呼ばれるようだ。
ナマハゲはただ脅かしにきてるわけではなく、音を立てて家中の悪いものを祓い、これから訪れる一年の幸せを祈る。厳しい寒さの中で暮らす人々を叱咤激励するのだという。

男鹿真山伝承館で行われている、真山地区のナマハゲ実演

男鹿真山伝承館の実演で、ナマハゲの風習を擬似体験させていただいた。大きく猛々しい姿、家中を叩く激しい音、足音、体に響くような唸り声は、凄みがあって身も心も痺れる。予想以上の迫力だった。そして併せて温かさと優しさ、包まれるような励ましを受け取った。この風習が絶えずに続けられてきたということが、スッと飲み込める体験だった。

なまはげ館では約60の集落のナマハゲが並ぶ圧巻の展示室も

最後に、なまはげ館の売店で「人形道祖神」を取り上げた『村を守る不思議な神様』という本を入手して帰路へ。
同書によると「人形道祖神」とは、東日本を中心に局地的に村境や神社などに祀られている、災厄から守る大きなワラ人形のこと。地域によって俗称や姿形もさまざま。なかでも秋田県の個体数は群を抜いて多いそうだ。また、秋田県では男鹿半島を中心に沿岸部でナマハゲと類似した行事が行われてきたが、このナマハゲ類と人形道祖神が両立する地域は無く、2つの文化圏に分かれるという…そんな発見にもなんとも心惹かれてしまう。

調べてみるとこの人形道祖神という存在は関東にもあるようだ。今回は常々忘れやすい自分のために旅中に学んだナマハゲのことを書き記した。いつか人形道祖神のことも調べていきたいと思う。

秋田人形道祖神プロジェクト発行『村を守る不思議な神様』
道の駅ふたつい(能代市)の展示スペースにて人形道祖神と出会う。大きさに驚いてしまう

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