見出し画像

贖罪

今更償えない罪だが、、、。  

過去に戻れるならばどうしても謝りたい、 
いや謝らなければならない罪がある。  

私は中学2年生の頃、同級生の女子を傷つけた。   

あれはたしか、授業中だったと思う。

お腹をよく壊す僕は、 
その日も1人、授業中に腹痛で苦しんでいた。 

授業中に手を挙げてトイレに行くのは恥ずかしい。  
特に中学2年生なんて、思春期の真っ只中だ。 
ここでトイレに行くなんて言ったら「ウンコマン」と囃し立てられるのが関の山である。

そんな私は、一か八かの大決心で、すかしっぺを決め込んだ。

片ケツをあげて軌道を確保し、慎重に、そしてゆっくりと屁を出していく。  

✳︎✳︎✳︎✳︎✳︎

結論から言おう。 
私は事なきを得た。
無事、放屁に成功したのである。     

だが、そう安心したのも束の間であった。 
私の背後に敵は居た。

右肩を叩かれた私は、後ろを振り向く。 
「だいすけ、おならふったやろ?」    

「渡辺智弘(仮名)」    

デリカシーの無さで有名な彼は、私にそんな事をいう。  

あぁ臭いだ。臭いまでは流石に誤魔化しが効かなかったのだ。

よく、音のするオナラよりもスカしっぺの方が臭いと言われるが、 
それはあながち間違っていないのかもしれない。  

自分でもうっすらと、硫黄臭があたりを漂っているのが分かる。

その時、私はすぐに思考を巡らせた。

もしここで、私が罪を認めれば、 
「すかしっぺをしたやつ」という、もっと恥ずかしいレッテルを貼られると。 


それならば、いっその事シラを斬り通そうと。

だが、シラはいつまでも切り通せ無い。  

そこに臭いがあるからだ。    


考えあぐねた挙句、 
私は男として最低な行動を取ったのだ。   

「智弘、俺やねぇわ。斜め前から匂いがする。多分オナラは、鷲尾やわ」   

「 鷲尾梨香子(仮名) 」

斜め前に座っている小柄な女子生徒。  

「あぁね。智弘は言った。」

そこで話が終われば良かった。   



だが先程も言ったように、智弘はデリカシーの無い男だ。

授業後、智弘は鷲尾に言った。 

「お前、屁ふったやろ」 

小柄でテンションの高い彼女は、胸の前で大きく両手を振りながら、反論した  


「えぇ、私じゃ無いよぉ!違う!」 

その大きなジェスチャーと甲高い声が、僕達にはわざとらしく映った。

そこで智弘は、確信をついたのだろう。
「犯人は、鷲尾かぁ。」   

自分の罪を隠すことで精一杯だっだ私は、 
平然と彼に同意したのだった。    

その後、このオナラ事件が発展することは特に無かったが、 
全く関係のない女性に、すかしっぺの罪を着させてしまった事。  


彼女に再会した時には、謝りたいのだ。

私の起こした、愚かな冤罪を。




小柄でテンションの高い彼女とは






この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?