贖罪
今更償えない罪だが、、、。
過去に戻れるならばどうしても謝りたい、
いや謝らなければならない罪がある。
私は中学2年生の頃、同級生の女子を傷つけた。
あれはたしか、授業中だったと思う。
お腹をよく壊す僕は、
その日も1人、授業中に腹痛で苦しんでいた。
授業中に手を挙げてトイレに行くのは恥ずかしい。
特に中学2年生なんて、思春期の真っ只中だ。
ここでトイレに行くなんて言ったら「ウンコマン」と囃し立てられるのが関の山である。
そんな私は、一か八かの大決心で、すかしっぺを決め込んだ。
片ケツをあげて軌道を確保し、慎重に、そしてゆっくりと屁を出していく。
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結論から言おう。
私は事なきを得た。
無事、放屁に成功したのである。
だが、そう安心したのも束の間であった。
私の背後に敵は居た。
右肩を叩かれた私は、後ろを振り向く。
「だいすけ、おならふったやろ?」
「渡辺智弘(仮名)」
デリカシーの無さで有名な彼は、私にそんな事をいう。
あぁ臭いだ。臭いまでは流石に誤魔化しが効かなかったのだ。
よく、音のするオナラよりもスカしっぺの方が臭いと言われるが、
それはあながち間違っていないのかもしれない。
自分でもうっすらと、硫黄臭があたりを漂っているのが分かる。
その時、私はすぐに思考を巡らせた。
もしここで、私が罪を認めれば、
「すかしっぺをしたやつ」という、もっと恥ずかしいレッテルを貼られると。
それならば、いっその事シラを斬り通そうと。
だが、シラはいつまでも切り通せ無い。
そこに臭いがあるからだ。
考えあぐねた挙句、
私は男として最低な行動を取ったのだ。
「智弘、俺やねぇわ。斜め前から匂いがする。多分オナラは、鷲尾やわ」
「 鷲尾梨香子(仮名) 」
斜め前に座っている小柄な女子生徒。
「あぁね。智弘は言った。」
そこで話が終われば良かった。
だが先程も言ったように、智弘はデリカシーの無い男だ。
授業後、智弘は鷲尾に言った。
「お前、屁ふったやろ」
小柄でテンションの高い彼女は、胸の前で大きく両手を振りながら、反論した
「えぇ、私じゃ無いよぉ!違う!」
その大きなジェスチャーと甲高い声が、僕達にはわざとらしく映った。
そこで智弘は、確信をついたのだろう。
「犯人は、鷲尾かぁ。」
自分の罪を隠すことで精一杯だっだ私は、
平然と彼に同意したのだった。
その後、このオナラ事件が発展することは特に無かったが、
全く関係のない女性に、すかしっぺの罪を着させてしまった事。
彼女に再会した時には、謝りたいのだ。
私の起こした、愚かな冤罪を。
小柄でテンションの高い彼女とは
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