ある男の魂の彷徨(伊勢正三とともに)その2 「少しだけの荷物」

彼女との別れを決意した男ですが、東京に出てきて二人で暮らしはじめたこの部屋も片付けなければなりません。

暮らしはじめた当初は荷物も少なく二人には少し広く感じたことでしょう。でも、少しづつ荷物も増えていき、生活感もでて、それが幸せということだったかもしれません。

少しだけの荷物

いつしかすれ違いに戸惑うようになった二人。段々と息苦しさを感じるようになっていきます。それは増えた荷物だけのせいではないはずです。この生活に見切りをつけた彼女。それを受け入れた男。二人は部屋を片付け始めます。

狭く感じた小さな部屋もこうして片付けてみると広く感じることに驚く男。部屋の中には男が暮らしていくのに必要な最低限の荷物と彼女のスーツケースだけ。

処分した家具の跡は二人が暮らし始めた時のまま。色褪せることもなく当時の二人の思いを伝えている。暮らし始めた時と別れようとしている今、それが同時に存在しているかのようで、それをただ見つめている男。

「少しだけの荷物」は「君と歩いた青春」と同じく「風」のサードアルバム「WINDLESS BLUE」収録です。B面の最後を飾るに相応しい。彼女が出ていく間際の小さな部屋の風景を描く小品です。私の大好きな曲の一つです。

こうして男は彼女を見送ることとなった次第です。

淡月

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