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竹内まりや 「真夜中のナイチンゲール」

この作品は竹内まりや作詞作曲で、2001年のドラマ「白い影」のエンディングテーマとして発表されたものです。

当時なんとなくこのドラマを見る機会があって、それから次第にドラマに惹き込まれていきました。主演は当時SMAPのリーダーだった中居正広と竹内結子。竹内結子という女優の存在を知ったのもこのドラマでした。

ドラマのあらすじですが、以降ネタバレになりますので未見の方はご注意下さい。

不治の病に犯され自暴自棄になっている外科医の直江庸介。その自暴自棄の中にもやさしさが見え隠れする直江に惹かれていく看護師の志村倫子(のりこ)。その倫子の一途さに自分を取り戻していく直江。しかし病の影が二人に覆いかぶさっていくという物語です。

ドラマの原作は渡辺淳一の「無影燈」で、このドラマ以前にも確かドラマ化されていたと思います。無影燈って手術室のあの大きなライトのことなんですね。影が生じないように使われているとか。でも、ドラマのタイトルは「白い影」なんですね。元々は白いシリーズという田宮二郎主演のドラマが最初のようですが。レントゲンに写る病変は白い影らしいので、そういう意味も込められているのかもしれません。

で、この「真夜中のナイチンゲール」は、この直江と倫子、特に倫子の立場からの心情を歌ったものなんですよね。竹内まりやはドラマの脚本や原作の小説を読んだりして自分の中に倫子が想う直江像を作り上げて作ったのではないかと思えるくらいです。

ナイチンゲールという鳥はサヨナキドリ(小夜啼鳥)とも呼ばれ、夕暮れ後や夜明け前にさえずる小鳥らしいです。日本人にはあまり馴染みがない鳥ですが、欧米では一般的な小鳥なのでしょう。そう言えばジャズのスタンダードの「Stardust」にも登場していますよね。

それに倫子が看護師ということもあって、看護師の母とも言われるナイチンゲールのイメージも重ねたのでしょう。竹内まりやの言葉選びの妙が伺えます。




あなたの瞳に映る 
哀しみの理由を教えて

どんなに近くにいても 
届かない心の裏側

My love, 私は闇夜に 
my love, さえずるサヨナキドリ

ただそばにいさせて 
忍び寄る孤独から守るわ

もういきなり倫子が直江に感じている影を歌っています。直江の心の深いところにある悲しみを倫子は感じ、次第に直江に惹かれていく情景が表現されています。


その細く長い指に
まとわりつく不安の影を
抱きしめたい 

優秀な外科医の象徴である直江の指、その指先にすら感じる影。


何かに追われるように 
生き急ぐ理由を 聞かせて 

ふいに見せる微笑みが
どこまでも淋しいのはなぜ 

倫子は直江の病を知りません。直江は最後まで倫子に隠し通すのです。不安を感じながらも直江を愛していく倫子。


My love, 響き渡る遠雷が 
新しい春を告げたら 
飛び立ってく 
真夜中のNightingale 

早春のまだ寒い北海道。直江は思い出深い故郷の支笏湖に身を投じる。

先に帰っていた倫子は直江の姉からの電話でその事実を知る。倫子は直江の部屋で自分宛てのビデオレターを見つけるのであった。

このときの竹内結子の演技が本当に良かったです。愛する人に先立たれた悲しみを見事に演じており、良い女優さんだと思いました。だから彼女の訃報を聞いた時、信じられませんでした。残ったものの悲しみを知り尽くしているだろうにと。その瞬間、彼女の心は何らかの影に覆われてしまったのでしょうか。

この曲を聴くたびに、ドラマ「白い影」そして直江と倫子のことを思い出します。



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