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【1分で読了!即興小説】イギリス式のハゲ

【お題】


イギリス式のハゲ


【本文】



一匹のバッタの物語。



バッタの脚は一本失われていて、
思うように飛ぶことができなかった。

それゆえ、外敵から逃げることにも苦労したし、
美味しそうな青草があっても、ライバルに先を越されるし、

本当に不遇な毎日を過ごしていた。

バッタはある時、
自分自身の存在に違和感を持ち始めた。

「この人生は、本当に私の人生なんだろうか」


バッタは毎日毎日その事を考え続け、日増しにその違和感は確信へと近づいていった。

「やはりこの人生は私の人生ではない」

「私というものは別のところにいて、別の人生を送っている」



バッタは意を決して、このバッタとしての人生を終わりにしようと思った。

そうすれば、この人生が終わり、
本当の自分として目覚めるだろう。

そう考えた。




バッタはカマキリの前に立ち、挑発した。

腹ペコカマキリはカマを振りかざし、
バッタの首を締めた。

バッタは薄れゆく意識の中で、
本来の自分を取り戻していくような感覚に出会った。





目が覚めると、ベッドに横たわっていた。

立ち上がり、鏡を見ると、


バッタのような頭をした、禿げた男の姿が目に入った。





コンコン。



「チャールズさま」

「御公務の時間です」

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