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問いを生む仕掛け〜算数 QNKSのQを重視した実践〜

はじめに

今まで授業をしていて子どもたちが問いを自ら持つことが難しいのではないかと思うことが多々あった。むしろ、問いは与えられるものと考えている子もいると感じた。
それは、
今日のめあてはなんですか??
と聞いてくる子が多かったところからそう感じた。
この姿は、積極的に授業に関わろうとしているのかもしれないが、私はその姿を受け、問いを生む意識は低く受け身だと感じた。このことから、
問いはうまれるものでなく、うむものということを子どもに浸透させたいと
一年間の目標ができた。
そこでまず、4月の初めに問いを生む技能について調査を行った。

技能調査 問いを生む技能

3年生の子どもたち33人に資料1の問題を見せ、どんな問題を作るか問うてみた。

資料1 問いを生む技能についての調査問題

すると、公民館に着く時刻を知りたいと答えた子どもは33人中17人の51%だった。他の子は白紙や分からないとの回答が24%、学校を出る時刻を問うた回答は21%、全く関係ないことを記述した回答が4%となった。
この結果から問いを生む意識だけでなく、技能も高くないのではないかと感じた。
そこで、その原因とそれを打破するための仕掛けを考え、実践を行うことに決めた。

原因と仕掛け

1.原因①必要感と経験がない

私は、いくつかの教科書を見て、気づいたことがある。それは、資料2のように全て提示された問題に問い掛けの文が書かれていることである。

資料2 教科書の問題文

当たり前のことではあるが、それにより、何を求めるか教材に働きかける必要感がなくなり、問いを生む経験があまりなかったのだろうと考えた。

また、教科書を分析すると、さらに別の特徴に気が付いた。それは、教科書は資料3の問題文のように情報が先の載っており、その後問いとなっている。

資料3 教科書の問題

しかし、日常生活でこのように考えることは少なく、資料4のように考えると思う。

資料4 日常生活の問題

日常では、必要感から自分事して問いをもち、その後、情報を収集するが、算数の世界では、日常の世界と問いと情報の順が異なる。そのため、自分事として必要感をもって問いが立てられないのではないかと考える。

教科書は誰でも分かるように整理されている。そのため、問いを持つ必要感を持たせ、問いを生む経験を意図的に設定することが大切だと考えた。
そして、教材に働きかける力を高めることで問いを生むことにつながるのではないかと考えた。

2.仕掛け① 隠して提示

教材に働きかける力を高めるために、あえて整っていない状況を設定することが大切だと考えた。
そこでまず、資料5のように、問題文を隠して提示した。

資料5 問題文を隠す

すると、
どんな問い掛けの文になるんだろうという問い(Q)を設定して子どもたちは考えていった。
はじめは技能的に難しため、ペアや近くの人と話し合う時間を設けた。
すると、どんな情報が問題文に書かれているのか抜き出し(N)会話の中で時系列に合わせて整理(K)するという、問題に積極的に関わる姿が見られた。
そして、問い掛けの文を作り上げる(S)ことができた。
私は、この実践から、実は問いを作る活動もQNKSだということに気付いた。

3.原因②理想化されている

続いて問いをもてない原因として、算数の問題はトラブルは起きないものと整備されていることも要素にもあると考えた。
このようにトラブルはないと理想化されることによって、現実味がなくなり教材に働きかける力が高まらないのではないか。
実態には資料6のようにイチゴの大きさや品質は揃っていると仮定していたり、
1人の子がでても良い、椅子は無限にあるという設定になっている。

資料6 理想化された状況
資料6 理想化された状況

トラブルがないからこそ、本気で教材に働きかけなくてよい状況になっているのではないか。

4.仕掛け②日常の文脈にする

教材に働きかけるようにするために、算数の問題として解いたのち、日常の文脈にして、再度思考し直すことが大事だと考える。
実際には資料7のようにイチゴの大きさが不揃いであるということやイチゴが1つ腐っているということに設定を変えたり

資料7 日常の文脈で捉える問題提示の工夫


資料8のように1人で座るのはかわいそうと言うことを考えたり、椅子は8つしかないというように椅子が無限にある設定を変えたり

資料8 日常の文脈で捉える問題提示の工夫


資料9のように何時何分に出るとよいかといつ設定を何時何分までに出るとよいですかと設定を変えたりして、日常の文脈にすると子どもたちが自ら教材に働きかける姿を引き出すことができると考える。

資料9 日常の文脈で捉える問題提示の工夫

5.発展的に考える

問題文を少し変えると場面が変わるということを知り
子どもたちは面白さを感じているようだった。問題文を少し変えるということは、
問題を固定的に見ず、常に変えてみようと意識し続けること。これが発展的に考える素地になっていくことにもつながると考える。これこそ、教材へ関わろうとする力だと思う。

6.原因③情報量が最適すぎる

続いて問いをもてない原因として、教科書は情報量が適切すぎ、親切な作りだということも要素になると考える。まず、小単元には資料10のように小単元名のところに「わり算」との文字が書かれていることで、考える必要もなく、わり算する子は多いと思う。

資料10 演算が分かってしまう問題提示

また、資料11のように問題分の中の情報も2つと適切すぎ、この2つの数値でわり算をすればよいことがすぐ分かってしまい、問いを持つ必要性がなくなると思う。

資料11 適切な数値の個数の問題提示

そのため、子どもたちは教材に働きかける意識をもてないのだと考える。

7.仕掛け③情報過多、不足にする

情報量が適切すぎるのであれば、情報量を変えるとよいと考えた。具体的には情報過多の問題にしたり、情報不足の問題にしたりすることで、何を求めなければいけないかを積極的に考えて教材に関わったり、分かってる情報は何かを考えて教材に関わったりすることができた。
このように教材に働きかける力を高めることで、問いへの意識が強まり、問いが言語化できるのではないかと考える。

まとめ

これら3つの仕掛けを毎時間行うと教師も子どもも疲れてしまったり、抵抗感が生まれたりすると思う。
そのため、たまには算数の世界だけでなく日常と絡めて教材に働きかける力を高めていくとよい。

資料12 たまには不親切な導入を!

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