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ドラマ『海のはじまり』第4話感想 空虚な器

今週は仕事で上京する機会があり、その上京の車中で「帰りは鳩サブレーでも買って帰ろう」などと考えていたが帰りの荷棚には夏限定の東京バナナが揺られていた。ようやく時間ができて、第4話の感想でも書こうかと思い、タブレットを開きアイスコーヒーを淹れ東京バナナを食べようとした時「あっ、鳩サブレー…」と思い出した次第。老いを実感してしまった。

さて、この第4話、南雲水季と百瀬弥生のそれぞれの妊娠とそれをめぐる周囲の反応が描かれた回であった。


空虚な器

この日本には割れてしまった器などを修復する技術として金継ぎという手法がある。金継ぎは、割れた器を漆で繋ぎ、その繋ぎ目に金などを塗る。器としての機能を復活させると同時に芸術的価値をも高めるという驚きの修復方法である。私は百瀬弥生という人物を見るたびに、この金継ぎで修復された茶器を連想してしまう。

百瀬弥生の心は一度粉々に砕かれた茶器であり、その後、彼女自身の努力で金継ぎを行い復活した様に思える。

弥生が妊娠した時、当時の彼氏や彼女の母親は弥生の思い等を考えることもなく中絶という結論を選んだ。弥生としては結婚や出産という道も考えたかったであろうが、彼氏は自分や弥生のキャリアのことだけを考えるだけであったし、弥生の母親は「私は無理」と冷たく拒絶するだけであった。電話での母親とのやり取りからすると弥生は母子家庭だったかもしれない。もし出産しても我が子も自分と同じ母子家庭の子どもとなる可能性が高い。もちろん母子家庭でもいろいろな親子関係があるが、弥生の場合は家庭の温もりに欠けていた印象である。そう考えた時、弥生は出産を諦めると同時に彼女の心の器は砕け散ったように思える。その後、弥生は砕け散った心の器の欠片を一つ一つ拾い集め修復していったのだろう。

金継ぎによって心の器が修復された彼女は外からの見た目は完璧である。綺麗で仕事が出来て頼り甲斐がありパーフェクトである。しかし、その心の器の中は空っぽである。その心の器を満たそうと、南雲海の存在を知った弥生は性急に動いてしまう。海の実家を訪問する夏について行ったり、夏に認知や籍について問い詰めたりしてしまう。

それらは全て空虚な心の器を満たしたいという思いからなのだろう。

満たされている器

対照的なのが南雲水季である。水季は愛情深い母親と優しい父親の家庭で育った。水季の心の器は両親の愛情で満たされている。だから水季は他人に対して思いやりが溢れているのだろう。水季は勝手気ままに振る舞っているように見えるが、その行動原理は「溢れ出る思いやり」なのだろう。

水季が中絶を決めたのは、夏が就活を始めたのを知った瞬間だったはず。それは夏の枷になりたくないという思いやりである。出産を決意したのも両親に対する思いからである。出産を決めた結果、夏とは必然的に別れなければならない。

周りからすれば勝手気ままな行動の水季に見えるが、それは水季の心の器が愛情で満ち溢れ思いが溢れてしまうからだろう。

小学校入学前後の海に夏という父親の存在を明かしたのも自分の生命が僅かであることを知り夏と海に対する愛情が溢れたからだと思える。

血の繋がり

南雲家は血の繋がりのある濃厚な家族関係である。その家庭で育った水季。その水季に小学校入学前後まで育てられた海。

次回は血の繋がりという側面では薄い月岡家がクローズアップされるようである。血縁関係のない月岡の父と夏。同じ父親という立場に立つ夏はどう振る舞うのか。そこに心の器が満たされていない弥生はどう関わっていくのか。


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