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はじめてのパパ友

ママ友って、都市伝説なのでは…。
子育て広場で一緒になったママさんと、それなりに会話が盛り上がっても「連絡先交換しましょう♪」「今度ランチ行きましょう☆」となったことがない。私は。

迷惑だったらどうしよう…と、こちらからも聞けない、誘えない。
昔からの友人がママになって、お互いママ同士で会うことはあっても、ご近所の見ず知らずのママさんと関係を深めるって、なかなかハードルが高い。

「ママ友トラブルとかコワイ!」なんて聞くが、私はトラブルどころかそんな土俵にも立てていない。コミュ力が、麒麟川島ボイス並みに低い。

私には2歳の娘と0歳の息子がいる。第二子の育休中であるが、未だにご近所のママ友はゼロ。このままでは本当に都市伝説で終わる…。

そんなことを先輩ママに話した。「私もママ友いなかったよ。でも、幼稚園終わった後、子ども同士が公園で遊ぶようになると、自然とママ同士でつながるよ。」と言っていた。

なるほど。確かに、同じクラスの子とうちの子が公園で遊んでいると、保護者同士で話さないわけにはいかない。それが毎日となると、自然と関係が深まっていくのか。

保育園はどうだろう。今は、送迎時に他の保護者とお会いしても、挨拶程度。私は育休中だが、皆さん働いているし、保護者同士で関係を深める機会はない。時短勤務でお迎えが早いと、公園で交流することもあるのかな。

保育園の保護者と言えば、要注意人物がいた。

私が育休に入ってから、保育短時間となり、お迎えは16時半までに行くことになっていた。うちの園は、保育短時間の方は少なく、育休中であるか、勤務時間が少ないママさんが数人くらい。

その中で、目立つパパさんがいた。娘と同じクラスの加奈ちゃんのパパだ。背が高く、ぽっちゃりしていたので、物理的にも目立つ。なにより強烈な印象だったのが、園長や先生にタメ語であることだ。

保育料を払っているとはいえ、保育園は福祉事業だ。なんなら、保育だけでなく、トイトレや集団生活の心得など、教育的なことも施してくれる。先生は育児相談にものってくれる。

そんな尊い先生方に、加奈パパはタメ語で話しかける。ありえない。私はコンビニでバイトしていた頃でさえ、お客さんにタメ語で話されたことはほぼない。敬語は、日本人の基本マナーだ。

夫も半年の育休中の送迎時に、加奈パパに鉢合わせ、引いていた。
「加奈パパ、今日も先生にタメ語やったわ。」「アカンよね。てか、迎え時間早いけど、仕事してるんかな。」「服も私服って感じやもんな、でも育休中とかではなさそう。」
家で夫とヒソヒソ話していた。

治安がよくない地域と認識はしていたが、マナーのない保護者を目の当たりにすると、うちの子は私立小学校に通わせるべきか…などもよぎる。なんとなく送迎の時間帯も、加奈パパとかぶらないよう避けた。

時は経ち、秋になり外で過ごしやすくなった。お迎え後は夕飯まで時間があるので、娘たちを公園で遊ばせる。

「今日はどの公園に行く?」「四角公園!」保育園を後にすると、手をつないで娘の行きたい公園に向かう。

公園に着くと、娘はブランコに向かって走る。私はゆっくり娘を追う。その時、私は見覚えのあるシルエットにどきっとした。

「加奈ちゃん!」娘は保育園でバイバイしたばかりの加奈ちゃんとブランコで再会を果たす。もちろん、そばには加奈パパがいた。

「あ、こんにちは~」「こ、こんにちは~」私は作り笑顔をする。娘はブランコに乗りたがり、やむをえず乗せる。加奈ちゃんと娘が笑いながらブランコで並んで遊ぶ。可愛いが、私は手に汗を握ってしまう。

「公園で子ども同士が遊ぶようになると…」先輩ママの言葉が反芻する。先だと思っていたが、まさかデビュー戦が加奈パパとは…。

「コイツ、家で娘ちゃんの話よくしてますわ~」「うちも加奈ちゃんがよく出てきますよ。加奈ちゃん、仲良くしてくれてありがとう!」子どもをコイツ呼ばわりするのは気になったが、私には敬語だった。

「そういえば、さっきお迎えいったとき、娘ちゃんがのりくんと玩具取り合ってて先生に注意されてましたよ(笑)」「えーそうだったんですか?先生、私には黙っててくれたのか~(笑)」

加奈パパは保育園関連のことをたくさん話してきた。途中から気が付いたが、加奈パパはコミュ力が高い。もともとないコミュ力が育休でさらに衰えた私でも、会話が途切れることはなかった。

「最近、園で歯磨きが始まりましたよね。」「俺も聞きました。でも、まだ難しい子はブクブクうがいだけらしいですよ。」

保育園での情報も、私が収集したものより+α多く仕入れている加奈パパ。先生は忙しいと思って、私は長話しないようにしていたが、加奈パパは先生とたくさんコミュニケーションを取っていた。

6歳のお姉ちゃんもいるらしく、先輩パパとして子育てのことも色々教えてもらった。

「よかったら、また遊んでやってください!」「ぜひ!ありがとうございました!」暗くなってきたので解散した。

普通に楽しかった。加奈パパへの印象はガラリと変わった。娘のことを気にかけ、園での様子を先生にしっかり聞いている。勝手に悪い印象をもち、恥ずかしい。

そういえば加奈パパは、私が送迎時にベビーカーで園に入ろうとすると、門を開けて待ってくれたりと、以前からジェントルマンなところもあった。

時代はジェンダーレス社会と、わかっていたつもりが、短時間保育でパパが送迎していることに、私は違和感を強くもってしまった。仕事のしかたも多様化している時代だというのに。

加奈パパのタメ語も気になっていたが、女性だったら、「人懐っこいのかな」で終わっていたかもしれない。それに、先生はどう思っているか知らないが、外野の人間がとやかく思うのは筋違いだ。

加奈パパを男性だからと偏見の目で見てしまったこと、まだまだ私の視野が狭かったことを、反省した。夫婦で陰口叩いて申し訳ない。

そういえば最近、電車内でくたびれた服装で仁王立ちをしている男性を、不審者かと怪しく思ったことがある。昨今の電車でのテロ報道もあり、何をしだすかわからない…と私はコワくなった。

結局、男性は何事もなく降り、私の思い違いだった。車内にいた人はみんな座ってスマホを見ていた中、1人何もせず立っているだけという男性が、私には浮いて見え不審に思ってしまったのだ。
体格がいいぶん、男性は少しでも周りと違う行動をすると、警戒されやすいのかもしれない。

旦那も育休中は、平日昼間に一人で外出する時、ご近所の目が気になったらしい。女性の生きづらさもよく取り上げられるが、男性も生きづらい面があるんだなと思った。

ママ友ができないと落ち込んでいたが、時代はパパ友も進出しつつある。パパ育業も主流になろうとしている今はきっと過渡期で、私たちは男性に対する色眼鏡も外さないといけない。

これから、色んなママさんやパパさんと交流するだろう。自分の当たり前を押し付けずに、相手の素敵な面に刺激をもらい、楽しく交流できたらいいな。

はじめてのパパ友に、気づかされた。

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