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ワンオペママの戦場(夕飯)

「あ~今日も疲れた。」「お疲れ様~。」
18:30。帰宅後の手洗いうがいをし、部屋着に着替える夫。帰宅したパパに一瞬群がったお子たちはすでに散り、Eテレのコッシーにまた向かう。

「今日は何?焼き鳥か~いいじゃん!」どんな手抜き料理であろうが、夫はいい反応を示す。「これ、食べさせたらいい?」夫はレンチンしておいた離乳食を指さす。「うん、お願い。」夫が息子をベビーチェアにのせ、エプロンをつけさせ、スプーンで口に運ぶ。

「今日も忙しかったの?」「面倒なメールが来てて、その対応に1日潰れたわ」「Oh…大変だったね」私も今日のお子たちのことを報告したいが、育休中の身。先に、夫の愚痴聞きやねぎらいをするのが礼儀だと思っている。

18:40。ピタゴラスイッチが始まる。家族そろって、30秒ほどのピタゴラ装置を無言で見守る。「ピ」の字にゴールすると、私たちの止まっていた時間がまた動く。「ごはん食べるよ~」TVを消す。食卓に、焼き鳥、つくねハンバーグ、サラダ、味噌汁を並べる。

ご飯をよそう。ちょっと前まで、夫も私も、夕飯は炭水化物を抜いていた。おかずをあてにお酒を飲んでいたが、最近は米もしっかり食べる。2人育児になってからだろうか。ちゃんと食べないと、寝るまでの体力がもたないと悟った。

「いただきま~す」夫と娘が箸をもつ。私は、夫からバトン(スプーン)を受け取り、息子に離乳食を与える。ルンルンでウイスキーを割る夫。(ええもん食べとんな~。ワイ、ドロドロ飯やん…)息子はちょっと切なそうにする。「食べてまちゅか~?!」と息子の頬に顔をすりつけると、くすぐったそうに笑いご機嫌になる。ちょろい。

娘のおかずはお茶碗にのせておくが、基本的に大皿スタイル。焼き鳥の味付けはニンニクが効いていて食欲がそそる。娘はお茶碗の上の肉がなくなると、「お肉食べる~♪」と大皿を箸でつつく。「ごはんも食べてね~」と促すも、器用に肉をキャッチし、ニヤッとする娘。肉を食べ終わったのを見計らって、娘の口にもごはんを突っ込む。

夫は、保育園のお帳面を読む。「今日は人参を収穫したのか!」「組長、人参も育ててたんだね~」「一番大きいの収穫したの!」

組長は園長のことだ。クレしんの組長(園長)に似ていることから、愛を持って、家でそう呼んでいる。食育といって、色んなものを育てているが、○○ハーブはないか、つい注意深く観察してしまう…。

「今日何してたん?」急に夫が、私に聞く。言葉に詰まる。今日もnoteを書き殴っていたが、そんなこと言えない…。「掃除したり、かな~」部屋は片付いていないので歯切れは悪い。

何していたのか?と聞かれると、何か成果を報告しなければと思ってしまう。私も所詮、社畜体質か。「あ!アマプラで 推しの子 見たわ。流し見だけど」と成果とは言えない事実を発してしまう。職場だったら「雑談してました☆」というレベルだ。私の阿呆。

「フン、よろしいな~!」鬼の首をとったように夫が言う。「俺は毎日ストレスの中仕事してるのに、嫁はぐーたらアニメかw」文字にするとキツイが、夫は冗談交じりに言っている。それに対して、私は冗談では返さない。

「毎日お仕事してくれることは、ありがたいことですよ。でも、平日の家事育児はほぼ私。夜泣き対応も私。休日もアナタの自分時間の確保に協力してる。平日昼間くらいちょっと合間を縫って 推しの子 見るくらいいいんじゃない?」夫は地雷を踏んだと悟った顔をする。

「ついでに言うと、私は長い妊娠期間を仕事しながら乗り越えて、死ぬほど辛い出産をして、産後も身を削って母乳あげ続けてることに対して、アナタは私になにか報酬でもくれたんか?」夫は視線を下げる。

「当たり前だと思っているし、この辛さはどうせわからんだろうな。目先のことしか見てないから『ぐーたら』とか言えるんだろうな。政治家もアナタと一緒で、寄り添うことをしないから、世の女性は子ども生まなくなるんだわ。少子化はアナタらのせいだ。代表して私に謝りな。」

10文字以内に言うと「なんか文句あんのか」だ。100文字で済むことを2000文字で表現するという岸田奈美さんに、私も近づけただろうか。

「ごめん。今日もキレイだよ!」「よろしい。」

ついでに言うと、推しの子はいい作品だ。原作を読んだのでストーリーは頭に入っている。アニメは見なくていいかな…と思っていたが、見て良かった。

特にオープニングにしびれた。曲はYOASOBI。彼らは本当にいい仕事をしている。最初、彼らを見たときは、またドラゲナイとか歌いだす歌手かなと思っていた。しかしEテレ「あおきいろ」のツバメダンスの曲を聴き、目ならぬ耳を奪われ、徐々に注目していた。

Adoちゃんもそうだが、この世代の曲は歌詞がわかりやすいと思う。独身の頃は、椎名林檎様に心奪われ、今も彼女のにわかファンだが、あちらの世代の歌詞は難解で考察がいる。

もちろん人間は、考えることをやめてはならない。「将来僧になって結婚してほしい」とは、どういう心境の歌なのか。一休さんのようにポクポク考えた。結局、今もよくわかっていないが、曲が魅力的すぎて、ついピザ屋の彼女に憧れた頃があった。

今はわかりやすい歌詞がちょうどいい。子育てや仕事で忙殺されているのに、私たちはSNSなどで情報に埋もれがちになった。時短のため、よりわかりやすい情報を手に入れたくなる。「アイドル」という曲は、推しの子のストーリーをそのままにした歌詞でわかりやすかった。軽快な音楽にのせて、心地よい歌声。推せる。

話がだいぶ逸れた。タイトルは「ワンオペママの戦場(夜)」だ。「今、ワンオペちゃうやろ」って読者の皆様に突っ込まれている気がするが、話を戻す。でも余計な事書いていたら、2000字超えちゃったな…。タイトルを「(夕飯)」に一部修正し、続きはまた次回に回す。

19:10。推しの子について熱弁しつつ、私は1番に食べ終わった。息子も(ワイ、もういらんわ)という顔で口を一文字にするので中断する。娘のごはんを手伝いながら、役目を果たした皿をシンクへと運ぶ。あとは片づけして、お風呂入って寝かしつけか…。今日も1日が溶け切ろうとしている。毎日のことだが、この焦燥感に慣れることはない。

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